民事裁判の記録(国賠)・自衛隊車とバイクの交通事故の民事裁判

1・訟務検事の証拠資料のねつ造など不法な弁論。
2・玖珠署の違法な交通犯罪の捜査,虚偽の実況見分調書の作成

7:(被告) 準備書面(1) 

2006-02-06 20:20:54 |  第3訴訟 第1審 被告国(訟務検事)
平成17年(ワ)第3710号国家賠償請求事件
原告  出羽やるか
被告  国


         準 備 書 面 (1)
                         平成18年2月10日
横浜地方裁判所第9民事部合議係 御中

               被告指定代理人  宮 崎  雅 子  代
                        熊 谷  勇 人  代
                        清 宮  克 美  
                        久保寺    勝
                        大 當  光 憲  代
                        小 田    昇  代

                一1一

 被告は,本準備書面において,原告の訴状における主張に対し,必要な範囲で認
否及び反論を行い,併せて被告の主張をする。
 なお,略称等は,本書面において新たに用いるもののほかは,従前の例による。

第1 はじめに
 1 原告の主張の要旨について
   原告は,横浜地方裁判所平成13年(ワ)第2714号損害賠償請求事件(以
  下「別件訴訟」という。)の被告国の指定代理人らは,訴状第2の1(1)記載の
  事故の証拠資料のねつ造・改ざんを行った違法があると主張して(訴状第3の
  2・6ぺ一ジ13行目以下),大要,証拠資料を隠蔽破棄し,提出しない(訴
  状第3の2の第1点欄),自衛隊の行った実況見分を隠蔽した(同第2点欄),
  KP34.9里程標について証拠資料のねつ造・改ざんをした(同第3点欄),
  KP34.9付近の警戒標識について証拠資料のねつ造・改ざんをした(同第
  4点欄)と主張し,併せて上記事故の態様等について主張するようであり(同
  第5点欄),上記指定代理人らは,「国の公権力の行使に当たる公務員であり,
  その職務を行なうについて,故意または過失によって違法に原告に損害を加え
  たので,被告は,国家賠償法第1条に基づき,原告に生じた損害を賠償する責
  任がある。」などと主張する(訴状第1の3・2ぺ一ジ20行目以下)。
 2 被告の主張の要旨
   しかしながら,別件訴訟における本件事故(訴状第2の1(1)の記載を答弁書
  第2の2(1)のとおり訂正した内容の事故)の態様の認定にかかる証拠資料等に
  関しては,別件訴訟の控訴審判決において,ねつ造,改ざんされたということ
  はできない旨,既に判示されており(甲第9号証6ぺ一ジ以下),同判決は上
  告されたが,上告棄却の決定により確定している(甲第10号証。なお,原告
  は控訴審判決に対し,上告受理の申立てもしたが,却下され,これに対して更
  には許可抗告の申立てをしたが,東京高等裁判所が不許可の決定をし,原告の

                一2一

  特別抗告の中立てに対し,最高裁判所はこれを棄却している。)。また,原告
  は,原告が神奈川県公安委員会を相手として提起した横浜地方裁判所平成16
  年(行ウ)第37号交通違反点数課点処分取消等請求事件(以下「別件行政訴
  訟」という。)においても同様の主張をしたが(甲第17号証12ぺ一ジない
  し14ぺ一ジ),採用されていない(甲第17号証17ぺ一ジ以下)。
 3 小括
   したがって,訴状第1の2に記載された別件訴訟の各指定代理人(以下「浅
  香ら」という。)は何ら違法行為を行っていないのであるから・原告の主張が
  失当であることは明らかである。以下,念のため,個別に認否・反論をする。
第2 請求の原因に対する認否
 1 「第3 別件訴訟に於ける,浅香ら国の指定代理人の違法行為」について
  (1) 1について
        認否の限りではない。
    ただし,「訟務統括審議官」は,「訟務総括審議官」が正しい。
  (2) 2について
    浅香らが証拠資料のねつ造及び改ざんを行ったことは否認し,違法との主
   張は争う。
  (3) 第1点「1 警務隊の調査資料」について
    (1)の第1段落ないし第4段落記載の事実は認め,第5段落及び第6段落記
   載の主張は争う。第7段落記載の原告の内心は不知。
       (2)記載の事実は認める。ただし,別件訴訟控訴審における,平成15年1
     月21日付け答弁書により主張したものである。
       (3)記載の事実について,原告が,別件訴訟控訴審において,平成15年1
     月21日付け控訴審準備書面(1)により主張した内容であることは認める。
   (4) 第1点「2 玖珠讐察暑の実況見分調書」について

               一3一

     (1)について,第1文記載の事実は認め,第2文記載の事実は否認する。事
   故現場見取り図は,別件訴訟において,平成13年11月5日付け準備書面
   (1)(甲第21号証)に添付している。
        (2)及び(3)記載の事実は認める。
        (4)記載の事実につき,捜査報告書・事故調査報告・実況見分調書等を証拠
   として提出していないことは認め,その余は不知。
  (5)  第1点「3 車両使用請求書・車両運行指令書」について
    (1)及び(2)記載の事実は認め,(3)記載の事実は認否の限りでない。
        (4)記載の主張は争う。
    (6) 第1点「4 当事者照会」について
    (1)ないし(3)記載の事実は認め,(4)記載の主張は争い,(5)及び(6)記載の事実
   は不知。
    (7)第1点「5 運行記録計」について
    (1)記載の原告が別件控訴審において,平成15年1月21日付け控訴審準
   備書面(1)で主張した内容については認める。
   (2)記載の事実は不知。
  (8) 第2点「自衛隊の行った実況見分の隠蔽」について
     1項記載の陸上自衛隊損害賠償実施規則(以下「規則」という。)の内容
   及び2項記載の別件訴訟の経緯は認める。
   3項記載の主張については争う。「発生報告書」及び「実況見分調書」等
   については,規則第7条に定めるとおりであり,本件事故については作成さ
   れていない。なお,本件事故は,賠償責任のない事故であることから,方面
   総監には報告を要しない案件である。
    4項記載の事実について,原告が入手した行政文書の内容は認める。ただ
   し,当該事故は自衛隊車に過失があったものであり,被告に過失が認められ
   ない本件事故とは事案を異にする。

                 一4一

    5項及び6項記載の事実については認める。なお,陳述書は,その内容を
   確認した上で,小野寺及び片岡両名が自署及び押印し,作成されたものであ
   る。
    7項記載の事実は不知。
    8項記載の事実は否認する。北熊本駐屯地業務隊長は,賠償事故に伴うこ
      とに関し,小野寺(国)には過失がないと判断したものであり,同隊長が小
   野寺に過失がないと決定したものではない。
    9項記載の事実について否認する。「発生報告書」及び「実況見分調書」
   等の作成については,規則第7条に定めるとおりであり,本件事故について
   は作成されていない。また,本件事故は,賠償責任のない事故であることか
   ら,方面総監には報告を要しない案件である。
    10項記載の事実については認める。
    11項(1)記載の事実は不知,同(2)記載の事実は認める。同(3)ないし同(6)記
   載の事実について,事故再現見分は,警務隊の協力を得て自衛隊側で実施し
   たものであり,甲第27号証の写真のうち,ワイシャツ,ネクタイ着用は,
   防衛庁事務官であり,オートバイの運転者は自衛隊の作業服を,その他は自
   衛隊の夏制服を着用した自衛官である。なお,原告は,写真に写っている人
   物の特定を求めているが,本件訴訟における原告の主張,立証を準備するた
   めに必要な事項とは認められない。同(7)記載の事実は不知。
    12項(1)記載の率実は不知。同(2)記載の事実は認める。同(3)記載の事実は
   否認する。本件事故が損害賠償請求事件として提訴されたことから,本件事
   故の状況等を調査・確認するため再現見分を行ったものである。同(4)記載の
   事実について,甲第23号証の①の地点からイ地点までが,草木に遮られて
   見通せないことについては否認し,その余は認める。同(5)記載の事実は認め
   る。ただし,事故状況再現写真は,本件事故当時と撮影時期が違うことによ
   り,原告主張のように現場の状況が相違していると思われる。
                 一5一
    13項について,原告の主張は,別件訴訟における当事者の主張の当否を
   問うようであるが,別件訴訟における主張の当否は,別件訴訟で解決済みで
   あり,本件訴訟とは関係がないので,認否の限りではない。仮に,原告の主
   張の趣旨が,別件訴訟における浅香らの主張について,当該主張をした行為
   自体が違法行為であるという趣旨であれば,争う。なお,事故再現見分が行
   われた日が本件事故から712日経過した日であること,甲第23号証の事
   故現場見取図(以下「本件事故現場見取図」という。)が作成された際のタ
   イヤ痕の状況及び本件事故現場見取図作成経緯については認める。
  (9) 第3点「証拠資料のねつ造・改ざん(KP34.9の里程標)」について
    否認ないし争う。
    ただし,甲第15号証の別紙1写真Bの撮影年月日は,平成11年10月
   29日,甲第35号証の写真⑩ないし⑯の撮影年月日は,平成13年10月
   30日であると思われる。
  (10)第4点「証拠資料のねつ造・改ざん(KP34.9の讐戒漂識)」について
    否認ないし争う。
    なお,原告の主張する甲第35号証の警戒標識の写真は,甲第42号証の
    実況見分調書添付の写真であり,被告指定代理人らはその作成に関与するこ
   とができないものである。
  (11)第5点「その他」について
    否認ないし争う。
 2 「第4原告の損害総合計3000万円」について
   不知。
 3 「第5結論」について
   争う。
                一6一

第3 被告の主張
  1 「警務隊の調査資料」について(訴状第3の2第1点の1)
   警務隊の調査資料の存在については,被告が別件訴訟の控訴審において既に
  主張し,同判決で判示されているところであるが,念のため以下述べる。
   原告は,訴状第3の2第1点の1において,「警務官は,警察の捜査資料に
  基づいて警務官の調査資料を作成し報告することになる」と主張し(訴状10
  ぺ一ジ17行目及び18行目),また,警務官が本件事故の捜査を事故直後行
  っていないとは考えられないなどとして北熊本の警務隊が本件の捜査資料を破
  棄又は隠蔽している疑いが強いと主張するようである(訴状8ぺ一ジ13行目
  及び14行目)。
   しかしながら,「自衛隊と警察との犯罪捜査に関する協定」(乙第1号証の
  1)及び「自衛隊と警察との犯罪捜査に関する協定の運用に関する了解事項」
  (乙第1号証の2)によれば,道路交通法に定める車両の交通に関する犯罪に
  ついて,人の死傷又は物の損壊をともなうものにあっては,自衛隊の隊員が犯
  したものであり,被害者が自衛隊の隊員である場合又は被害物件が自衛隊が所
  有し,若しくは使用する物件である場合においては,警務官が分担し,その他
  の場合においては,すべて警察官が分担することと規定しており,仮に本件事
  故が犯罪行為に該当するとしても,被害者が自衛隊員でないから,本件事故の
  捜査担当は警察官であり,警務隊により本件事故に関する捜査資料が作成され
  るものではない。
   したがって,北熊本の警務隊が本件捜査資料を破棄又は隠蔽している疑いが
  あるなどとする原告の主張は失当である。
 2 「証拠写真のねつ造・改ざん」(訴状第3の2第3点・第4点)について
   証拠写真のねつ造・改ざんについても,被告が,別件訴訟及び同控訴審にお
  いて既に主張し,各判決で判示されているところであるが,念のため以下のと
  おり述べる。
                 一7一

   原告が,被告指定代理人らが証拠資料をねつ造・改ざんしたという甲第32
  号証及び第35号証の①ないし⑥の写真は,いずれも甲第42号証の玖珠警察
  署作成の実況見分調書添付の写真であり,別件訴訟の平成13年9月3日付け
  文書送付嘱託により送付されたものである。同調書を所持しているのは,大分
  地方検察庁日田支部であることから,被告指定代理人らはその作成に関与でき
  る立場にない。
   したがって,証拠写真のねつ造・改ざんをしているなどとする原告の主張は
  根拠のない推測に基づくものであり,失当である。
 3 「その他」(訴状第3の2第5点)について
   原告は,別件行政訴訟控訴審において主張した,本件事故による道路の痕跡
  及び本件事故の態様をも引用・主張するようである。
   原告の主張の趣旨が,本件事故の態様こ関して,、原告に過失がないという
  意味で主張を引用するのであれば,別件訴訟の蒸返しともいうべきものであり,
  本件事故の態様に関する審理は不要である。
   なお,被告は,別件行政訴訟被控訴人(神奈川県公安委員会)の主張につい
  ては知る限りではないが,別件行政訴訟第一審判決並びに別件訴訟及び同控訴
  審の各判決では,いずれも本件事故は,原告の一方的過失によるものであると
  の判示がされている。

第6 結語
   以上のとおり・原告の主張はいずれも失当であり,理由がないことは明らか
  であるから,速やかに棄却されるべきである。


               一8一