平成17年(ワ)第3710号 国家賠償請求事件 原告 出羽やるか 被告 国 準 備 書 面 (5) 平成18年5月19日 横浜地方裁判所第9民事部合議係 御中 原告 出羽やるか 原告は,平成18年5月19日付け被告の準備書面(4)に対し,次のとおり 弁論を準備する。 略称等は,本準備書面で新たに用いるもののほかは,従前の例による。 なお,平成18年4月10日付け原告の準備書面(4)第3の1,(3頁)「平 成13年9月27日付け玖珠警察署作成の実況見分調書(甲42)添付の写真⑩ (甲32⑪)の拡大写真(甲33)・・」は,「平成13年9月27日付け玖珠警 察署作成の実況見分調書(甲42)添付の写真⑪(甲32⑪)の拡大写真(甲3 3)・・」が正しい。 目 次 第1 事故再現見分に対する玖珠警察署の関与・・・・・・・・・・・・・・2 第2 既判力の客観的範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第3 原告車線のひし形マーク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 第4 KP34.9の警戒標識(線形誘導標)・・・・・・・・・・・・・・7 第5 浅香らの本件事故の証拠資料のねつ造・改ざんの一例・・・・・・・・8 第6 終わりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 1/9 第1 事故再現見分に対する玖珠警察署の関与 1 原告は,平成18年3月24日付け原告準備書面(3)で,第1の1「事故発生 の状況4ブレーキを踏んだ地点の写真(甲64)に写っているバイクの後ろを 支えている,白色の半そでシャツと藍色の野球帽及びズボンを着用した人物(以 下「野球帽の人物」という)は,着用している帽子が警察活動帽(甲72)で, 金線顎紐付であることなどから,幹部級の警察官である」,第1の3「陸上自衛 官が使用する野球帽は,部隊識別帽と呼ばれ,第8師団の識別帽の色は基本的 に濃緑色である(甲58)」と主張した。 2 被告は,平成18年3月24日付け被告準備書面(3)で,「陸上自衛隊第8師 団の司令部付隊の帽子は,濃緑色であるが,帽子は部隊識別帽であり,同じ第 8師団でも,第8師団特科連隊の帽子は青色である。甲第64号証に写ってい る青色の帽子を着用している人物は,この第8師団特科連隊に所属する隊員で あり,原告の主張には誤解がある」と主張した。 3 原告は,平成18年4月10日付け原告準備書面(4)で,「自衛官服装規則第 4条は,部隊等の長は,自衛官の服装のせい一を図ることに努めなければなら ないとし,陸上自衛官服装細則は,同別表第3で,部隊識別帽は,「自衛隊の施 設内において,勤務に従事しない場合,又は勤務に従事する場合において部隊 等の長が,略帽,作業帽及び運動帽に代えて着用することを認めた場合」に着 用するとする。」,「(1)・事故再現写真(甲63,甲64)に写っている自衛官 は制帽に夏制服,作業帽又はヘルメットに作業服を着用し,防衛庁事務官はワ イシャツにネクタイを着用している。野球帽の人物は服装の斉一(統一)を乱 している。(2)・制帽に代えて識別帽を着用することは認められていない。(3)・ 警察の,特に警ら車に乗車する警官の,活動帽にはあごひもがついているが, 自衛隊の識別帽にはあごひもはついていない。(4)・第8特科連隊が本件事故再 現見分に参加する理由がない。(5)・撮影現場は自衛隊の施設外である。」と主 張した。 2/9 4 被告は,平成18年5月19日付け被告準備書面(4)第1で,甲第64号証の 写真の左端の人物(野球帽の人物)の帽子については,帽子のつば部分に確認 されるものはあごひもではなく,飾りのモールである(乙第2号証)。なお,同 人について被告準備書面(3)2に第8特科連隊所属の隊員としたが,より正確に は,現在は第8特科連隊の所属であるが,写真の撮影当時は第8師団司令部法 務官所属の隊員である。甲第64号証の写真で同人の帽子が青色に見えるのは, カラーコピーの具合により変色して見えるものと思われ,本来,同人の帽子の 色は乙第2号証のとおり濃緑色であると主張する。 5 原告の主張(1)・第8師団司令部法務官所属の隊員は,作業帽又はヘルメット に作業服を着用することになる。制帽に代えて識別帽を着用することは認めら れていない。撮影現場は自衛隊の施設外である。被告の主張は一貫性がなく原 告の主張に対する反論となっていない。 6 原告の主張(2)・甲第64号証の写真で同人の帽子が青色に見えるのは,カラ ーコピーの具合により変色して見えるものと思われるのなら,変色していない 甲64の写真を提出すればよい。野球帽子のつば部分に確認されるものはあご ひもか,飾りのモールであるかも判明する。 7 原告の主張(3)・原告は,平成18年3月24日付け原告準備書面(3)第1の 5で,玖珠町には第8師団の玖珠駐屯地があり玖珠警察署との関係は深い,自 衛隊から1等陸佐を含む上級幹部が参加しているから,儀礼的にも,玖珠警察 署からも上級幹部が参加しているはずである,甲63のKP34.9の里程標 のすぐ近くに写っている所属不明の人物は玖珠警察署の交通課長以上の上級幹 部であろうと主張し,甲63の写真の原本の提出を申立てた。 8 原告の主張(4)・平成18年3月24日第3回口頭弁論期日に,裁判所も被 告に対し,別件訴訟乙1及び乙4の写真を提出するよう努めるよう釈明した。 被告は,原告が提出を申立てている文書及び写真を進んで全部提出し,真実の 発見に協力すべきである。 3/9 第2 既判力の客観的範囲 1 被告の主張・ 原告は,警戒標識,タイヤ痕と擦過痕及び本件交通事故の態様 等に関し,推論を重ねて主張する。また,別件訴訟,同控訴審及び別件行政訴 訟(以下「別件訴訟等」という。)においても,原告は,本件訴訟で証拠とし て提出しているのと同一の書証を提出して同様の主張を繰り返してきた。 原告のこれら主張については,別件訴訟等においても,各判決で証拠写真が ねつ造・改ざんされていない旨判示されており,別件控訴審判決書(甲第9号 証7ページ14行目)において「甲第23号証(実況見分調書)は,事故当日 に警察官により実施された実況見分の内容を記載したものと認めることができ る。」と判示されている。したがって,原告の推論はいずれも失当である。 2 原告の主張・確定判決は主文に包含するものに限り,既判力を有するのであ り,判決理由中の判断には既判力は生じないから,被告の主張が失当であるこ とは明らかである。 3 被告は,原告の,警戒標識,タイヤ痕と擦過痕及び本件交通事故の態様等に 関しての主張に対する認否,反論をしない。平成18年4月10日付け原告の 準備書面(4)での原告の主張(1) 第4警察写真⑯・タイヤ痕と擦過痕 (2) 第 5原告撮影の本件事故現場道路写真(原告写真甲66)(3) 第6本件事故処理 の事実経過(4) 第7 自衛隊写真②・原告車線のひし形マーク(本件交通事故 の態様)浅香らは,平成13年11月5日付け準備書面(甲21・5頁)で, 「小野寺は,②地点において,原告車がロ地点でハンドルが左右にぶれだし, カーブが曲がりきれない様子で,③地点において,衝突の危険を感じ,ブレー キを踏もうとした瞬間,原告車は,ハ地点から自衛隊車運転席の横を通過する とほぼ同時に炊事車の右車輪付近に衝突した。」と主張している。現場見取図 (甲77)で,ロ-ハ-ニ-Xと走行したバイクがX点で対向車に接触した場合, 図示の転倒地点ホに至ることは慣性の法則からあり得ない。 4 原告は平成18年3月24日付け原告準備書面(3)を陳述し,第1・事故再 4/9 現見分に対する玖珠警察署の関与,第2・証拠資料(事故現場写真)のねつ造・ 改ざんについて,第3・原告車線のひし形マーク,第4・被告準備書面(2)につ いて,など,8頁にわたり,具体的主張を行なった。 5 被告は平成18年3月24日付け被告準備書面(3)を陳述し,「原告が主張 する,事故再現見分時における玖珠警察署の関与及び被告の証拠写真のねつ 造・改ざんについては,被告準備書面(1)及び(2)により,被告が繰り返し主張 しているとおりである。」との三行半の答弁を行なったのみである。被告が繰り 返し主張しているのは,別件訴訟で,ねつ造,改ざんしたということはできな い旨既に判示されており確定している。別件行政訴訟でも採用されていないと いうことである。被告は平成18年5月19日付け被告準備書面(4)でも,こ の主張を繰り返し,原告の主張に対する認否,反論,主張は必要ないとして, 弁論を行なわない。 6 一方,原告が申立てた文書及び写真は提出しない。 7 被告の対応は,できるだけ釈明をしないという態度で一貫している。まとも に釈明することでことさら国側に不利な事実を表面化させるからである。 第3 原告車線のひし形マーク(自衛隊写真②・警察写真⑩・原告写真甲66) 1 被告の主張(1) 本件事故現場付近の路面上にペイントされているマークは, 前方にカーブがあることを示す警戒表示である減速マークが経年によってタイ ヤの通過箇所が摩滅したものと思われ,原告が主張するように被告が書いたり 消したりしたものではない。 2 被告の主張(2) 原告は,実況見分調書添付の写真に写ったマークは,警察署 等の許可を得ずに設置するのは取締法違反であるから,実況見分調書に記載さ れるべきであるのにされていないことを主張しているが、原告の主張する「取 締法規違反」などない。 3 被告の主張(3) 当該現場には「自衛隊写真②」のとおり9個のマークが 存在している。「警察写真⑩」にはそのうちの6個のマークが写っているのであ 5/9 り,甲第66号証①②⑨の各写真も同様に6個のマークが写っているのである。 4 原告の主張(1)・取締法規・道路交通法第76条1項 何人も、信号機若しく は道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置しては ならない。(罰則 第118条),及び道路法第43条 何人も,道路に関し、 左に掲げる行為をしてはならない。1みだりに道路を損傷し、又は汚損するこ と。(罰則第100条)。(何人もとあるからたとえ警察官,道路管理者でもみだ りに設置してはならないのである。)(2)・ 原告車線のひし形マークの存在は 原告車の運転に影響を及ぼすから,堀部警部補が実況見分時このマークの存在 を認めたら,実況見分調書に記載すべきところ,このマークについての記載は ない。(3)・ 警察写真⑥及び⑦の原告車線に「徐行」の道路標示がある。堀部 警部補が実況見分時この徐行の道路標示の存在を認めたら,実況見分調書に記 載すべきところ,この標示についての記載はない。原告車線のひし形マークが 減速マークであるとすると,道路標示は「この先カーブ」または「速度落とせ」 となる。本件事故後,警察,自衛隊が原告車車線に,違法に(みだりに),規制 標識・警戒標識を設置した。減速マーク(甲第78号証)は法定外表示である が,「徐行」の道路標示は法定標示である。(4)・ 実況見分調書(甲42)の2 2頁「交通事故現場見取図第2図」によれば,湯布院方面から本件事故現場に 至る直前にヘヤピンカーブが連続して存在するが,これらのカーブには「減速 マーク」が設置された形跡はない。本件事故現場のカーブだけ存在しているこ とから意図的に設置されている。(5)・ 原告車線の「徐行」の道路標示及び原 告車線のひし形マーク(減速マーク)は本件事故当時存在していないから,警 察写真⑥⑦⑩等は事故当日撮影されていない。(6)・減速マークは正規の方法で 設置されていないのでタイヤの通過箇所が簡単に摩滅した。故意に消されたと も思われる。(7)・減速マークが経年によってタイヤの通過箇所が摩滅したもの と思われるのであれば,本件事故によってその必要性が確認されたのであるか ら再塗装されるはずであるがその形跡はない。(8)・矢印型の減速マークのタイ 6/9 ヤ通過箇所が摩滅した場合,残されたマークも矢印形(山形・シェブロン型) となるが,本件原告車線に残されたマークはひし形である(甲66②,甲32 ⑩,甲67②)。「原告車線のひし形マーク」を設置し,その後このマークの存 在を隠蔽する必要が生じた場合,消去するより,設置されたひし形マークを利 用して矢印型の減速マークをペイントしてその一部に見せかけたほうが簡単で ある。甲66②でみると,最初設置されたひし形マークがくっきり残っている 一方,後日書き加えた減速マークはほとんど消えている。タイヤが通過したた めでなく,減速マークの材料・工事の違いによる。 第4 KP34.9の警戒標識(アロータイプ・シェブロンマーカーの線形誘導標) 1 被告の主張・原告は,警戒標識(視線誘導標)の存在についても論難する(準 備書面(4)第2の6及び第3の3)ので、念のため述べると,一枚の板ででき ている同標識を正面の位置から撮影した写真(甲第35号証⑤,第66号証の ⑥⑦)と側方の位置から撮影した写真(甲第35考証④,第66号証の①,③) とを見比べれば,同標識が存在していたことは明らかである。 2 原告の主張は,平成17年10月18日付け訴状・第3別件訴訟における, 浅香ら国の指定代理人の違法行為・第4点証拠資料のねつ造・改ざん(KP3 4.9の警戒標識)に記載したとおりである。論旨はこれら連続する3個の警 戒標識は,南行きの車ために設置された線形誘導標であるが,警察写真⑩(甲 35③④,甲66③④)では,KP34.9の警戒標識は南行きの車から視認 できないのはおかしいというのである。自衛隊写真①(甲35⑦),警察写真⑪ (甲33,甲34①・甲35①⑤)及び原告写真66⑥⑦)では,北行きの車 から真正面に見える。北行きの車からは,甲35⑩⑪⑫⑬⑭のように視認され なければおかしい。自衛隊写真②(甲67②)に比べて,平成11年10月2 9日撮影された原告写真66ではこれら線形誘導標の標示板の塗装は真新しい。 KP34.9の警戒標識は本件事故当時擁壁上にあって草木に隠されていたか, 若しくは,標識板を単一の柱に取り付け路端に設置されていたが標識板が脱落 7/9 していたので本件事故後再設置した。この時,表示板の設置角度を誤り南行き の車から見えない角度で設置したのである。自衛隊写真①に線形誘導標の標示 板が写っているが,写真を加工して標示板を挿入した。 第5 浅香らの本件事故の証拠資料のねつ造・改ざんの一例 1 原告は,平成18年3月24日付け準備書面(3)を陳述し,その第2証拠資料 (事故現場写真)のねつ造・改ざん,1ないし7で,別件訴訟で浅香らが乙第 1号証として提出した書証(甲67)の,自衛隊写真甲67①,②,⑤⑥⑫⑬ ⑭,⑦,⑧,③④⑨⑩について検証した。 2 被告は,平成18年3月24日付け準備書面(3)で,「原告が主張する,事故 再現見分時における玖珠警察署の関与及び被告の証拠写真のねつ造・改ざんに ついては,被告準備書面(1)及び(2)により,被告が繰り返し主張しているとお りである。」と陳述した。原告の主張に対し認否,反論,主張は行なっていない。 3 原告は,当書面で,甲67①についての原告の主張を下記に再掲する。 便宜のため,甲67①と甲67①の右上の部分を拡大した写真を甲第79号証 として提出する。 4 事故当時の道路状況(熊本方面から別府方面)自衛隊写真①(甲35⑦,甲6 7①,甲24,甲68)(1) 本件事故直後から,現場で捜査にあたっていた,保 安警務隊及び熊本県警小国署員から,事故当日午前11時50分に現場に到着 した早水巡査長が捜査の引継ぎを受けている場面である。引継ぎ時間を30分 とすると,平成11年10月7日午後0時20分ころの写真である。(2) 画面 左に,白シャツの制服を着た警官(早水巡査長),紺色のシャツに反射ベストを 着用した2人の警官(小国警察署員),右腕に腕章をつけた作業服の自衛官(保 安警務隊幹部)その他数名のヘルメットの自衛官が写っている。この一団の後 方に警戒標識(KP34.9の警戒標識)が写っている。原告の主張①・この 警戒標識は事故当日存在しない。原告の主張②・画面の右側には,適当な草地 があるのに(甲第66号証),交通統制も行なわずに,ヘヤピンカーブの頂点の 8/9 危険な位置に,たむろしているのは危険でもあり不自然である。(3) 画面右に KP34.9の里程標が写っている。原告の主張③・この警戒標識は事故当日 存在しない。(4) 画面右に黄色の荷物を積んだ原告車とその後方に原告の靴が 写っている。原告の主張④・この時点では原告車に荷物は積まれていない。原 告の荷物は,原告の身元確認のためなど内容を確認する必要があり,既に降ろ され,靴と共に原告の搬送先小国公立病院に運ばれるため車に積み込まれてい る。(5) 草地の上に約6名のヘルメット,作業服の自衛官の一団が写っている。 原告の主張⑤・ここにたむろしている理由がない。(6) 画面左上の草木の部分 が真っ黒に写っている。原告の主張⑥・写真の草木の部分が加工・隠蔽されて いる。 5 上記(5) で,草地の上に約6名のヘルメット,作業服の自衛官の一団が写っ ている部分を拡大した写真が甲78の下部に添付されている写真である。原告 の主張① ・左端の自衛官は他の自衛官に比べて,体格・鉄帽の大きさからみて 明らかに小学生程度の大きさしかない。この左端の自衛官の画像は,他の自衛 官が写っている写真とは別の写真から切り取られ貼り付けられている。又,ヘ ヤピンカーブの頂点の車道内に,車道に背を向けて立っているのも危険で不自 然である。この写真のねつ造犯は,貼り付ける位置を誤ったのである。 原告の主張② 擁壁上の2個の警戒標識と甲67の画面左の警官・自衛官の背 後に写っているKP34.9の警戒標識の写り方が異なる。 第6 終わりに 被告は,原告が提出を申立てている文書及び写真を進んで全部提出し,本件 訴訟の充実及び真実の発見に協力してほしい。 その他,被告が否認した事実については,被告の具体的主張・証拠の提出を 待って反論・主張をおこなう。 附属書類 証拠説明書(6)平成18年5月19日(甲第78~79号証) 各1通 9/9