樹木の根が持つ役割は大きく分けて2つあります。
1.樹体を支える
2.水分や養分を吸収する
特に「水分や養分を吸収する」が重要です。
樹木の根が広がっている範囲は、樹冠の範囲とほぼ同じ・・・というのが一般的な考えになっています。
しかし、根の切断や衰弱、岩盤などの障壁といった根の成長・発達に影響を与えない環境で成長した根は、樹冠の範囲を超えて伸びています。
樹木の根は、水を求めて伸ばすので、樹冠の範囲よりも外へ外へと伸びていこうとします。
樹木が根を伸ばすもう1つ理由。
根が水分・窒素・ミネラルを吸収するという機能を持つのは、根の表面がコルク化していない先端部分のみで、その先端部分も組織が古くなるにしたがって表面がコルク化して水分吸収機能を失っていきます。
そのため、水分を吸収するために、絶えず新しい先端部分を伸ばし続けなければいけません。
これが、樹木が根を伸ばすもう1つの理由です。
樹木の根は、その一部で重力屈性を示して地面の下へ根を伸ばす垂下根となり、大部分の根は水分屈性を示して水平方向に延びます。
根が水分を吸収するためにはエネルギーが必要で、そのエネルギーは酸素呼吸によって得ているため、吸収する水分に多くの酸素が溶けている必要があります。
酸素が十分に含まれている水分は、地面の深い層ではなく、浅い層に多いので、根は浅い層を水平に伸びていくというわけです。
水分屈性と言っても、正確には酸素が十分に含まれた水分屈性ということになります。
先ほど、水を求めて根を伸ばすと言いましたが、これも正確には、酸素が十分に含まれた水を求めて根は伸ばすということになります。
根の伸長成長に障害となる要因がない環境であれば、主根は重力屈性で下へ下へと伸びていきます。
しかし、ある程度の深さまで伸びると土壌水分中の酸素がなくなるので、主根の先端部の活性が低下し、側根を形成します。
枝が光のある方向へ伸ばすように、根も良質な土壌条件の方へ伸ばします。
水分や養分が豊富なところに根を伸ばし、土壌中に瓦礫が多い場所は根を避けたり、水が帯水する場所では根が枯死したりします。
根が衰弱すると、同様に枝や葉も衰弱します。
根は土壌の中にあるので、根の健康具合を見ることは出来ないので、1つの目安ですが、枝葉の茂り具合を見て、根の状況を推測することができます。
以下、色々な根の状況。
←土壌が削られ、樹体を支えるために新しい根を下へ伸ばしたアカマツ。
ご神木などにされている巨樹・巨木の周りは、人が立ち入れないように柵を設けられている場合がありますが、根の中で一番大切な部分が先端なので、最低でも巨樹・巨木の樹冠の真下に、入らないようにする・・・というのが理想的ですね。
地面から出ている根を人が踏むと傷ができます。
何度も踏まれると、傷によるダメージが蓄積し、樹皮が剥がれます。
樹皮が剥がれた部分に腐朽菌が入り、根が腐ります。
結果、根が衰弱し、樹勢も衰えます。
さらに、樹体を支える重要な根の部分に腐朽菌が蔓延すると、その重要な根が腐り、根が樹体を支える力を失います。
そして、倒木という問題に繋がります。
町の中や山の中を歩くとき、何気なく、根を踏んでいるんじゃないでしょうか。
ちょっとしたことなんですが、可能な限り、大事な根があるかなと思うような場所を歩かないようにしたり、根を踏まないよう歩くだけで、樹木への影響は変わるんじゃないかな~と思います。
樹木にとって、根はとても大切なんです。
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