みかんのつぶやき。植物とか妄想とか愚痴とか情報のゴミ。

辞めていった人達の履歴書

まだ、非正規雇用労働者という言葉がメジャーではなかった頃だから、25年位前の話になる。
私は元家族の転勤に伴って本州の2、3の都市で生活をしたことがある。
引っ越したばかりの地に慣れ始めた頃、23時から、翌日5時までの深夜バイトに週4日ほど勤め始めた。24時間営業のコンビニに卸す弁当を作る仕事だった。

何故夜間にと思われるだろうが、その当時、時給が断然良かったし、元家族も出張が、多く夜間不在でも支障はなかったからだ。

この事は、世の中のことを見知る貴重な経験となった。
例えば、ベンツに乗ってアルバイトに現れる中年の女性。ご主人はどこかの中堅の会社の重役らしい。洋服も靴もバックも高価なものを身につけている。何故にバイトを、、、と思ってしまう。人の噂では、アルコール(高級品)にお金を遣いすぎて首が回らなくなりつつあるとのこと。そういえば、まだ飲酒運転にあまり厳しくはない時代だった。本当のところはわからない。彼女は3ヶ月位で「もっと時給の良いところへ行く」と辞めた。

中年から初老の男性も多かった。何らかの飲食店をやっていたか、もしくは、その当時も営業していた方々。
それはもう、見事な包丁さばき。
その中のWさんもその1人。ご夫婦でお蕎麦屋さんを経営しているが、都市再開発で客の流れが変わり、苦戦しているらしく、昼間は営業し、深夜のバイトに来られていた。

そのWさんが「○○製パンには絶対バイトに行ってはいけないよ」と教えてくれた。
バイトに来た当日はお客様扱いだが、翌日から手のひらを返したような扱いらしい。
「バカか。アホか。仕事覚えない猿が」との罵倒に堪えられず、3日で辞めたとのこと。
聞けば、その発言者も学生アルバイト身分だ。ただ、その学生らは新人よりも少しばかり長く勤めているらしい。

ああ、それで、○○製パンはいつも募集しているし、時給が良かったのか。大きな段ボールにぎっしりと詰まった辞めていった人達の履歴書が脳裏に浮かぶ。

あれからあの女性やその学生たちはどのような人生を歩んでいるのだろうか。勧善懲悪ではないこの世。意外と学生達は厚労省のお役人になっていたりして。あ、すみません。発想が飛躍しすぎて。

2年を過ぎた給料日の数日前、出勤すると、入り口に「本日倒産しました」との張り紙があった。取り立て屋であろう人達が「こっちにはいないぞ。そっちはどうだ」などと携帯で連絡していた。

みんな茫然と立ちつくしている。それからしばらくたって、ハローワークがその会社の正社員の方達に何らかの救護策を講じると新聞にでていた。でも、私たちバイトには関係はないのである。そして断然、バイトの人達の方が多かったのである。

追記
数ヵ月ののち、裁判後、回収可能な売掛金が多かったため、正社員にもバイトの人にもその月の給料は支払われたことも付しておきたい。


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