滞っているネタが多数ありますが、取り敢えず忘れぬうちにこっちのネタを。
先日(本年 2/4)、科学コミュニケーション活動の一環として、サイエンスカフェの登壇者をやってきました。
会場は、三鷹市の「星と風のカフェ」。
小さな喫茶店なのですが、どんなお店であるかに関してはこちらをご覧下さい。
で、話の内容はこっちに本年2月9日現在で掲示がある通りで、
2/4 【花粉症の薬で眠くなるのはなぜ?】
講 師:横山 雅俊さん(NPO法人 サイエンス・コミュニケーション)
内 容:花粉症薬の典型的な副作用「眠気」について考えます。
...という感じでした。
話の構成はこんな感じにしました。
・花粉症の症状とその社会的背景
花粉症は目や鼻、喉の粘膜や皮膚に花粉が触れることをきっかけにして生じる1型アレルギー(アナフィラキシー型過敏症)の一種。原因となる植物は、春先の発症の印象が強いせいか、スギやヒノキが有名だが、ブタクサやヨモギ、セイタカアワダチソウ、北海道ではシラカバなど通年で存在する。スギ花粉症の社会的背景としては杉の植林の影響が大きいと考えられる。その一方で、他の側面(生活習慣、都市化など)の影響も考えられており、疫学調査も進んでいる。
・アレルギーの起こる仕組みと主な薬
1型アレルギーの発症の仕組みを説明した。花粉に由来するアレルゲンに感作されて、B リンパ球がこれを抗原として認識するようになり、抗体(IgE)を産生する。これが肥満細胞(の表面にある、ある種の蛋白質)に結合すると、それが引き金となって肥満細胞の脱顆粒が起こる。その際に吐き出されたヒスタミンやロイコトリエン等が各種の症状(鼻水、痒み、くしゃみ、充血、腫れなど)を引き起こす要因となる。
↑こんな感じの図をやっつけで作りましたw
・抗ヒスタミン薬が効く仕組み
そもそもの“薬を飲んでから効き目を示すまで”の科学として、薬物動態論と薬物受容体相互作用(→薬理学の基礎中の基礎)を紹介してから、ヒスタミンと H1 受容体およびそれらの分布に関してまず紹介した。それから、典型的な抗ヒスタミン薬を、その種類が沢山あることも含めて紹介した後、典型的な副作用として眠気や無自覚のパフォーマンス低下(最近知られるようになった“Impaierd Performance”と呼ばれるもの。例えばこちらを参照)などがあることを述べて、眠気の出易さに関して抗ヒスタミン薬が分類可能であることを説明した。
↑福井、太田、山本(日薬理誌 vol.113, pp283 ~ 297、1999 年)より
・抗ヒスタミン薬の副作用としての眠気
結局、抗ヒスタミン薬が脳に移行するからというのが眠気が出ることの本質なのだが、それは以下の2点で説明できる。第1に、脳にも H1 受容体が存在すること。第2に、血液脳関門(脳血管と脳の“境目”にある、選択透過性を持つ輸送担体)を抗ヒスタミン薬が通過すること。ところで、脳内のヒスタミン作動性神経は覚醒の維持や学習・記憶などに関与する。以上から、血液脳関門を通過して脳内に入った抗ヒスタミン薬は、H1 受容体に結合してヒスタミン作動性神経の働きを競合遮断することで、眠気(や無自覚のパフォーマンス低下)を引き起こす。
・オマケの話
医薬品開発の話、薬局の法的な定義の話、薬学出身者の活躍の幅が広い話、その他。
関連する話は、脱線wも含めて多岐に渡りました(市販の酔い止めや催眠薬にも抗ヒスタミン薬が使われている話、神経伝達の話から派生wしての“神経回路”の話、ヒトの進化に関する話、他の医薬品の副作用や飲みあわせの話、他)。
とりあえず、そこそこのご好評をいただき、デビュー戦としては上々だったようで。
次回があるのかどうかは分かりませんがw、まぁ経験値が1増加ってことで。
先日(本年 2/4)、科学コミュニケーション活動の一環として、サイエンスカフェの登壇者をやってきました。
会場は、三鷹市の「星と風のカフェ」。
小さな喫茶店なのですが、どんなお店であるかに関してはこちらをご覧下さい。
で、話の内容はこっちに本年2月9日現在で掲示がある通りで、
2/4 【花粉症の薬で眠くなるのはなぜ?】
講 師:横山 雅俊さん(NPO法人 サイエンス・コミュニケーション)
内 容:花粉症薬の典型的な副作用「眠気」について考えます。
...という感じでした。
話の構成はこんな感じにしました。
・花粉症の症状とその社会的背景
花粉症は目や鼻、喉の粘膜や皮膚に花粉が触れることをきっかけにして生じる1型アレルギー(アナフィラキシー型過敏症)の一種。原因となる植物は、春先の発症の印象が強いせいか、スギやヒノキが有名だが、ブタクサやヨモギ、セイタカアワダチソウ、北海道ではシラカバなど通年で存在する。スギ花粉症の社会的背景としては杉の植林の影響が大きいと考えられる。その一方で、他の側面(生活習慣、都市化など)の影響も考えられており、疫学調査も進んでいる。
・アレルギーの起こる仕組みと主な薬
1型アレルギーの発症の仕組みを説明した。花粉に由来するアレルゲンに感作されて、B リンパ球がこれを抗原として認識するようになり、抗体(IgE)を産生する。これが肥満細胞(の表面にある、ある種の蛋白質)に結合すると、それが引き金となって肥満細胞の脱顆粒が起こる。その際に吐き出されたヒスタミンやロイコトリエン等が各種の症状(鼻水、痒み、くしゃみ、充血、腫れなど)を引き起こす要因となる。
↑こんな感じの図をやっつけで作りましたw
・抗ヒスタミン薬が効く仕組み
そもそもの“薬を飲んでから効き目を示すまで”の科学として、薬物動態論と薬物受容体相互作用(→薬理学の基礎中の基礎)を紹介してから、ヒスタミンと H1 受容体およびそれらの分布に関してまず紹介した。それから、典型的な抗ヒスタミン薬を、その種類が沢山あることも含めて紹介した後、典型的な副作用として眠気や無自覚のパフォーマンス低下(最近知られるようになった“Impaierd Performance”と呼ばれるもの。例えばこちらを参照)などがあることを述べて、眠気の出易さに関して抗ヒスタミン薬が分類可能であることを説明した。
↑福井、太田、山本(日薬理誌 vol.113, pp283 ~ 297、1999 年)より
・抗ヒスタミン薬の副作用としての眠気
結局、抗ヒスタミン薬が脳に移行するからというのが眠気が出ることの本質なのだが、それは以下の2点で説明できる。第1に、脳にも H1 受容体が存在すること。第2に、血液脳関門(脳血管と脳の“境目”にある、選択透過性を持つ輸送担体)を抗ヒスタミン薬が通過すること。ところで、脳内のヒスタミン作動性神経は覚醒の維持や学習・記憶などに関与する。以上から、血液脳関門を通過して脳内に入った抗ヒスタミン薬は、H1 受容体に結合してヒスタミン作動性神経の働きを競合遮断することで、眠気(や無自覚のパフォーマンス低下)を引き起こす。
・オマケの話
医薬品開発の話、薬局の法的な定義の話、薬学出身者の活躍の幅が広い話、その他。
関連する話は、脱線wも含めて多岐に渡りました(市販の酔い止めや催眠薬にも抗ヒスタミン薬が使われている話、神経伝達の話から派生wしての“神経回路”の話、ヒトの進化に関する話、他の医薬品の副作用や飲みあわせの話、他)。
とりあえず、そこそこのご好評をいただき、デビュー戦としては上々だったようで。
次回があるのかどうかは分かりませんがw、まぁ経験値が1増加ってことで。
主催者のところで紹介されました。何だか嬉しいな。
http://www.tenpla.net/hoshicafe/diary.cgi?mode=trackback&no=26