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ホームレスの1/4が退役軍人でもやっぱり戦争はやめられない?

2007年11月09日 | 時事
ホームレスの4人に1人が退役軍人、若者も 米調査

「戦争がホームレスを産む」というと,「そりゃ都市が破壊されるんだから当然ぢゃん」と思うかもしれない。でもこれはそうじゃなくて戦争から帰ってきたアメリカ軍人の話だ。サンフランシスコあたりに行くと,道で物乞いをしている人をよく見かける。そう言われてみれば元軍人という人が多い……服装でそれとわかるときもあるが,よく見ると脇に置いてある段ボールとかに「私はイラクで負傷して帰ってきました云々」と書いてあるのだ。

 彼らの多くは見れば分かるような障碍(足がないとか,腕がないとか)を負っているが,そうでない人でもPTSD,いわゆる心的外傷後ストレス障害を病んでおり,まともな社会生活を送るのが難しいらしい。記事に出てくるイラク帰りの23歳の若者は,仕事を探してロスアンジェルスにやってきたが,「これまで兵隊としての訓練しか受けておらず,その経験は市民社会で必要とされていない」という。PTSDの症状が出ていて,支援団体のシェルター住まいだ。

 退役軍人省という役所があって,ホームレス支援プログラムというのを実行しているそうだが,目覚ましい効果はあがっていない。……というか,当たり前だよね。なにしろ国が政策で持って戦争をやり,次から次へと支援が必要な人を産み出しているのだ。「稼ぐに追いつく貧乏なし」の逆転版である。日本では戦後60年を経て未だにちゃんと軍人恩給というのが支給されているが,これが出来てるのはあれから日本が戦争をやっておらず,その支給対象者が増えていないからだ。

 PTSDというのは一般に「災害や戦争,犯罪などによって心に負った傷がいろいろなストレス障害として表面化する」病気ということになっている。日本で最近この言葉を聞いたのは,新潟県中越地震,中越沖地震で被害に遭ったお年寄りなどにこの症状が見られるというニュース。こういう比喩が医学的に正しいかどうか分らないが,人間の心にはそれぞれ本来傷つくべきぢゃない部分があり,そこに傷を受けるといろんなバランスがおかしくなってしまうということのような気がする。

 災害や犯罪被害は防ごうと思って防げるもんぢゃないが(誰がアキレス腱を切って入院したからって「ヤクザと間違えられて殺されるかも」と想像できる?),戦争は違う。戦場で闘い,生き残った軍人にPTSDが現れるということは,戦争という行為自体が現代人の心にとって無理のある行為なんだと言えるんぢゃないのか。……しかし困ったことに,それによってPTSDを患い苦しむのは,戦争をやると決めた偉い人ぢゃなくて,やれと命じられた実行者なんだよね。自分が命じた戦争で生じるPTSDの症状が全部自分に返ってくるのだったら,戦争をやろうなんて為政者はいなくなるはずだと思うんだが。



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1 コメント

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Unknown (草津)
2007-11-28 20:00:37
アメリカで退役軍人がホームレスになりやすい要因はそれ以外にもあります。と言うか、PTSDでもなく大した怪我をしてなくてももともとそうなる要因があると言った方が正確かもしれません。

士官学校(所謂ウェストポイント)を卒業したエリートならともかく、一般の軍人に志願する人は必ずしも好き好んで軍隊に志願したわけではなくそれ以外のオプションがあまりなかった人が多いと言うことです。実際自分が行っていた高校からそのまま軍隊に進んだのはそう言うタイプの学生が大半でした。もちろんさっき言ったように士官学校に進んだエリートもいましたが、そう言う子の親は大抵将官や佐官です(お偉いさんの推薦がないとウェストポイントなどには入れない)。

それでも軍隊内で何かの専門職につけば(通信担当など)まだ民間に戻った時に仕事に就きやすいでしょうが銃を撃つことしか学ばなかった場合、悪名高い「民間警備会社」ぐらいしか就職先がないでしょう。自分の場合完全に他人事とは言い切れませんがまぁ、難儀なものです。