野口健語る

2008-04-18 15:25:22 | 時事


【わが聖地・チベットの苦しみ】野口健(アルピニスト) VOICE


中国当局の激しい弾圧に、世界的な登山家が怒りの声をあげた。
北京オリンピックを控えたいま、わが国はチベットになにができるのか。(取材・構成:山際澄夫)


山際 「3月14日にチベット自治区のラサで発生した僧侶らによる"騒乱"は、四川、青海、甘粛各省のチベット人居住区に拡大し、中国の治安部隊はこれに銃撃を浴びせています。
野口さんは昨年、チベット側からエベレスト登頂に成功されました。
チベット人との交流も深いと思いますが、今回の事態をどのようにご覧になっていますか。」

野口 「はっきりいえば、こうなるのは時間の問題だと思っていました。
中国の警察が木の棒でチベット人を引っぱたく光景をよく見掛けましたから。
しかもそれはラサに限りません。浮浪者のような人が寝転がっているだけで殴る。
それが常態化しているんです。」

山際 「彼らはチベットからの難民ではないのですか。
難民がナンパ・ラ峠を越え、ネパールに逃れようとした、という見方もありますね。」

野口 「あのルートは有名で、交易する人も、難民も、同じ道を歩くんです。真相ははっきりわからない。
にもかかわらず『朝日新聞』は、チベット人が中国警備隊に危害を加えようとしたから、正当防衛で撃った、と報道した。」

山際 「チベットはもともとは独立国家です。チベット人の全人口は600万人程度なのに、中国によって100万を超えるチベット人が虐殺されてきた。
チベット出身のペマ・ギャルポさんの話を聞くと、家族が1人も虐殺の目に遭っていない人は見当たらないそうです。
そのような扱いを受けても、彼らはけっして武力で抵抗しない。」

野口 「短刀はもっていますが、実際に使用することはありません。」

山際 「なぜこのタイミングでチベット人は暴動を起こしたのでしょうか。」

野口 「北京オリンピックで世界の目が中国に集まっているいまなら、国際社会が注目してくれる、と考えたのでしょう。
戦略として正しいと思います。彼らには武力がありませんから、国際社会に訴えるしか手段がない。」

山際 「アメリカではリチャード・ギアやミア・ファロー、ミア・ファローに煽られたスティーブン・スピルバーグなど、数えきれない人が非難の声を上げています。
しかし日本では、町村官房長官が『基本的には中国の国内問題というものの、双方の自制を求める』という、
何がいいたいのかよくわからない発言を行なった程度でした。

野口 「僕がチベットについて自分のブログやホームページに書いたときも、『よく書いたな。おまえはもうチベット側から登れないぞ』といわれました。
実際にそうだと思います。僕の最終目標はエベレストをチベット側から登ってネパール側に降りることでしたが、それが失われてしまった。
登山家の多くが自身の欲望のために発言を控えるのは、ある意味、当然のことでしょう。
しかし、僕はその欲望と、現場を知ってしまった人間の思いのどちらを優先すべきか、自分に聞いたんです。
そして、やはり後者を優先すべき、という答えが出た。
いま発言しなければ、そのために僕は十字架を背負うことになるんです。
メディアも一緒です。騒乱が起こる前ですが、ある新聞の取材で『もうすぐチベットで大変なことが起きる、そう書いてください』といいました。
しかし『オリンピックの取材許可が下りなくなるから、無理です』と返された。
事態はそこまで進んでいるのか、と愕然としましたね。

抜粋


http://news.goo.ne.jp/article/php/world/php-20080410-01.html









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