ミッドナイトヴァージン Production Note

WEBノベル『ミッドナイトヴァージン』の本条靖竹のブログです。

とらドラ!が何故飛び抜けて面白いのか考えてみた

2008年11月28日 23時03分37秒 | Weblog
今週の「とらドラ!」9話も相変わらず素晴らしかったですね!(大コーフン!)
30分があっという間の、至福の時間。テンポいいギャグパート、緻密なレイアウト、声優の生々しい「裏」を感じさせる演技。それぞれ奇抜なものでなく普通なんだけど、面白くてあっという間。人間関係が「生きてる」化学反応を堪能しました。

2話まで見た時にぐっとつかまれた感があって、シナリオと演出に非常に感心したし、同時に正直焦りました。今時のラノベ原作アニメってこんなに面白いもんなの!?と。

そして同時期に放映が始まったアニメをたくさん見てみました。
なるほど、それぞれ、良く出来ています。作画の凝り具合で言ったら「かんなぎ」や「とある魔術の禁書目録」のほうが充実してるような気がするし。
でも「とらドラ!」にあるようなマジックまで感じるかというと……。

もちろん全ての面において技術的に優れている、とか、そもそも原作が面白い、とか、言ってしまえばおしまいなんですけど、仮説として、今思いつく項目を並べてみました。正解かどうかはともかくとして。

(1)好感の持てる主人公像
「なんでモテるのかわからない主人公」っていうのはギャルゲ的ノリの弊害だと思います。
「とらドラ!」の主人公はいい奴で健気で世話好きで、適度にコンプレックス持ってて、でも嫌味がない。ヒロインが好きになっていくのがわかる。キャラの行動原理が理解できるということは、もっとも基本かつ重要なのだとしきりに思い知らされます。
「かんなぎ」「禁書目録」はこのあたり弱いかもですね。

(2)非単線的人間関係
男2、女3っていう関係は、一対一、一対多のストーリーより深みがある。たとえば、AさんがB子ちゃんと絡んでる時にも、同時にCさんはこう思ってるんだろうなぁ、とか同時的に視聴者に推測させる。
「背後で同時に何かが動いている感じ」「一つの行動が複数の人間に影響を及ぼす」あたりの複雑さっていうのは、ドラマで重要な要素で、これもギャルゲなんかでは忘れられがちな点かと思います。

(3)作品の目指すところ、ゴールがわかりやすく、真剣であること
竜児も大河も、恋と友情に真剣で、好きな人の前でキョドっちゃったり、友達の応援のおかげで告白する勇気をもらう、ってのはじーんときますね。
「なんとなく気持ちいい」だけの美少女アニメではないってことです。
達成感は不安や恐怖、努力や恥や勇気と引き替えに得られるものであるべきなのです。

(4)ストレートかつ余分なものがない演出
原作の消化スピードはかなり速いらしいけど(原作未読)、テンポよく抽出して流れがいい。
演出家やシナリオライター、原画マンの個性が作品の持ち味を殺してない。
スタッフの自己主張ばかり見せられるのも、時には興ざめだから。
作品で最も重要なのは、なんといっても「キャラクター」だと思います。キャラを生かす方向の、抑制の効いた演出が効を奏しているのでしょうね。

比べるようで申し訳ないんですけど、「かんなぎ」は、今の所その目指すところがちょっとわかりずらい気がします。演出的な意図(80年代風テイスト。さびれた地方の背景美術と生々しさ重視のアニメーション、スタッフネタ)が過剰なのでは?と思ってしまう。そのせいでいまいち熱さや勢いを感じないのかもしれない。どちらにしても、とっても高レベルだなと思います。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ミッドナイトブルー)
2008-11-30 19:38:19
とらドラ!面白いですよね。

かく言う僕も原作未読なのですが。
ラノベ原作のアニメって内容を詰め過ぎてしまってわかり難かったり、心情的変化を表すモノローグ的要素の演出が足りなかったりして好きなラノベがアニメ化するといつも残念がっていたんですが、とらドラ!は面白いと思います。

こうして分析されたものを読むとなるほどなぁっと関心しました。
キャラクターの個性や魅力が強くそれだけでも作品になってしまう、それを中心とする、キャラクター小説なんて言われかたするものもありますが、とらドラはそちら側の作品だと思います。
Unknown (靖竹)
2008-12-06 14:32:38
>ラノベ原作のアニメって内容を詰め過ぎてしまってわかり難かったり、心情的変化を表すモノローグ的要素の演出が足りなかったりして

とらドラ(アニメ)はかなり詰め込みなんですけど、必要十分な描写があって、うまい!と唸りますねー。
(漫画版のほうは「詰め込み」が上手く処理できてないのかな?と思いました。絵は好き。)

>キャラクターの個性や魅力が強くそれだけでも作品になってしまう

必要最低限の要素でラノベを作っていますよね。