見出し画像

Re-Set by yoshioka ko

■沖縄復帰35年に・・・

 (写真はロバート・マイケルさん。彼は1960年代、沖縄に司令部が作られた第七心理作戦部隊の将校として、さまざまな宣撫工作に関わった。われわれの復帰特番の取材には、彼が沖縄で経験したことの全てをカメラの前で語ってくれた)

 今日は、NHKの番組のMAと言う作業があった。ほぼ最終段階に来たということである。ナレーターは女優の竹下景子さん。スタジオに入っての開口一番が、「これまでにないとても素晴らしい番組だと思いました」。子供たちが今どのような状況に置かれているのか、いたく心を痛めておられたようだ。

 これは今月26日に放送予定だが、追ってご案内を本欄を通じてさせていただきます。

 ところで、明日5月15日は、沖縄が日本に復帰して35年目になる。すでにご案内の通り、沖縄では今晩7時から、琉球朝日放送(QAB)で「復帰を阻止せよ!~アメリカ軍・沖縄宣撫工作~」が放送された。終了した8時過ぎには、沖縄の友人たちから何本かの電話があった。35年以上も前の「秘話」とはいえ、視聴者はどのようなご意見を持たれたのか、是非知りたいところではあります。

 実は、この放送の直前に沖縄の新聞『琉球新報』の紙面をお借りして、「復帰35年 『守礼の光』に隠された米軍心理作戦」というタイトルでで、2回にわたって原稿を書いた(5月10日、11日付け)。テーマは、QABの放送と同じく「対沖縄宣撫工作」。本ブログにあらためて記事の全文を2回に分けて掲載します。

■「復帰35年 『守礼の光』に隠された米軍心理作戦」(上)
 基地からの脱却を願い、日本国憲法のふところに戻りたいと、あれほど熱望した日から三五年。憲法は、異民族支配に疲れ果てていた沖縄の人びとの心を癒やしただろうか。その答えは否であろう。しかも、沖縄の人びとが、憲法がもたらす本当の意味での恩恵を、いまもって享受できていないというのに、国はその改正に向かって走り始めた。その先に浮かぶのは、今度は日米同盟という名の下で、再び基地
との共存を強いられる沖縄の姿である。

 思い起こしてみればアメリカ軍も、反共という名の下で、基地を維持するための作戦を練ってきた。沖縄が復帰する以前のことである。

◇副編集長の証言
 『守礼の光』。各家庭に無料で配布されたこの月刊雑誌は、一九五九年一月創刊。以来復帰までの一三年間に一五九冊が発行された。発行元は、陸軍第七心理作戦部隊だった。

 アメリカ・バージニア州で退役生活をしているロバート・マイケルさんはいう。
 「雑誌の発刊は沖縄の住民に軍の良さを理解させ、駐留する必要性を知ってもらうためでした」

 マイケルさんが住むジェームズタウンは、ちょうど四〇〇年前、イギリスの植民地となったアメリカ最初の町である。「ジェームズタウンの原住民に軍の良さを理解させ、駐留する必要性を・・・」とイギリスからの入植者が言ったかどうかは定かではないが、ときとしてめぐってくる歴史の皮肉を思いながら、元第七心理作戦部隊将校だったマイケルさんに、アメリカが沖縄を占領したあとの統治政策の基本を問うてみた。

 「アメリカが考えていたことは、中国や日本という大国に支配されてきた沖縄は、自分たちの暮らしを自ら決めることができないということでした。民主主義を掲げるアメリカとしては、そのような沖縄の人びとを、自由で独立した人びとに変えたいという強い気持ちになっていたのです」

 自由で独立した人びと、この心地よく響く言葉の裏には、朝鮮戦争からベトナム戦争へという深まり行く冷戦の中で、沖縄基地をいかにしたら自由かつ効果的に維持できるか、そのためには日本復帰に傾く沖縄住民をいかにしたら支配できるか、という軍の使命が隠されていた。〈心理作戦〉が必要とされた理由でもある。

◇心理作戦の先兵
 例えば、雑誌『守礼の光』には「琉球人の勤勉努力」「琉球史上空前」「琉球の宝物」というように〈琉球人〉や〈琉球〉という呼び方が多用されている。その意図はなんだったのか。この雑誌に副編集長としても関わったマイケルさんは、当時を振り返る。
 
 「それは琉球人というアイデンティティーと、琉球は独自文化を持った独立国だったことを再認識させようとした、ある高等弁務官の統治政策によるものです」
ある高等弁務官、それは「キャラウェイ旋風」という言葉まで使われ怖れられた、ポール・キャラウェイ中将を指す。彼は一九六三年三月、沖縄に自治は存在しないと演説し、沖縄側から猛反発を受けた。だが、マイケルさんは沖縄の批判は当たっていないという。

 「キャラウェイが言おうとしたことは、琉球人は自らの自由意思で、もう一度琉球王国のような独立国家を作るだけの覚悟があるか、それこそが自治だと、問うたのです」

 独立への覚悟があれば、これは民族自決の大原則に従って、琉球民族の要求にアメリカは応えているのだと世界に向かって堂々と主張できる、というわけだった。そうなれば軍は念願でもある沖縄基地の自由使用も掌中にでき、つまりは〈心理作戦〉が効を奏することでもある。キャラウェイ高等弁務官の自治神話論は、まさに沖縄統治の正当性を獲得する一石二鳥となる言葉でもあった。

 琉球人は日本人にあらず、琉球人の関心をかつての琉球王国に向けさせること、そうすれば日本復帰などは諦めて、軍による支配を受け入れるはずだ・・・。この路線を『守礼の光』はひた走った。

 「琉球人のアイデンティティーを強調することで、彼らには素晴らしい歴史や文化があるのだから、日本からは独立して、西洋の国々と交わるべきだ、と主張したのです」

 元第7心理作戦部隊将校であり、副編集長でもあったマイケルさんの言葉通り、 『守礼の光』は〈心理作戦〉の先兵として、毎月沖縄の家庭に届けられた。(以下続く)

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「沖縄」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2021年
2012年
人気記事