コラテラル

タクシーに殺し屋が乗った事で，二人の人生が一変するある夜の出来事

「ナイト・オン・ザ・プラネット」のような人生物語でした。

トム・クルーズが初めてきちんと演技をしている印象。
いつもは「俺ってかっこいいでしょ」オーラが前面に出ていて，
どの映画も役柄というより「トム・クルーズ」そのものだったように思いますが，
今回は，過去を秘めた殺し屋を，死の影を背後に感じさせつつ，
クールにスタイリッシュに，「ビンセント」に成りきっていた。

とはいえ，映画史上に残るほどの愛すべき悪役までには至らない。

ドジな点が多すぎて，プロの殺し屋に見えないのが辛い・・・

だからこそ人間臭いといえばそうなんだけど・・

などの行動では突っ込む所が多い分，感情面で訴えるものあり。

次第に見えてくる悲しい過去と，
現在の血なまぐさい仕事の迷い，未来の絶望が，
放つ銃声に込められ魂の叫びに聞こえる。

対するタクシー運転手は，
夢を持ち計画を立てるもなかなか腰が浮かない，お客を乗せては降ろす毎日。

そこへビンセントに遭遇，デッドオアアライブの極限の中，会話をし，
お互いの心に触れるうち，自分を見つめなおしてゆく過程をジェイミー・フォックスが，
ときにコミカルに，ときに頼もしく度胸を見せるマックスを熱演。

来年のアカデミー助演男優賞にノミネートされるかも。

二人の感情のぶつけ合いが見応え十分。

呆気無いラストに見えて，実は確実に未来は変わったと匂わせる鮮やかな幕切れ。

常に人と出会い別れる人生は，言い換えれば良い意味でも悪い意味でも巻き添えみたいなもの。

「コラテラル」は夜を徹する気怠さと興奮で激しい一夜を描く渋い作品でした。




原題：COLLATERAL

監督：マイケル・マン

出演：トム・クルーズ，ジェイミー・フォックス，ジェイダ・ピンケット＝スミス 他

上映時間：120分

コラテラル スペシャル・コレクターズ・エディション トム・クルーズ パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン 2005-03-04 売り上げランキング　27 Amazonで詳しく見る　　　by G-Tools

「コラテラル」オリジナル・サウンドトラック