オキテカラネルマデ

元気を出しておくんなさい
まだまだそれしか言えないけれど
元気を出しておくんなさい
ここからあなたに祈ってる

親は子どもを選べません…

2013年11月05日 | 日記・ニュース

 男女の間に子どもが生まれる…人間を含む生物の生殖活動としてはごく当たり前のことです。
 しかし法律的に考えると、話が細かくなってきます。法律的に「男女」を考えるときに、大きく2つに分けることができます。それは、「結婚している男女」と「結婚していない男女」です。この場合「結婚」とは、入籍している(=役所に婚姻届を提出している)、いわゆる「法律婚」をさします。

 入籍しているかどうかは、日本の法律ではさまざまな点で大きな意味があります。その一例が、入籍している男女の間に生まれた子どもと、入籍していない男女の間で生まれた子どもでは、相続できる財産が変わってくることです。
 民法900条4号の「ただし」の後に定められている規定(専門用語で「ただし書き」といいます)では、「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし」と定められています。
 「嫡出でない子」(=非嫡出子)とは、単純にいえば「入籍していない男女の間の子ども」という意味です。出産後に入籍すれば「嫡出でない子」にはならないなど法律でいろいろな規定がありますが、今回は私のためにも話をわかりやすくするために(笑)、細かいことは気にしません。つまり、「入籍していない」男女の間の子どもは、「入籍している」男女の間の子ども(=嫡出子)の半分しか相続できない、という意味です。

 何を言っているかというと、仮に、Aさん(男)には、現在入籍しているBさん(女)との間にX、Yという2人の子どもがいるが、一方でAさんと入籍したことのない愛人C(=入籍していない、女)との間にZという子どもがいるとします。
 もしも、AさんとBさんが以前入籍していてZはそのときの子どもであった場合、Zは「嫡出子」となりますが、今回はAとZは入籍したことがないということでZは「非嫡出子」となります。
 この場合、もしもAさんが死亡し、その財産が1億円あったとします。もしもAさんに子どもがXとYだけしかいなければ、民法900条1号に基づき、相続分は妻のBさんが1/2の5000万円、残りをXとYがそれぞれ2500万円ずつということになります。
 ところが、Zがいることによって相続分に変化が生じます。ZはAと愛人との子どもとはいえAの子どもなので相続することができます。ところが、上記の民法900条4号の規定に基づけば、嫡出子でないZは、嫡出子であるX、Yの半分しか相続できないのです。つまり、X、Y、Zの相続できる割合は2:2:1ということになります。
 そうなると、相続分は妻のBさんが1/2の5000万円、残りのうちXとYがそれぞれ2000万円ずつ、Zが1000万円ということになります。

 さて、これまでさらっと説明してきましたが、人によってはこんな疑問を抱くかもしれません。

「入籍している男女の間の子ども」と「入籍していない男女の間の子ども」との間で相続分に差があるのはなぜ?

 この疑問の背景には、「両親が入籍しているかどうかで、子どもの相続分に違いが出るのは理不尽ではないか?」という観点があると思われます。
 1995年、この疑問に関する判決が最高裁で出ました。その要旨は、

「本件規定の立法理由は、嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の2分の1の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護を図ったものと解され、現行民法が法律婚主義を採用している以上、右のような本件規定の立法理由にも合理的な根拠があり、本件規定が非嫡出子の法定相続分を嫡出子の法定相続分の2分の1としたことが、右立法理由との関係において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないのであって、本件規定は、合理的理由のない差別とはいえず、憲法14条1項に反するものとはいえない」

 長いですね。要は、

 法律婚(=ちゃんと入籍する結婚)が大事であり、入籍していない男女の子ども、つまり非嫡出子に相続でペナルティを課すことは正しい。しかし、非嫡出子にまったく相続分を認めないのもいけないので、入籍している男女の子ども、つまり嫡出子の半分だけは相続分を認められるべき。

 ということです。法律婚が大事、これは私もまったく同意見です。ときどき、好きな人といっしょにいたいけどルールに縛られたくないから籍は入れない、という人がいます。でも、籍を入れるか入れないかを気にするということは、その時点で完全にルールに縛られています。将来好きな人との間に子どもが生まれ、その子どもが相続だけでなく教育、社会保障などの場面で不利益をこうむらないためにはむしろ籍を入れるべきであり、むしろそのほうがルールに縛られていないといえるのではないでしょうか。

 話を戻します。ちゃんと籍を入れる法律婚は大事ですが、両親が籍を入れていないことのペナルティが子どもに降りかかってくるのも変な話です。これは私自身がずっと抱いていた思いです。
 そしてこのたび、このペナルティが「憲法違反」だとする最高裁判所の判決が出ました。

<自民党>婚外子や成人の年齢めぐる法改正に保守派猛反発(11月5日 毎日新聞)

 最高裁判所の判決は、法律と同じような力を持ったものです。そして、最高裁がある法律の規定を「憲法違反」と判断すれば、法律のほうが最高裁の判決に合わせて改正されることもあります(刑法の尊属殺に関する規定の廃止など)。
 今回も、与党である自民党内で判決に合わせて民法を改正する方向で議論がなされているそうです。

 その自民党の中では、民法改正によって法律婚、ひいては家族制度が重視されなくなるという意見も多いようです。
 上にも書いたとおり、私自身も法律婚や家族制度を尊重・保護すべきだと思います。しかし、入籍していない男女の間に子どもが生まれた場合、ペナルティを課すべき相手は、子どもでなくて親です!親は子どもを生むかどうかをある程度選べますが、子どもはどの親のもとに生まれてくるかを一切選べないからです。入籍していない男女の間に偶然生まれてきて、両親は結局最後まで入籍しなかっただけなのに、子どもがその不利益をこうむる必要はありません。

 具体的にどのように親にペナルティを課すかというのは難しい問題です。増税?児童手当を減らす?そのしわ寄せは子どもに行きます。
 個人的には、これから国会で議論してほしいことは、「子どもを生んで最後まで入籍しない両親にいかなるペナルティを課すか」です!


最新の画像もっと見る