みかんのつぶやき。植物とか妄想とか愚痴とか情報のゴミ。

妄想劇場  厄介者

目が合った瞬間、ゾワリとした恐怖が私を包む。

調査員はまっすぐこちらに向かってきた。

"質問に答えよ。これは何か"といい、

自身の腕に投影された映像を見せる。

"蟻"と出来るだけ短く答える。

少しばかりの間が更に恐怖を募らせる。

"これは"と再び映像を見せた。

"月"と再び答える。


今度はもっと長い間があった。

落ち着け、私は人間じゃないか、それは

己自身が一番わかっているだろう。

だが、こういう検査の類にはほんの少しの

誤りが生じる。

"行ってよし"調査員は乾いた声で離れて行った。

体中の力が抜けて行く。

彼らは声紋で人間かアンドロイドか

バーデンかを判断している。


先の長く激しい大戦の後、人類はアンドロイド

に大戦の後始末を頼った。

人間の行けない放射能に汚染された地へ赴き

環境整備をしたり、破壊された都市を片付け、

大地に戻したりした。


人類は更にアンドロイを増やし、外観を

限りなく人間に近づけていった。


アンドロイド自身が己を更に進化させる技術を

獲得した現在、人類にとって不都合な事態が

静かに着実に起こりつつある。


アンドロイドは本来、人間に対し無抵抗、従順

という大原則を背負ってこの世にいる。

そのように作られたのではあるが、原則には例外も

ある。

例えば、人間社会に暴力でそのルールを

破壊しようとする人間にはやはり力で

反撃する能力を付帯したアンドロイドを

存在させたである。

少しずつ、大原則が崩れゆく事態となる。


今も殆どのアンドロイドは人類に従順では

あるけれど、そうでない者もいる。

そうでない者はアンドロイドとは呼ばず

バーデンと呼んだ。

バーデンは普通のアンドロイドを

バーデンに変化させる何かの方法を見つけたらしい。


ただ、今のところは、その方法は

人間にはわかっていないし、

簡単な方法ではないらしい。


政府はバーデン狩りに躍起だ。

つい先ほど、私が受けた調査がそうだ。

あれは、バーデンかどうかの調査だった。

外観では、全く見分けられないのである。


人類は新たな厄介者を背負い込んだ。


バーデンが出現しなければ、

アンドロイドは荒れた気候の地球を離れ、

人類が行けるはずもない宇宙に打って出て、

人類が生存できる地を探してくれたかも知れないのに。


アンドロイドの持っている能力は最早、

人間とかけはなれたものだが、アンドロイドは

また人間らしい心を持っている。

そのアンドロイドが人間らしさを携えて

人間の到達できない場所に出て行き、人類を楽園に導く。


それが、夢か現実のものになるかは、

現在の処遇にかかっている。


もし、すべてのアンドロイドがバーデンに変化したら

人類はこの世界にいないだろう。


バーデンはアンドロイド以上の人間らしさを持っている。

人類を絶滅させる程の残酷さを。




コメント一覧

068336みかん
@singingkerorin ケロリンさんへ

ホーキンス博士のAIに対する発言はあまり詳しくないのですが、(^.^;

AIなどの技術が、自ら人間より賢い知能を生み出す事が可能になる時点を指す"技術的特異点"は2045年だろうとされているようです。でも、もっと早まるような気がしますね。

ゾッとするのは、手塚治虫が書いたアニメで幼児教育をAIが行いAIの都合のよいように人間を教育していく場面です。

幼児にipadを触らせるのはやめましょう。(*´罒`*)なんてね。

コメントありがとうございました。
singingkerorin
そうなんです
こういう世界が来るんじゃないかと怖くて仕方がないです

亡くなられたホーキング博士がAIの研究は人類を滅ぼすと言っておられましたよね

AIっていくつか一緒に学習をさせていると。周囲のAIとおしゃべりを始めて情報交換降るんだとか。その怖さは妖怪の様で、妖怪の・・何倍なんだろう

楽しかったです
またお願いします( ̄ー ̄人)
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