案内された部屋は、なんと「マッカーサー・スィート」だった。
連合国軍総司令部の総司令官であったダグラス・マッカーサーは、
1945年8月30日、専用機で厚木の飛行場に降り立った。
その後すぐに横浜へ移り、ニューグランドホテル315号室に滞在した。
マッカーサーは戦前も新婚旅行などで個人的に日本を訪れているが、
その時もニューグランドホテルの同じ部屋だったという。
1991年、新館の「タワー」建設のため、旧館が改装されていると聞き、
私はこの「マッカーサー・スィート」に泊まらねば、と焦った。
伝説の部屋が変わってしまわないうちに、一度見ておきたかったのだ。
でも結局、ここはとれず、、せめてもと同じタイプのスィートをとった。
意外と家具がこじんまりしていて驚いたが、そこは女性将校が使用して
いたようだと、ホテルの従業員から聞いた。
今回は本物(?)の「マッカーサー・スィート」。
ホテルの総料理長である宇佐神茂氏と一階のバー「シーガーディアン」
でお喋りし、3階に戻ってくると、私の部屋の前に二人の中年女性が
立ちはだかっていた。
なにごとかと思ったら、「MacArthur,s Suite」と刻まれたドアの
プレートを入れ込んで、写真を撮り合っていたのだ。
「申し訳ありませんが……」と言ってどいてもらうと、「え、おたく
この部屋に泊まってらっしゃるの?」と、おおいに羨ましがられた。
たしかに私一人でこの部屋を楽しむのは贅沢だ。よろしければどうぞ
と入っていただき、居間も寝室もバスルームも見ていただいた。
お二人はせっせと写真を撮り、満足して帰られた。
居間の一部。壁に飾られている写真は、すべて当時のマッカーサー。
この椅子はマッカーサーが実際に使っていたもの。横浜家具と呼ばれる様式で
造られており、当時のものはほとんどこのホテルにしか残っていない。
そんなに大きくないのに、私では持ち上げられないほど重かった。
キングサイズのダブルベッド。もちろんこれは当時のものではない。
この奥にあるバスルームも最新設備が整っている。
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