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武蔵「独行道」21か条



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仙台大学講義録④
<宮本武蔵「五輪書」に学ぶ勝負の極意
(勝つ為に何を考え、何を実践するのか。)>

<宮本武蔵「五輪書」に学ぶ勝負の極意(勝つ為に何を考え、何を実践するのか。)>
①芸能者剣豪武蔵の歴史。
宮本武蔵(1584~1645)は、日本で史上最も有名な人物の一人である。
武蔵とは何者なのか。武蔵は、何を考えていたのか。
武蔵は、1584年生まれ、徳川3代将軍家光の時代、島原の乱の後、1645年5月19日亡くなる。織田豊臣期(安土桃山時代)から江戸時代初期に活躍。
生国播磨、兵庫県南西部で生まれ、肥後の国熊本で亡くなる。
兵庫県揖保〔いぼ〕郡太子町宮本、生まれ、宮本武蔵の本名は、新免武蔵守藤原玄信。
宮本武蔵が生まれたのは、秀吉が全国統一事業に向けて、諸方に軍勢を派遣した時代。
武蔵が生まれた播磨国は、秀吉とその親族の領国。秀吉没後、関ヶ原合戦(1600)
で、家康は大勝利し、実権を握ったのは、徳川家康(1542~1616)
宮本武蔵は、この時、年齢30代はじめ、壮年。戦国末期から江戸時代初期にかけて
活躍した剣豪、武蔵。武蔵は妻帯せず、実子はなかった。義子(養子)はあった。
宮本三木之助(1604~1626)
宮本伊織(1612~1678)の子孫が九州小倉に存続した。
現在、「武蔵子孫」と言えるのは、この系統のみ。
宮本無三四、実父は吉岡太郎右衛門、養父は宮本武右衛門、
無三四の実父吉岡太郎右衛門を殺したのが佐々木巌流。
無三四は父の仇、佐々木巌流を討つため武者修行の体で諸国遍歴。
「生國播磨の武士、新免武蔵守藤原玄信、歳つもりて六十。我若年の昔より兵法の道に心をかけ、十三歳にして初めて勝負を爲す。其の間、新當流有馬喜兵衛と云ふ兵法者に打勝ち、十六歳にして但馬國秋山と云ふ兵法者に打勝つ。廿一歳にして都へ上り、天下の兵法者に會ひ數度の勝負を決すといへども、勝利を得ざると云ふ事なし。其後國々所々に至り、諸流の兵法者に行逢ひ六十餘度迄勝負を爲すといへ共、一度も其利を失はず。其程歳十三より廿八九迄の事なり。其の間、新當流有馬喜兵衛と云ふ兵法者に打勝ち、我三十を越て跡を思ひ見るに、兵法に至極して勝つにはあらず。をのづから道の器用有りて天理をはなれざる故か。又は他流の兵法不足なる所にや。其後尚も深き道理を得んと朝鍛夕練して見れば、自ら兵法の道に合ふ事我五十歳の頃なり。夫より以来は尋ね入べき道なくして光陰を送る。兵法の理にまかせて諸藝諸能の道を學べば、萬事に於て我に師匠なし。」(五輪書、地之巻)

無三四の実父を殺したのが佐々木巌流。父の仇巌流を討つため武者修行の体で諸国遍歴。
数え年13歳という若さで最初の決闘に勝利して以来、13歳から29歳まで60回以上の決闘に負け知らずであった。武蔵は、行く先々で名のある兵法家と立ち合い実戦剣法に着実に研きをかけていった。「一乗寺の戦い」で、武蔵の名は天下に鳴り響いた。21歳で、吉岡一門と数度の決闘。兵法「多敵のくらい」を活かし、吉岡一門を蹴散らした武蔵は、次の相手を求め奈良へ。奈良には剣の柳生石舟斎、槍の宝蔵院胤栄という二人の巨峰がいた。夢想権之助との対決。兵法者は、将軍家ご指南役の柳生宗矩と小野忠明。1612年、29歳の頃、豊前の船島で巌流佐々木小次郎と対決。宿敵、巌流佐々木小次郎に出会った武蔵、恐るべし、小次郎の燕返し。巌流島の決闘。両雄、宮本武蔵と佐々木小次郎が、ついに巌流島で一騎打ち。巌流島の決闘において大団円。関ヶ原合戦後、宮本武蔵は、九州へ去り、黒田長政に召抱えられた。宮本武蔵は、1640年8月、細川忠利54万石の熊本の地に現れる。この時、宮本武蔵は、禅僧めいて、宮本二天として絵筆を持つ。気韻生動の呼吸。
二刀使い、「二刀流」は、宮本武蔵と切り離せないもの。武士は急速に役人化し、サラリーマン化していった。終生、武蔵は、生涯主君を持たなかった。武蔵は生涯大名に仕官しなかった。芸能者としての生きかたをした。最後の「剣の芸能者」だった。数寄者(茶道家)連歌師、絵師という諸芸の一つとしての兵法者、武芸者、芸者、芸能者。武蔵は、兵法という技術を売物にする時代錯誤な「芸能者」として生きた。武芸者、剣の芸能者として、決闘を見世物にした。すでに現実から失われた「生死を賭けた実戦」という見世物。武蔵が有名になったのは、剣の芸能者としてである。剣の物神化により、兵法を実用主義的に理論化し、後世の武士道の先鞭をつけた。禅と剣の結合、同盟こそが、剣の精神化を具現化していった。剣は武士の魂、槍や鉄砲といった武器こそ、戦場の命運を決するリアルな武器、剣は実際は、余り重要な武器ではなかった。白兵戦でさえ、剣というより格闘技、殺人の実践的訓練を積んだ暴力団が武士の実態だった。軍団が激突する場面よりも、篭城、包囲戦の形態が多くなった時代からは、戦争は経済戦、土木戦の様相を呈した。リアルな戦場を喪失した武士階級。戦国時代が終焉し、江戸幕府による中央集権的秩序が確立され、天下泰平になった。武士の殺人技術は無用化する。殺人技術者には、まず芸能者として生きる道しかなかった。武蔵以後の剣の精神化は、「武士道」という観念化、イデオロギー化。観念的同一化、大衆的ヒーロー。剣の精神化によって、彼は芸能者としての立場を超えて行く。剣の芸能化から精神化へ。『葉隠』はじめ、武士道というイデオロギー化が出現する。精神化は武士道という定型を得た。

宮本武蔵は『五輪書』で、自身の流派を「二天一流」としている。時代劇映画を見れば分かるように、昔の武士は2本差しである。大小2本の刀を差している。もし使う刀が1本だとすれば、残りの1本は、切腹するための用意という俗説は正しい。実際は無用な形式。刀を相手に投げて刺し殺すこともある。武蔵は通例「二刀流」で有名。普通は刀は1本だけ使う。2本は用いない。しかし武蔵は2刀を使う。なぜか。真剣は1本でもけっこう重い。野球のバット以上の重さがある。すぐに腕が利かなくなる。重い刀剣を手にして、戦い続けるのは、かなり体力を必要とする。刀を左右の手に持って戦うというのは大変。両手でも重い刀を片手で振り回せる訓練を重ねる。「二刀流」本来の趣旨は、片手で太刀が振れるようにするため。常時二刀を使うわけではないが、いざとなれば、2本の刀を同時に駆使できるようにしておく。片手に太刀、もう一方に槍をもつ場合もある。実戦の現場では、胴を切るというよりも、まず手を狙って戦闘能力を失わせる。片手を失った時でも、戦闘を持続できるようにしておく。
「二天一流」は残ったが、一刀遣いの他流に勝るだけの二天一流の使い手が武蔵以後現れた様子はない。武蔵は、孤独な天才だった。流儀を真に継承しうるだけの者はいなかった。「二天一流」というのは、「二刀一流」ともいう。具体的な技術として、2本でも使えるようにしておくのが現実的。吉川英治『宮本武蔵』が、第二次世界大戦の時期から国民に広く読まれた。

②文筆家思想家武蔵の偉業。『五輪書』「ごりんのしょ」(1645年著)必勝の哲学。
新免武蔵守藤原玄信。「五輪書」「独行道」武蔵が60歳の時、3代徳川家光の治世、
1643年『五輪書』「ごりんのしょ」を書き始めた。2年後に筆を置く。二天一流と
称する剣術と兵法について解説したのが『五輪書』。形だけにこだわった他の剣術書と
は異なり、「勝つこと」を目指した合理的な兵法書。武蔵は、円明流を編み出す。武蔵の
『五輪書』は自筆本が現存しない。徳川幕府は、内戦の終焉、戦争を一掃して出現した政
治権力。天下が泰平になる。幕府支配が固定するとともに、戦闘術には実際的な価値は失
われていった。戦争は終りという時代に、武蔵はまだ戦争を語り続ける存在だった。武士
は支配階級と化すことによって、無用化した武士が、支配階級として延命しえた。支配を
完成した徳川幕府は、決して諸大名を武装解除しなかった。軍事政権として諸大名を存続
せしめた。戦闘を禁止する一方で戦闘能力を温存するという自己矛盾をかかえていた。幕
藩体制とは、本質的に戦時体制の固定化。参勤交替は、将軍に対する服属儀礼であり、大
名行列は軍役としての行軍隊形を取った。各藩の財政を圧迫する原因だったが、参勤とい
う中央集権を絶えず具現化した。大名諸家の家族を人質に取るという戦国作法体制だった。
幕藩体制が無力化するまで続いた。「いつでも戦う用意がある。」という待機状態にある
武士の存在意義を裏づけた。リアルな戦闘者集団から、待機状態にある戦闘者集団への変
貌。幕藩体制下での武士の存在意義の変容である。武士道の謳歌、剣の精神化とは、武士
の武士の存在意義の変容を背景に持つ。兵法は、戦国内乱、戦闘場面を喪失したからこそ、
戦闘能力を無用化したからこそ、逆に価値あるものになった。武士道の謳歌、剣の精神化
である。武士という存在は根本的に変化した。天下泰平の時代に、武士それ自体が無用物
と化した。武蔵は、皮肉にも歴史に乗り遅れた不遇の人物だった。武蔵は、知友や高弟に
遺品、「五輪書」「兵法三十五ヶ箇条」を贈った。無敗の剣聖、宮本武蔵の五輪書は、
「勝つこと」を徹底して追求した。戦闘術、兵法とは、いかにして敵を倒すかに尽きる。
実体験に基づいた不朽の兵法書。「不敗の哲学」を後世に伝える五輪書は、いかにして場
を支配し、敵を支配し、己を支配するかを説く兵法実践の書。『五輪書』で、他流批判を
徹底遂行。兵法が形式化していくことへの批判。武蔵は時代の流れに抵抗する反時代的存
在、反動分子。徳川支配による秩序は、武士に秩序と道徳を強いた。百八十度の転換であ
る。武蔵が体現したのは、天下無双の武芸者。武蔵の剣に対する思いが簡潔な言葉、直截
的に表現。100%の確率で勝利を得ることをめざす。
 今、企業経営者にも、「不敗のルールブック」として広く支持、愛読。自省自戒、60
数年を生きてきた一人の男が、その人生において希求した事は、勝つことの目的、生きる
ことの意義とは何かを、時代を越えてわれわれに問いかけてくる。死の直前に著わした五
巻の兵書、『五輪書』は、兵法書、戦闘術教本としてのみならず、結果として、処世訓、
座右の書として長く読まれてきた。生涯不敗の剣聖、必勝の哲学。武蔵の兵法を「命がけ
の実利主義」。近世的な合理的精神、日本思想史を語るかぎり無視して通れぬ思想家とし
ての宮本武蔵。五輪書の主題とは何か。殺人という「至高悪」。現代の文章感覚に通ずる。
平易達意の名文家は、「歎異鈔」と、蓮如上人(白骨の文章)と宮本武蔵の他には見られ
ない。最終的に剣、武の精神主義。『五輪書』と『葉隠』は、司馬遼太郎が示す通り、
論理性が高く、文飾を排し、用語には一語一意のきびしさがある。小林秀雄が示したよう
に、反精神主義的な実用主義、実践主義の思想。同時に兵法家として、明石の町割り(都
市計画)にも参与し、造園家、庭士としても優れていた。諸芸に通じ何でもできたという
武蔵、ルネサンス期のアーティスト。
 五輪の「五」は五大(5つの宇宙元素)の「五」、「輪」は「円」、円満具足、一切の
徳を具えるの意味。五大が一切の徳を具備し、円輪周辺して欠けるところがない。「五大」
宇宙万物を構成する五元素、地、水、火、風、空の五つをいう。「五智輪」ともいう。ミ
クロコスモスとしての身体に地、水、火、風、空を配して、空を「頂輪」、風を「面輪」、
火を「胸輪」、水を「臍輪」、地を「膝輪」とする。これはインド思想からきている。
「五輪」は、五輪塔をイメージ。『五輪書』は、地(ち)水(すい)火(か)風(ふう)
空(くう)の五巻からなる兵法書。これ自体に哲学的意味を見い出そうとする読みもあるが、武蔵の意思は、そうではない。宮本武蔵は死を前にして兵法書『五輪書』を書く。『五輪書』は、武蔵の墓碑。書物としての墓である。「五輪書」とは、「二天一流兵法書」。兵法とは、戦闘術。兵法は、戦略であり戦術でもあるが、武蔵の語法では戦略でも戦術でもない、やはり戦闘術。兵法書『五輪書』は、戦闘術の教本である。哲学でも人生訓でもない、実戦、実践的な戦闘術の指南書、教本である。武蔵は元々人生や哲学を説くためにこれを書いたのではない。いかにして敵を倒すか、相手を殺すか、という技術を教えるために書いた。オリジナルの『五輪書』武蔵自筆本は存在しない。「最後の戦闘者」としての武蔵の遺言、戦闘思想家としての肉声の聞かれる書物。上泉秀綱、富田勢源、塚原卜伝等、武蔵に先行する剣豪の生まれは、豊臣秀吉が天下を手中にした頃。宮本武蔵は、後世、18世紀以来、歌舞伎、浄瑠璃等演劇の主人公となり、大衆的人気を得た。演劇が読本(よみほん、小説)に翻案されて、武蔵は伝説的英雄となった。江戸時代に歌舞伎、浄瑠璃に演劇化され、英雄伝説の勢いは衰えず、「巌流島」など武蔵物の歌舞伎上演。吉川英治『宮本武蔵』の大成功以来、国民的ヒーローとなる。「武蔵小説」は数多く書かれ、映画や演劇にも武蔵作品は多い。武蔵は剣豪として歴史に記憶された人物。現在、宮本武蔵の虚構と事実の区別がつかなくなっている。今日でも日本人は日本一の剣聖、宮本武蔵が大好き。朝鍛夕錬、武蔵の生き方、考え方、戦い方、自分の中の確かなものを強めよ。「執着、こだわりを捨てろ。」というのが武蔵の教えである。剣の達人。文筆、書画達人。「文武両道」の模範。個を磨いて勝つ。誰にも負けない断トツのスペジャリティを持て。宮本武蔵は、前半生は芸能者剣豪武蔵、後半生は文筆家思想家武蔵、として生きた。

③武蔵流修行法9原則。

①「よこしまなき事を思う所」常に良き事、正しい事を思え。邪心を持ってはならない。
②「道の鍛錬する所」評論家になるな。実践人になれ。
③「諸芸にさける所」芸術でも何でも幅広く学べ。
④「諸職の道を知る事」目的をもって他の多くの仕事からも学べ。
⑤「物毎の損徳をまきまゆる事」物事を客観的に強み、弱み、機会、脅威(SWOT)を分析せよ。
⑥「諸事目利を仕覚ゆる事」物事の状況を見通す目利きとなれ。判断力、決断力を磨け。
⑦「目に見えぬ所を悟って知る事」表面の目先の現象に振り回されるな。本質を見よ。
⑧「わずかなる事にも気をつくる事」小事、些事こそ大事。小事にこそ細心になれ。
⑨「役に立たぬ事をせざる事」すべては目的の為にせよ。一切を無駄にするな。

④武蔵の策略。

武蔵は実践では策略家(余りお勧めはできないが、武蔵の史実)
①むかつかせる。→無理難題、けち、心の平静、冷静を失わせる。そこに付け込む心理戦。
②うろめかす。→手練手管を仕掛け敵をうろたえさせる。
③脅かす。恫喝、高飛車、威嚇、脅迫を駆使して、相手がおびえた状況に付け込む。
夢想権之助との決闘、長い槍に対して、短い楊枝(短剣)で武蔵は対峙。
舐められたという怒りを引き出し、眉間を鋭く一撃。
①敵の意表をつく。
②敵の拍子、リズムに合せないであざむく。
③勝機と見たら、電光石火に一気に攻め、勝負を決める。
空有善無悪、智者有也、理者有也、道者有也、心者空也、
空有善無悪→空という心には善のみがあって悪がない。
普通の人間は、達成に不安感、危機感、怖さを持っていないので、詰めが甘い。
武蔵は慎重で細心、大胆さ(勇気)と細心さ(臆病)の両極端を合せ持て。

⑤地水火風空5巻。

地水火風空5巻、「地水火風空の五冊」「兵書五巻」「兵法得道書」
第一の「地の巻」「太刀の道を知るとは、常に我差す刀を指二つにて振るときも、道筋よく
知りては自由に、振るものなり、太刀を早く振らんとするによって太刀の 道逆ふて振りがたし、太刀は、ふり能き程に靜にふる心なり。」刀を振る ときは力まかせに速く振るのではなく、太刀筋ができるよう静かな心で振 る。「太刀の持様の事、いつくは死る手なり、いつかざるは生る手なり、 とらわれることは死ぬ事。 」とらわれないことは生きのびる事である。 死を覚悟。兵法の道、武士は、大工のようなもの。武蔵には、万事におい て自分に師匠はない。兵法の総論、二天一流の太刀筋を説く。

第二の「水の巻」「振りかざす太刀の下こそ地獄なれ。一と足を進め、先は極楽。」太刀の持ち方。兵法の理に触れ、いろいろな技を自ら試して、そのこつを覚え、いろいろな人と実際に打ち合っては、相手の心の真髄を知って、兵法の理を体得していく。二天一流の身のつけ方、太刀の持ち方、足使い等、具体的に説く。心を水のようにする。四角の容器でも丸い容器でも、状況に応じて柔軟に形を変える。一滴の雫から広大無辺な大海にもなる水のような柔軟性を身につける。

第三の「火の巻」勝負を具体的に説く。場所の取り方、先手必勝、景気を知る事等、太刀そのものの用法、戦う平常心の保持の重要さを説く。一対一の戦い、万対万の戦い、合戦、戦いでは、いつでも平常心だ肝要。勝負での心理戦、駆け引きを重視。
小(個人)の兵法、大(集団合戦)の兵法。

第四の「風の巻」他流の兵法について説く。他流の特徴を比較し、学び、自己の修養に資し、二天一流の本質を説く。

第五の「空の巻」動中に静を、静中に動をさぐり、人間本然の心に反発することなく、渾然一体となり、天と地とも人融合すべきであると説く。自由自在、何ものにもとらわれることの無い融通無碍にして、公明正大な心境に己の道は開けると説く。何物にもとらわれない自然の境地で、自由自在に非常な力を発揮。時に応じ、変化に応じて、間合い、タイミングを知る。自由自在の純粋、無心の善なる空の心を養う。武蔵は声を使う。声は勢い、元気をつける。衰退の出血をまず止める。出血を止めるタイミングが遅くなると再起不能となる。すべてが備わってはじめて、一切の雑念、心の迷いかを取り去った空の心に到達する。敵の意表をつく拍子、タイミング、リズム、勢い、波動、波長、間合いを見極めよ。勝負事が勝つか負けるか、物事が成就するかは、タイミングによることが多い。
鉄砲、弓、馬に乗るのもタイミング。スポーツ、音楽、ダンスにもタイミング、リズム、拍子。人生思いのままになる時、ならぬ時、栄達の時、失意の時、金持になる時、財産を失う時、にもタイミング、リズムがある。その為、発展するタイミング、リズム、拍子と衰退するタイミング、リズム、拍子を見極める。

見分ける鑑識眼を持たねばならない。相手の拍子を外す。戦闘においても敵の拍子を知った上で、敵の意表を突く拍子をもって当たり、空の拍子を発揮して、勝ちを得る。武蔵は、止めを刺す。底を抜く。絶妙の間合い。「縁のあたり」「場の次第」「けいきを知る」「渡をこす」絶妙。「縁のあたり」とは、どこでも打ちやすいところを打って良いという心得。相手と自分の「縁」で決まる。
その縁が感じられれば、その縁の「あたり」を打て。「場の次第」は場を背負ってしまえ。実際の果たし合いでは、その時刻の日光を背負う。背負うのは、太陽だけではなく、本当は場そのものの大きさと小ささ。「けいき」は景気である。その場、その人の景気の盛んな様。急所を乗り切ると、そこには飛躍の大海原が洋々と広がっている。あとは平坦な道。渡を越す。急所、難所、瀬戸を乗り切れ。ここ一番の大事な勝負に命がけで必ず勝て。人生ここ一番を乗り越えよ。武蔵は、剣を磨く事によって心を高めた。兵法の拍子、すべての職業で拍子が狂うようなことがあってはならない。剣は景気なり。海を渡るには「瀬戸」を越えたかどうかという一線がある。長きも短きも同じ。「渡」を越したかどうかを体や心でつかむべき。武蔵は、人生にも「渡」があって、その「渡」が近いことを全力で知るべき。常に「瀬戸際」瀬戸が近づいてくる所がわからない。急に瀬戸際がくる。武蔵の武芸は、その瀬戸を早くから知りつかむ。

⑥武蔵の勝負の極意。
①一勢攻守善、相手に勝つという一点の目的の為に実践せよ。
一→一点突破、一意専心の志、心思い。
勢→勢いの拍子、リズム、タイミング、水の心、自分を徹底的に信じ、絶対勝てると信じる。
攻→攻めと
守→守りのバランスを常に考え実践する。
善→人間として正義、正しい事を考え、全体像シナリオを思い描き、全即一、一即善、空の心で貫く。
②道天地将法
実践で勝てるかの戦力の比較をせよ。
道→基本、原則が実践されているか。理念、考え方が末端まで浸透しているか。
天→天の時、時流、時の勢い流れを取り込んでいるか。
地→地形、位置、場所、地の利を取り入れているか。
将→リーダーシップ、率先垂範、モチベーション、勝利への執念、情熱、思い入れを発揮しているか。
法→規律を守っているか。
③智信仁勇厳
兵法家、リーダーに必要な器量
智→さすがと思われるオリジナリティ、スペシャリティ、実利主義、
信→信用信頼関係創造能力、人脈、ネットワーク、自分を信じる力、継続性、正直、約束、実行力、仁→すべての人、物事に対する愛情、優しさ、思いやり、謙虚さ
勇→戦う勇気、胆識、リーダーとしての牽引力、積極一貫、大善、
厳→自分への厳しさ、他人への厳しさ、詰めのの厳しさ、勝利への執念、最後まで油断をしない、
本気、集中力を高めよ。身を潔くせよ。
小善は一見仏に似たり、されど鬼たり。大善は一見鬼に似たり、されど仏たり。
④頂情略冷闘
正確な情報を収集し、敵の心、状況を正確に読み、順境、逆境も、良き事も悪しき事も試練と思い、冷静、沈着に戦え。
頂→山の頂上に立ち、360度見渡して、漏れなくすべての情報を集めよ。
情→良い情報は人にある。人間関係、人脈を密にせよ。
略→すべての情報を収集し、戦略、計略、心理戦略を立てよ。いついかなる時も最後の最後まで「戦う前に勝てないか。」を考え続けよ。百戦百勝は善の善なるものにあらず。戦わずして勝つ戦略こそ最高。
冷→常に勝つ事を冷静にどこまで徹する事ができるか。観の目。私情が入らないようにせよ。一人よがりになるな。順境、調子が良い時は、ついつい判断が甘くなり、ずれてしまうので要注意。
お金が入った時、ついつい気が大きくなり甘くなり、浪費しやすくなる。騙され易くなる。
闘→闘う為の勝算は何%か。武蔵は100%の勝算。空の心、不動心(巌の身)で全身全霊全力、一心不乱で徹底的に勝つ為に闘え。胆識とは、勇気と度胸を兼ね備えた実践的知恵。情報→知識→知恵→胆識
④風林火山勝
実践の戦いでは、環境の変化に対応して、臨機応変に柔軟にダイナミックに勝つ為に戦え。
風→スピーディな変化に対応して、スピードで先手必勝せよ。
林→静まり返った林のように、静かにあせらず事前準備を一つ一つを積み重ね、戦いの拍子、タイミング、リズム、流れを冷静に読め。ここ一番の大事な勝負、タイミング、リズム、拍子、升田幸三(プロ将棋指し)のつきをつかむ拍子、ふみはずす拍子、拍子は味方にもなり敵にもなる。
復活、再生は、損切り、見切りのタイミング、見切り千両。どんなに能力があっても、タイミングを見誤まり見失うと、衰退の流れに入ってしまう。
火→攻める時は燃え盛る火のように勢い加速度をつけて、一気加勢に怒濤のごとく攻めろ。
山→大山のごとく泰然自若たる戦い方の仕組みを作れ。正と奇、動と静。万全の堂々たる守り、危機管理、組織編制をせよ。
勝→勝つという事に徹底的にこだわれ。徹せよ。執着せよ。Never Give Up 一切の妥協、甘えを捨てよ。勝は、照と笑に通じる。一隅を照らし、歴史に生きた証、爪あとを残せ。満面の笑みで勝利の美酒を飲め。刀を取る場合、どんな構えであっても、敵を斬るという事が目的。もし敵の太刀を受ける事、触る事があってもすべて敵を斬る手段であると心得よ。「兵法の真の道は、敵と戦って勝つというこの一点のみで、この事に徹底する事である。」生死をかけた決闘では、負ければこちらが斬られてしまう。武蔵は徹底した現実主義者、強くなければ勝ち残っていけない。
誰も助けてくれない。自らで力をつけるしかない。鯉の滝上り。上から激しく落ちてくる激流の滝の中を必死に上っていく。板子一枚下は地獄、板の薄さに気づいているか。すべての戦いに、勝つ事に徹せよ。人間力の差は、勝つ事を強く思うか、思わないか。思う事、信じる事が最も大切。敵を斬るのだと思い太刀を持たねばならない。何よりも相手を斬るのだと思って、太刀を取らねばならない。」武士(もののふ)の心。目的に対して食らいついたら殺されても離さないという達成への執念、執着が大切。禅、一即全、全即一。勝負の極意の最高の教科書が「五輪書」「独行道」

⑦武蔵の教え。「巌の身。」「有構無構。」
武蔵の教えとは大きな岩石のように強固になれ。兵法の理を習得。戦いに勝つには、相手を越える優れた能力、技を磨き続けよ。何事にも動じない「巌の身。」の不動心、平常心を持て。敵をも思い通りに自由自在に動かす。将卒を知る。主導権を握る。大局を冷静に見て、判断し、物事に対処すれば、思念は必ず具現化する。良い事を思えば、良い結果を招来する。良い事のみを思え。積極的なプラス思考を実践せよ。自分なりに頑張りますではいけない。自分の都合を最優先して必要以上に努力をしない。小事こそ大事。細部にまで注意を払い、臆病になれ。武蔵の「二天記」は、徹底的な実利主義。せめぎ合いでは、つばぜり合い、交渉を有利に進める。愚弄されむかつかされたその雑念が、刹那の決断を鈍らせ、迷わせ、そこに一瞬の隙が生まれる。表情を表に出さないポーカーフェイス、特に不意打ち、虚を尽かれた時でも巌の身、不動心、平常心。相手の心のひだまで読め。人間の目利きになれ。Never Give Up 決して諦めるな。武蔵の「有構無構。」構えがあって構えが無い。
「太刀の構えを尊にする所、僻事なし。」太刀の構え方を第一とする考え方、形を大事にする考え方は、間違いで、固定概念にとらわれては、いけない。敵が困るように、変幻自在に仕向けて、勝つ事が勝負の道。五方の構え、上段、中段、下段、右の脇、左の脇、人を斬る為の構え、目的はこの一点。
「二天一流にあっては、長い刀でも勝ち、短い刀でも勝ち、それゆえ、太刀の長さはどれくらいとは決めず、どんな武器でも勝ちうるという精神、どんな場合でも勝つという精神が、二天一流の道である。」武蔵の創始にかかる二天一流の中核的理論。五輪書は、他流の武芸書に見られるような形式にとらわれた秘伝、奥書の類ではない。五十余年を剣ひとすじに生き、兵法の研究に過ごした武蔵の心。
仏典、儒学、天文、諸芸諸道に通じて、身体ひとつを犠牲にして体得した精密な哲学書。五輪書は、仏説の地水火風空の五大にとって五巻きに著わした兵法書。ただ一心に敵を斬ると思え。交渉事は既成概念、常識にとらわれてはいけない。構造より機能、働き。勝負は時の運、勝つ時があれば負ける時がある。しかし真剣勝負では、気迫、迫力がなければ勝てない。負ければ死があるのみ。成功しないのは、命をかけた熱心さ、情熱、執念が足りないだけ。

⑧武蔵の『独行道』21ヶ条

最後に「独行道」を書いたのが死の数日前。最後の力をふりしぼって書いたのが、自省自戒を込めた武蔵最後の書『独行道』21ヶ条、

①「世々の道を背く事なし。」世の中の不変の真理、道理に背くな。
②「身に楽しみをたしまず。」自分には娯楽を求めるな。
③「万に依怙の心なし。」えこひいきをするな。
④「身を浅く思い、世を深く思う。」自分の事は少々にして、世の為、人の為に尽くせ。
⑤「一生の間、欲心思わず。」人生において欲望を持つな。
⑥「我事において後悔せず。」いかなる事があっても後悔するな。
⑦「善悪に他を妬む心なし。」他人を決してうらやむな。
⑧「いずれの道にも別れを悲しまず。」いかなる場合でも、一切別れを悲しむな。
⑨「自他とも恨みか二つ心なし。」決して恨み心を持つな。
⑩「恋慕の道、思いよる心なし。」恋慕の心一切持つな。
⑪「物事にすき好む事なし。」物事において、風情を求めず、一切好き嫌いするな。
⑫「私宅において望む心なし。」自分の家に一切執着するな。
⑬「身一つに美食を好まず。」美食を求めるな。
⑭「末々代物なる古き道具所持せず。」骨董的価値のあるような道具を所持するな。
⑮「我が身に至り、物忌みする事なし。」迷信、不吉な事を一切気にするな。
⑯「兵具は格別、世の道具たしなまず。」兵法の為の道具以外にはこだわるな。
⑰「道においては、死をいとわず思う。」兵法の道を究めるのに死を恐れるな。
⑱「老身に財宝、所領用ゆる心なし。」財産、土地を所有する心を持つな。
⑲「仏神貴し、仏神を頼まず。」仏神は大切に崇敬するが、加護は一切頼るな。
⑳「身を捨てても、名利は捨てず。」身は犠牲にしても、名誉、誇りは捨てるな。
21、「常に兵法の道、離れず。」いついかなる時でも兵法の道を絶対離れるな。
  心はすべて常に兵法に投入せよ。

⑨武蔵の参考文献、
吉川英治『宮本武蔵』(講談社)『随筆宮本武蔵』(六興出版)
司馬遼太郎『真説宮本武蔵』(文藝春秋)
鎌田茂雄『五輪書』(講談社学術文庫)、
谷沢永一『五輪書の読み方』(ごま書房)、
寺山旦中『五輪書、宮本武蔵のわざと道』(講談社)
久保三千雄『宮本武蔵とは何者だったのか』(新潮選書)
奈良本辰也『五輪書入門』(徳間書店)
戸部新十郎『考証宮本武蔵』(光風社)
桑田忠親『宮本武蔵・五輪書入門』(日本文芸社)
加来耕三『宮本武蔵事典』(東京堂出版)
林羅山(1583~1657)『武公伝』『二天記』『兵法先師伝記』
山田次朗吉『日本剣道史』
井上雄彦 Vagabond(講談社)漫画、放浪者、漂泊者、浪人、
「日本思想大系」の『近世芸道論』
『東作誌』『作陽誌』『丹治峯均筆記』『武公伝』『二天記』『兵法先師伝記』
宮本武蔵「鵜図」「紅梅鳩図」「枯木鳴鵙図」「蘆雁図」「周茂叔図」「遊鴨図」「茄子図」
「竹雀柳燕図」「達磨図」「蘆雁図屏風」
                       平成20年6月20日(金)鈴木誠一拝

五輪書の簡単なまとめ

http://nolovenoteam.com/gorinnosho-victory-2291.html

五輪書の現代語訳の要約から学ぶ、宮本武蔵流・絶対勝利の秘訣

勝利はチームを結束させ、仲間の必要性を感じあうのに欠かせない要素だ。チームは成長と結束のために、勝利を目指さなくてはならない。ではあらゆる事柄に通じる勝利への方法論とはどんなものだろうか?

五輪書という書物は、あなたに勝利への道を示してくれる。天下無双の剣豪、佐々木小次郎との巌流島の決闘で有名な宮本武蔵が、晩年になってから戦うとはどういうことか、兵法の道とはどうあるべきかという、勝利と人生のための哲学を書き上げたのが五輪書だ。没する2ヶ月前に熊本の洞窟にこもって書き上げられたこの書には、地・水・火・風・空の5つの巻に渡って武蔵の勝利の秘訣が語られている。

この大剣豪のように生きることが戦うこととイコールになった人生というのは、現代を生きる私たちにとって想像がつかないが、この五輪書は英訳もされ海外で人生哲学の本として好評を博した。経営者にも五輪書の愛読者が多いのは、この書物が単に斬り合いを制するための方法論にとどまらず、勝負事そのものについての心構えや肝心な点をまとめた、あらゆることに通じる優れた指南の書だからだ。

ここでは五輪書の原文の内容を現代語訳にし、そのエッセンスを抜き出して、何としても勝利をモノにしたいあなたやチームに重要なヒントをお伝えする。よくわからない本だと侮ってはいけない。宮本武蔵は13歳の時に初めて命を賭けた戦いをし、30歳手前までの60回余りの真剣勝負で一度も敗北しなかったのだ。現代のどんなアスリートでも及ばない、勝利のための秘訣をさっそく見ていこう。

わかりやすい五輪書の簡単なまとめ

地の巻の現代語訳のまとめ

・自分の道を愛し、半端に道から利益をむさぼろうとしないこと
・大工仕事と兵法は似ている。適切な箇所で適切なことをできれば物事は合理的に進むのだから、自分たちのことと世の中のことを知り、基礎的な仕事を完璧にできるようになるのが大切
・真剣勝負では使えるものは何でも使い、あらゆる手段を使い切って勝利を得に行くこと
・何につけてもタイミングやチャンスが大切で、それを掴むための鍛錬が要ること
・邪な考えを持たず、実際の鍛錬を大切にし、色々な職業や芸道に関心を持ち、物事の真偽を見抜いて損得をわきまえ、わずかな変化や見えない物に気づけるようにし、役に立たないことはしないこと

戦いの人生の心得を説いた地の巻では、武蔵の非常に合理的主義的な面を見ることができる。兵法の道を大工にたとえ、あらゆることが関係し、働きあって、実際の現象が起こることを説いている。そんな武蔵が一番初めに、自分の道を愛せと精神論を説いているのは興味深い。合理的に勝利にこだわるためにはタイミングよくチャンスをモノにしなければならず、それには精神面をしっかりと構築して、知識と技術を蓄えておくべきだということだろう。

この部分だけとってみても、勝負において非常に重要なことが語られているとわかるだろう。侍の世の中に書かれた書物でも、十分に現代に応用できる部分を見出すことができる。

水の巻の現代語訳まとめ

・戦いの時もいつもと変わらない姿勢で平常心を保ち、近いところは全体を把握し、遠いところは手に取るように観察する
・動きは固定せず臨機応変に動けることが大事なので、基本のかまえを相手によって柔軟に変えられるように
・敵の心の準備がないうちに一拍子で打ち、敵が打ってくるのには打ち返すと見せてタイミングをずらしてから打つ。このように自分が主導権を握るのが基本だが、打つ瞬間に無念無想となって打つことだけに没入するのが一番肝心だ
・当てるのではなく、相手を確実に仕留めるために打つことが大事だ。狙い通りのところに当たらなくてもダメージを与えられる
・引け腰にならず、手打ちではなく身体を寄せるように、足と身と手を駆使して電光石火で打ち込み、すかさずたたみかけ、打ち返してきたらさらに早いリズムの連続打ちを返す
・身体を最大に寄せて、自分を大きく見せて威圧し、太刀をつけて粘り、体当たりもする
・競り合いで相手が焦って早く動こうとしたらチャンスなので、心を大きくして相手にペースに合わせず大きく強く打つこと
・敵の身体ではなく太刀を打ちにいってリズムを崩したり、顔面を突いてスキを作ったり、狭いところでは心臓を突いたりする。太刀を受ける際にはそのまま攻める動きをいれ、大勢を相手にする時は囲まれず、一方向で相手ができるように立ち回る
・最大のコツは文字では伝えられないのでよくよく鍛錬すべし

戦いに臨む構えを記した水の巻では、宮本武蔵の名言として有名な「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす」と「近きところを遠く観て、遠いところを近く見る」という言葉が出てくる。この巻で語られているのは「水」のように自在で固定化されていない、武蔵の構えに関する哲学だ。

戦いの時も平常時と同じように乱れず冷静になり、相手に合わせて自分の構えを柔軟に変えること。常に先手をとって主導権を握るために、怖がらずに身体ごと前に出て威圧し、競り合っても慌てずにチャンスだと捉えること。そして数々の工夫を挙げた上で鍛錬に勝るものはないはないと最大のコツを表現している。

冷静さ、柔軟さ、攻撃性と勇気、そして工夫と経験。どれも勝利にこだわる上では欠かせないものだ。どの要素を欠かしても物足りなく感じてしまうほど、これらの要素には説得力がある。勝負に当たってこれほどの構えをとれているだろうか、この構えが取れるくらい自分を鍛錬しているだろうかと考えれば、まだまだ努力の余地はある。

火の巻の現代語訳まとめ

・環境を見極めて有利な位置を占め、相手の行動を読んで必ず先手をとり、敵の崩れをよく読みとって攻め入る
・難局を想定し、相手の立場に立って弱点や勢いを見極めるクセをつける
・自分が相手を操れると思って飲んでかかり、こちらのペースを相手に伝染させる
・敵をいらだたせ、驚かせ、確信が持てないように迷わせ、弱気を見ては容赦なく押しつぶし、完膚なきまでに叩きのめす
・初めに声で威圧し、途中で声で恐怖させ、勝利の後は大きく強く声をかける
・敵の思惑がわからない時は、こちらの偽の動きを見せて反応をうかがう
・敵の思惑がわかったら、先にその思惑を潰すような動きを見せれば相手の考えを変えられる
・膠着状態には同じ試みを続けず、細やかさと大胆さを切り替え、自分のはじめの戦い方を捨てて新たな方策を試し、泥沼の戦いに持ち込んで勝利をつかむ
・多人数と戦う時は、一点を集中して攻め、あちこちを回る
・太刀によらない勝ち方をも用い、何事にも巌のように動じない

火の巻では実際の戦いにおけるコツがまとめられている。ここからわかるのが宮本武蔵がいかに「相手より有利に戦うか」にこだわったかだ。原文を詳しく読めば太陽や明かりは必ず背負うこととも記してあり、正々堂々というよりも、勝つためにあらゆる手段の導入をためらわないリアリストの一面が読み取れる。

まず環境で優位に立ち、そして相手をよく観察することを奨めている。手を変え品を変え攻めて、相手の意図を読んだり封じたりすることを強調するのは、常に主導権を握ろうとする武蔵の戦闘哲学の表れだろう。一度やられては次はない過酷な環境で、一度崩れた相手は情け容赦なく叩きのめしにいけと説く。

中でも目を引くのが心理的な影響を大きく見ているところだ。大声を出して威圧したり、苛立ちや驚きや迷いを与えてこちらのペースに引きずり込めという。戦いといえばついつい技術的な方法論に目がいきがちだが、真剣勝負を生き抜くために一度も負けられなかった武蔵が、心理的な駆け引きにも持てる知力の全てを使って勝利してきたのは参考になる。

風の巻の現代語訳まとめ

・兵法とは道であるから、他流派のように技術を売り物にはしない
・長い太刀は弱さの表れ、短い太刀だけでは勝てない。太刀の使い方は幾種類もないし、太刀の強弱は斬れる斬れないに関係はない
・かまえは相手が想定の範囲内にいないと役に立たないので、最重要なものではない
・敵の細かいところに目をつけると心の迷いが生じる
・足使いは平常時のようにしっかりと踏むことが大切で、余計な技術は不要
・早いことは素晴らしいことではなく、緩急が大事
・初歩や奥義を定義する画一的な流派があるが、実戦では人を斬ることが全て

武蔵はこの風の巻を使って他流派を批判し、自分の二天一流こそが一番の流派だと主張している。他流派は何かにつけて太刀の使い方や足運び、戦い方に順序や評価をつけて、奥義だ初歩だと言っているが、戦いに勝利するうえでそんなものには価値がないと斬って捨てているのだ。

これは聞くべき価値のある言葉だ。固定化した技術や動作というのは、特定の環境でしか発揮できない。足運びを徹底的に練習しても、河の中で敵と向かい合うようなことがあっては無意味だ。想定内の相手にしか通用しない、固定化したかまえを練習することを武蔵は否定している。

戦いでは、どんな恐ろしい事態が起きないとも限らないのだ。水の巻や火の巻のように、徹底的に勝利を追及してきた武蔵は、勝負とはルールの中で行うものではないということを心の底から理解していたのだ。

空の巻の現代語訳まとめ

・二天一流は空を知る道。空とは「ない」ということだが、これを真に理解するためには「ある」状態に自分を置かなければならない。武芸を磨き、観ることと見ることを知り、迷いなく、世の中の大きな尺度に照らして間違いのない実(まこと)の道にいるときに、空の境地を知ることができる

勝負することと生きることが分かちがたく結びついていた武蔵は、五輪書を締めくくるに当たって人生の道を説いている。戦いで勝利を得た中で、人生についても学び取っていたのだ。勝負事の中に身をおくと、勝つか負けるかが全てになりがちだが、競争の中に自分がよく生きるための道を見出した武蔵は、武士というよりも求道者のような面を最後に見せる。

五輪書はあらゆる勝負事に通じる
勝つためにはどうすればいいかということを考える時に、私たちはついつい魔法のようなナイスアイディアを捜し求めてしまう。しかしそんな都合のよいものはなく、「相手を斬る」というような明確な目標に対して徹底的に突き詰め、持てる限りの知力と手段を総動員して日々鍛錬に励むことが最良の手段だと五輪書は教えている。

そんなことは当たり前じゃないかと思う人もいるかもしれないが、その当たり前のことができない99.9%の人が敗れ、当たり前のことをできる武蔵のような人だけが真剣勝負を生き抜いたのだ。この書に記された秘訣の困難さを知り、知ってなお少しでも努力していくことが、重大な勝負をモノにする一瞬のためには不可欠になるだろう。

その他.....

五輪の書の解説

http://www.ne.jp/asahi/songshang/hatsuse/GORINNOSHO_TOP.html

侍心得 五輪の書

http://yururi.aikotoba.jp/samurai/spirit/gorin.html

五輪の書 現代語訳

http://blog.goo.ne.jp/booksblog/e/0c0736c7f4072d1ddca12867e60ac922

この辺でいいでしょう。米国のビジネスマンの間では「Book of Five Ring」としてベストセラーになっています。
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