おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

時をかける少女

2018-01-21 17:32:37 | 映画
尾道三部作の第二作目。

「時をかける少女」 1983年 日本


監督 大林宣彦
出演 原田知世 高柳良一 尾美としのり
   上原謙 内藤誠 津田ゆかり
   岸部一徳 根岸季衣 入江たか子
   松任谷正隆 入江若葉

ストーリー
土曜日の放課後、掃除当番の芳山和子(原田知世)は実験室で不審な物音を聞きつけ、中に入ってみるが人の姿はなく、床に落ちたフラスコの中の液体が白い煙をたてていた。
フラスコに手をのばした和子は不思議な香りに包まれて気を失ってしまう。
和子は、保健室で気がつき自分を運んでくれたクラスメイトの堀川吾朗(尾美としのり)や深町一夫(高柳良一)らと様子を見に行くが、実験室は何事もなかったように整然としていた。
しかし、和子はあの不思議な香りだけは覚えていて、それはラベンダーの香りだった。
この事件があってから、和子は時間の感覚がデタラメになったような奇妙な感じに襲われるようになっていた。
ある夜、地震があり外に避難した和子は、吾朗の家の方で火の手があがっているのを見て駈けつける。
幸い火事はボヤ程度で済んでおり、パジャマ姿で様子を見に来ていた一夫と和子は一緒に帰った。
翌朝、寝坊をした和子は学校へ急いでいた。
途中で吾朗と一緒になり地震のことを話していると突然、古い御堂の屋根瓦がくずれ落ちてきた。
気がつくと和子は自分のベッドの中にいた。夢だったのだ。
その朝、学校で和子が吾朗に地震のことを話すと、地震などなかったと言う。
そして授業が始まり、和子は昨日と全く同じ内容なので愕然とした。
やはりその夜、地震が起こり火事騒ぎがあった。
和子は一夫に今まで起った不思議なことを打ち明けるが、一夫は一時的な超能力だと慰める。
しかし、納得のいかない和子は、一夫を探していて、彼の家の温室でラベンダーの香りをかぎ、気を失った。
気がつくと和子は、一夫が植物採集をしている海辺の崖にテレポートしていた。
そこで和子は不思議なことが起るきっかけとなった土曜日の実験室に戻りたいと言う。
一夫は反対したが和子のひたむきさにうたれ、二人は強く念じた。

寸評
1982年の「転校生」、1985年の「さびしんぼう」と並んで尾道三部作と呼ばれている作品群の第2作目であるが、三作品の中では一番出来が悪いと思う。
ファンタジー性を出すためにテクニカルに走りすぎていることもあるが、主演の原田知世と高柳良一の演技力不足が作品を壊している。
角川が原田知世を売り出すための彼女のデビュー作だが、棒読みのセリフ回しは如何ともしがたい。
アイドル映画の典型の様な作品で、テーマ曲と共に撮影シーンの中でそれを歌う原田知世の笑顔が紹介されて彼女のアイドル化が成し遂げられる。
三部作はすべてファンタジックな作品だが、最後に未来人まで登場してくる本作は少し子供じみている。
大学生になった和子は吾郎と付き合っていそうなのだが、そこに再び未来から深町がやってくる。
本格的な三角関係が始まりそうなのだが、どうして大学生になった和子はあんなにも暗いのだろうか?
なにかパッと明るくなるような青春映画と感じなかったなあ。

尾道を訪ねる機会があって、彼女が行き来するタイル小道にも行ってみた。
この映画が封切られた当初は、原田知世人気もあって結構な人でにぎわっていたようだが、僕が行った時にはブームも去って随分と淋しい小道だった。
小道と言うよりも路地と言ったほうが良い通路で、敷き詰められたタイルもどこか薄汚れていた。
同行の者は「なんだ、つまんない所だな」と言っていたが、僕は原田知世が駆け回っていたのだと思うだけで感慨深くなれた。
尾道はその街並みを映すだけでも絵になる雰囲気を持っている。
僕はこの街が好きで二度も訪れている。

岸部一徳の福島先生と根岸季衣の立花先生がコミカルなコンビを演じているが、どうもその描き方は中途半端だったな。
ネクタイの出来事のためだけに登場していたような気がする。
芸達者な二人なので、青春映画をサポートする役割をもっと演じさせることが出来たのではないかと思う。
上原謙、入江若葉 の老夫婦には深町一夫の姿は見えていなかったはずで、そのあたりの様子ももう少し上手く描くことが出来ていればと感じる。
帰宅途中の和子をお茶に誘うエピソードだけでは弱かったと思うし、その表現方法も少し物足りないものだった。
青春映画としてはもう一人の女子高生の描き方もお飾り的だった。
和子との恋のバトルがあるかと思っていたが、そのような出来事は一切なかった。
子供の頃のひな祭りで傷つけた指の怪我のエピソードももう少し膨らませてほしかった。
こうなってくると、演出よりも脚本に工夫がなかったのだと思わざるを得ない。
監督の大林宣彦が脚本にも名を連ねているのだから責任逃れは出来ない。

主題歌を松任谷由実が歌っていて、音楽を彼女の夫である松任谷正隆が手掛けているが、その松任谷正隆が故人として写真だけでわずかに登場しているのはご愛敬だ。


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2 コメント

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「時をかける少女」について (風早真希)
2023-08-05 09:49:34
放課後、掃除当番で学校に残っている少女・和子。
実験室の物音に彼女が様子を見に行くと、床に落ちたフラスコから白い煙、そして強烈な"ラベンダーの香り"。

気を失った彼女は、それ以来、不思議な経験の連続。
どうやら、それは"ラベンダーの香り"に秘密があるらしいと分かるのだが--------。

この映画は筒井康隆の原作を、大林宣彦監督が映画化した作品で、タイム・スリップもののSFですが、それらの要素はあくまで背景にとどまり、むしろ淡いラブ・ロマンスに昇華されていると思います。

青春の輝きにキラキラ満ちている映画ですが、どこか淋しい"翳"といったものがあって、それが深い味わいとなっているような気がします。

それはヒロインの少女・和子を演じる原田知世の魅力とも重なり合うものがあるのです。
笑顔がとてもいい彼女ですが、女優としては全体に小柄で、目も口も小さく、何か頼りなげで、チラチラと淋し気な表情を見せます。

全然、女くさくないところが、とても女っぽく、ちっともセクシーでないところが、とてもセクシーと、こんな彼女のパーソナリティーが役柄ともピッタリ合って、映画の魅力を倍加していると思います。

現実から飛躍したSF的な物語と、大胆な遊びごころ満載の映像表現にもかかわらず、"とても切ないリアリティー"を持っているのは、今こうしている以外の生を生きるということが、人間にとって、とても切実な願望だからではないかと思うのです。

時間の浪費者になるとは、ひとつの生に耐えられなくなった人がたどる、"心の旅"なのかも知れません。
映画は幼くして死なねばならなかったものの、それからの生をみせてくれます。

そして、それは一種の幻覚にすぎなかったのですが、その幻覚=夢には、切ないまでのリアリティーがあるのです。

夢は時に、残酷な真実以上に、人間の現実にひそむ"哀しみ"を浮かび上がらせます。
懐かしい幸福感に満ちたこの映画に漂う、"不思議な淋しさ"とは、それではないかと思うのです。
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角川三人娘 (館長)
2023-08-06 07:17:08
角川三人娘だと、僕は薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子の順かな?
原田知世は「紙屋悦子の青春」かな?
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