シニア花井の韓国余話

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原則のない対北コメ支援

2010年08月25日 10時08分12秒 | Weblog
(韓国大手新聞、朝鮮日報 10.8.25記事抜粋)
 与党ハンナラ党の一部からここ数日、「北朝鮮へのコメ支援」を求める声が上がっている。安商守代表は8月22日に行われた「党・政府・大統領府関係者9人による会議」でこの問題に突然言及し、23日の人事聴聞会では、李在五特任長官候補者や劉正福農林水産食品部長官候補者などが、「検討する必要がある」と発言した。「援助保守」を自認する李会昌自由先進党総裁もこれに同調している。ハンナラ党では24日にも李君賢院内首席副代表が、「(北朝鮮へのコメ支援に関して)どうするつもりなのか、秋夕(チュソク、韓国のお盆/今年は9月23日)前に立場をはっきりすべきだ」と前向きな対応を求めた。 しかし政府と大統領府は、いずれも「まだその次期ではない」との考えを明確にしている。李明博大統領は23日にテレビニュースを視聴した際、「北朝鮮に対するコメ支援検討中」との字幕が出ると、「やらないと言っているのに、なぜこのようなものが出てくるのか」と不満げだったという。統一部も会見で、「コメ支援問題については検討する計画さえない」と明言した。
 与党から「北朝鮮へのコメ支援」を求める声が出てくる理由は二つある。一つ目は、コメの備蓄量が増加し続けているという点だ。ちなみに今年は150万トンに近くまで備蓄が増え、その保管費用だけで4000億ウォン(約281億円)が必要となる見込みだ。収穫期以降にコメ価格が下落すれば、農業関係者からの支持を失う恐れがある、との悲観論もある。これは、ハンナラ党の李君賢院内首席副代表も指摘するところだ。 また、政権維持が最大の目標である与党としては、南北関係の行き詰まりが今後も続くのは避けたいところだ。与党関係者は「前回の統一地方選で惨敗したのは、野党が“戦争か平和か”と攻勢をかけてきたのが大きく影響した」とコメントしている。 与党としては、「コメの過剰備蓄問題解消」と「南北関係打開の突破口」という二つの問題を、北朝鮮へのコメ支援で一気に解決したいところだ。北朝鮮の各地で洪水が発生し、多くの住民が被災したというニュースが飛び込んだことも、コメ支援主張の声を後押ししている。しかし、韓国政府の安全保障関連部処(省庁)の当局者は、「政治的な理由でコメ支援を再開すれば、1995年の失敗を繰り返してしまうだろう」と指摘する。金泳三政権は当時、統一地方選挙を数日後に控え、北朝鮮とコメ15万トンの無償支援に合意した。この当局者は、「94年に金日成が死去してから南北関係が行き詰まっていた。そのため政府は、これを打開することで選挙を有利に進めようとしたが、結果的には選挙に敗れ、南北関係の改善にもまったくプラスに作用しなかった」と振り返る。その後、北朝鮮へのコメ支援は、2000年になってようやく再開された。
 高麗大学のチョ・ヨンギ教授は、「たとえ人道支援であっても、原則と手続きは必要だ。まずは災害が発生した側の北朝鮮が、被害状況を明らかにした上で、支援を要請しなければならない。これは国際的な慣例だ」と指摘する。世宗研究所のイ・サンヒョン研究員も、「北朝鮮からの要請もないのに、備蓄米が過剰という韓国側の都合だけでコメ支援を行うのは的外れだ」と批判的だ。
 7月と8月に北朝鮮で報じられた内容から推測すると、咸鏡南北道と両江道を除く北朝鮮の全域が集中豪雨に見舞われた。ちなみに洪水の影響で南北首脳会談が延期となった2007年のケースでは、北朝鮮は「死亡・行方不明者600人以上、被災者90万人、20万町歩の田畑が浸水」などと被害状況を発表した。しかし今回は、北朝鮮で人命被害に関する報道はない。田畑への浸水も1万4850町歩ほどだ。統一部の当局者は、「被害状況に関する集計に時間はかかるだろうが、おそらく07年ほど深刻な状況ではないようだ」と推測している。
 中央大学のイ・ジョウォン教授は、「過去に行われたように、30-40万トンのコメを支援するのであれば、これは人道支援というよりも政治的な行動だ」と指摘する。北朝鮮が人道面で危機的状況に陥っているのなら、昨年末に韓国側が提案したトウモロコシ1万トンの支援をまずは受け入れるべきということだ。また、哨戒艦「天安」沈没事件以降、韓国政府は支援を打ち切っているが、再開の条件として北朝鮮の謝罪を求めた。これに対して北朝鮮はいまだに、「天安沈没は韓国の自作自演」と主張している。イ・ジョウォン教授は「大規模なコメ支援が再開されるには、天安問題で政府が決めた原則を自ら取りやめる大義名分が必要だ」と指摘する。過去に北朝鮮は、数十万トンのコメ支援を受ける際、その見返りとして、離散家族再会などに応じていた。
 大統領府関係者は「コメ支援は単なる人道問題だとか、あるいは備蓄過剰に陥ったコメを処分するといった問題では済まされず、さまざまな要因がからんだ北朝鮮戦略全体を考えるべきだ。そういった意味で、今は適切な時期ではない」と主張する。米国は近く、追加の制裁案を発表するとみられている。北朝鮮消息筋は、「北朝鮮は9月初めに予定されている朝鮮労働党代表者会議で、キム・ジョンウン氏の後継体制を公式化することを目指し、全力を挙げている。現時点でコメを支援するのは、この3代世襲に向けた作業を支援する結果にしかならない」と述べた。


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