その女性は、穏やかな雰囲気を漂わせ、和服を着せたらさぞや、、、と思うような方だった。
その方が入院されたとたん、男性の見舞い客が彼女の元に次々と現れる。品のよい初老の紳士が多かった。最低一日に3人位は来られただろう。
この部屋は女性ばかりなので、彼女は気を聞かせ、院内の喫茶店にその紳士たちを誘導しお話をされていた。
そして、見舞い客が帰った後、病室の人たちにメロンをくださるのである。
そう、何故か、紳士たちは皆、メロンを見舞品にしていたのである。病室の我らは首から上の病で消化器には問題はない。果物ナイフを持っている人が4つに切ってくれみんなで美味しくいただく。最低一日に1個割る4分の1切れを3回。それが彼女が退院するまで、およそ一週間ばかり続くのである。それも高級メロンばかりである。
その時、あ~もう一生分のメロンは食べたな。これからは、例えメロンに遭遇しても、家族に食べさせよう。
しかし~人間は思い出だけでは生きていけないのである。退院後、まれにメロンに遭遇するが、しっかり、自分の分も食するのであった。
あのときのお姉さん、紳士の方々、ありがとうございました。