花*花・Flora

野の花・山の花・外来植物・果実や種子などなど、観察したことを気ままに綴るBlogです。 

エゾスナゴケ (ギボウシゴケ科)

2011年06月28日 | コケ植物



日当たりのよい場所を好むコケです。 岩上や地面に群生して砂質土の場所に多いのでスナゴケの名があります。



葉身細胞の表面には、多くの微小なパピラがみられます。

乾燥にはとても強くて、乾くと葉が茎にらせん状に圧着します。 葉先が透明尖になっているので葉が閉じた群落は白く霜が降りたようにも見えます。



このスナゴケと人工芝を組み合わせた「緑化シート」を上部に取り付けた自動販売機が、目黒区に設置されているそうです。
「本体表面の温度上昇を抑制することで、冷却効率の向上による消費電力の削減が期待される」(コカ・コーラ社)というすぐれものです。 

 参照: http://www.cocacola.co.jp/corporate/news/news_20100915.html

これからのecoはこの「緑化シート」のように、自然と一体化したものがどんどん開発されていってほしいと思います。


ユウゲショウの茎の毛 (その2)

2011年06月19日 | 外来植物

剛毛かどうかを確認するために、剛毛についての記述を探しましたところ、「植物の顕微鏡観察(地人書館)」に「剛毛:細胞壁が肥厚している硬い毛 例)ムクノキの葉」とあるのを見つけました。 さっそくムクノキの葉の毛を顕微鏡で観察しました。
ムキノキの葉には剛毛がたくさん生えていて触るとガサガサしています。 毛の表面には細かい突起がたくさん見られます。これは、細胞膜に硅酸や炭酸石灰などが加わってこのような形状になるようです。 



一方、ユウゲショウの屈毛は表面にはこのような形状は見られず、曲がっていることを除けば長毛と同じつくりでした。 やはりユウゲショウの茎の毛は剛毛ではありませんでした。



そこで、ユウゲショウは外来植物ですから海外の記述ではどうなっているか、いくつかの植物サイトを見ますと、この毛はstrigilloseと表現されています。 これの日本語訳を見ると、「硬先毛」とか「《植物》剛毛」とありました。 しかし英語でstrigilloseはどう説明されているか調べたところ。 Strigillose・・・「ふちあるいは中肋に沿ってだいたい同じ方向を向いている先が尖った真っ直ぐな小さな毛」などと説明されています。 
  参照: http://en.wikipedia.org/wiki/Trichome
この説明ならば、まさにユウゲショウの毛の状態に一致しています。



文献を英訳する段階でstrigilloseをユウゲショウの毛には適切でない「剛毛」という方の訳をあててしまったのではないかという気がしてきました。


ユウゲショウの茎の毛 (その1)

2011年06月18日 | 外来植物



石川の植物』のmizuaoiさんが、ユウゲショウの茎の毛について「日本の帰化植物(平凡社)」では「茎には剛毛があり、しばしば長毛が混ざる」と記述されている点に疑問を投げかけられました。 (詳しい内容は上の『石川の植物』をクリックしてHPをご覧ください)

ユウゲショウはちょうど花の時期です。毎年花を見ているのにもかかわらず、茎の毛を詳しく見たことがありませんでしたので、さっそく茎の毛を確認してみました。
ユウゲショウの茎の上部には上へ曲がった毛が多く生えています。 茎の下部にも上部より少ないですがこの毛があります。
 


また株の中には、上部に上へ曲がった毛が密に生えていて、長毛もたくさん生えている個体もありました。
(左:茎の下部 右:茎の上部)




しかし、密に生えているこの上へ曲がった毛は触ってみてもゴワゴワしているわけでもなく、どうみても剛毛ではありません。

「原色日本帰化植物図鑑(保育社)」では、「ねた白色の短毛が多い」と書かれてあり、こちらの表現は的確です。
なぜ、この毛を剛毛としているのでしょうか・・・続きます


シロバナマンテマ 閉鎖花

2011年06月13日 | 外来植物



pandaさんから「シロバナマンテマの蕾を分解してみたら、花粉らしきものがたくさん出ている蕾がありました。」と興味深い情報をいただきました。 さっそくがこちらでも見られるのかどうかシロバナマンテマを観察してみました。

シロバナマンテマは花期の終わり頃になると、2種類の蕾をつけるようです。 



1つは先端から花弁が見えていて、全体がほっそりしている蕾です。 萼を開いて中を見ると3本の柱頭はしっかりと閉じていて、葯もまだ裂開していません。
これから花を咲かせる通常のつぼみでしょう。



もう1つは、ややずんぐりしていて先端がすぼまり花弁が見えないつぼみです。 ほぼ同じ長さ(約10mm)のつぼみを比較しています。



こちらの蕾の萼を開いて中を見ると、花弁はくの字に途中で折れ、3本の柱頭はすでに開いています。 



葯もすでに裂開していて花粉を出し、雌しべの柱頭に付着して受粉が行われていました。
 


この蕾は花を開かないまま自家受粉が行われていますので閉鎖花です。
シロバナマンテマは花を咲かせて他家受粉をめざしますが、常習的に自家受粉を行います。 花期の後半には閉鎖花もつくり、なんとしてでも種子を作ってしまおうというメカニズムが働いていると思われます。


ツキミマンテマ (Silene nocturna L. )

2011年06月11日 | 外来植物



ツキミマンテマ (Silene nocturna L. )は地中海原産で、日本では2002年に和名が発表されたばかりの新しい外来植物です。
 


シロバナマンテマに似ていますが、株は直立しがちで、花は昼間は見られずに夜に咲くのでこの名がつけられています。
茎には腺毛がありますが、手で触ってもべたつくほどではありません。 萼には全面に屈毛が生えていて、まばらに横脈があります。



果の柄は短くて長さ1.5mm以下(画像の果柄は1.0mm)です。 閉鎖花をつけることも多く、この花も閉鎖花で子房はすでに膨らんでいるのに、萼をはずすと中には小さな退化した花弁が残っていました。 花弁の先がくぼんでいることはシロバナマンテマとの区別点の1つです。



果は縦長い楕円形で熟すと先が6つに裂けて小さな種子をこぼします。

 

種子は0.8mmほどで、茶褐色で腎臓形をしています。 シロバナマンテマの種子に比べると小さくて、背面に縦に1本の溝があり、溝に垂直に微細な横の隆起が並んでいます。

 1目盛=0.2mm

月の美しい夜にツキミマンテマの花が開いているところを写したい・・・と思っているのですが、生えている場所が少し遠いためまだ写せないままでいます。


ケヘチマゴケ (ハリガネゴケ科)

2011年06月09日 | コケ植物



岩の壁に着生しているケヘチマゴケ。 



明るい緑色の葉に赤い色の茎。 良く見ると葉の中肋も赤みがさしていてオシャレです。



茎の横断面をみると、 1番外側に厚い壁の表皮、その内側に大きめな皮層 、そして中心束 がみられます。
 


中心束は水の通導を行うhydroidと呼ばれる細胞でできています。 細かな部分までも美しいコケです。


乾 燥

2011年06月07日 | コケ植物



コケが葉をくるくると丸めてからからに干からびています。
コケは体の作りが単純で葉の厚みが細胞1個分しか無いのが普通ですので、周囲の空気が乾燥すると体内の水分は急速に失われてしまいます。 

しかし、コケはこんな乾燥にはびくともしません。
他の多くの植物が、水分を吸い上げる根や葉のクチクラ層を発達させて、水分の蒸発を防ぐ進化をとげたのに対し、コケはなんと乾燥を受け入れてしまうという別の選択を選びました。 



つまり、乾燥すると植物全体が積極的に乾燥し生命活動を一次休眠するというまったく異なる生き方を選びました。



そのかわりに雨が降ったときには一気に水を給水して光合成をはじめる・・・
コケは乾燥に弱いのではなく、乾燥する状況をあるがままに受け入れるという植物で、実は乾燥地に最も適した植物だったのです。

 Bryum capillare Hedw.
 
ハリガネゴケ (ハリガネゴケ科)


葉の細胞

2011年06月06日 | コケ植物



葉に油をぬったようなつやがあるところからアブラゴケの名がつけられました。 林内の湿り気のあるところに生える柔らかい葉を持つコケです。



葉の細胞がとても大きくて、ルーペで葉を見ると、なんと葉をつくっている細胞を実際に見ることができます。



葉の細胞は六角形をしていて100μm以上もあり、日本のコケの中では最も大きな葉細胞をもっています。



こんなに大きな細胞を持っていても、葉は細胞がたった一層しかありませんので、水分を保つ仕組みはありません。



湿り気が無かったり天気が良い日にはコケは水分をあっという間に失ってしまいます。

 Hookeria  acutifolia
 アブラゴケ   (アブラゴケ科)