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ネットインフラがパンクする日

2007年11月22日 | 時事
インターネットのキャパシティ、2010年には飽和状態に――米調査

 2010年と言えば木星が第二の太陽と化してエウロパに生命が生まれる年である。……オレがあの映画で一番印象に残ってるのは砂浜でApple IIを使うシーンとヤンキースタジアムのホットドッグにつける芥子の色の話だったりするんだが,現実に起きるのは「Something Wonderful」ではなくてネットインフラのパンクらしい。

 思い起こせば1987年,たった1200bpsしか出ないモデムを買ってオレが最初にCompuServeからダウンロードしたのは PackIt! という圧縮ソフトだった。正確なサイズは忘れたがおそらく数10キロだろ。それで12分ほどかかった覚えがある。89年にようやくMac IIを買い,カラーが見られるというので試しに同じCompuServeからGIF画像を1枚落とした(グラマーなネーチャンがレイガンを構えてるスペースオペラ風の絵だった)。容量は覚えていないが 512 x 384程度の256色の絵でやはり10分以上待ったと思う。

 1991年にQuickTimeが発表され,サブ・システムオペレータをやってたニフティのFMacPro(Macintosh Programming Forum)に,某社社長が「鹿と女房」というムービーのサンプルファイルをアップロードした。その社長の奥さんが奈良公園で鹿にせんべいをやろうとし,鹿が迫ってきて逃げるというだけのたわいもないムービーだったが,これがなぜか大人気。……みんなどんなムービーだと思ったんだか(笑)。

 とにかく,当時のオレの環境(9600bpsのクーリエHSTを使っていた)でこのファイルを落とすのに5分程度はかかった。それが95年にはインターネットにシフトし,96年にはフルカラーのjpeg画像が見る見るうちに画面に現れるようになり(というが,つまり表示される過程が見えたわけだ),あっと言う間にビデオ・ストリーミングが可能になる。

 ひとことで通信インフラというがその拡充は常に二律背反を内包している。たとえば三角形と四角形を考えてもらえばいい。三角形ABCでは通信はA-B,A-C,C-B間でしか行われない。これにDが加わって四角形になると,加わったノードは1個だが通信はA-D,B-D,C-Dと3経路増えるのだ。これをまかなうには各ノードを繋ぐ線を太くするか,やりとりされるデータを圧縮するしかない。

「インターネットは世界を繋いでいる」というが,まだそのノードのない地域は少なくない。ノードに対する需要は増え続けるだろうが,線(帯域)の太さと圧縮技術にはおのずと限界がある。記事によれば2010年までの北米だけで420~550億,これは事業者による投資予想額を60~70%上回っているという。

 せまい日本だけを見ればどうか分からないが,全世界を視野に入れれば「めちゃくちゃ足りない」ことは予想がつく。仮に2010年はなんとかなっても2020年にはパンクするだろう。例えばNTTが武蔵野で研究開発している次世代ネットワークを持ってしても(あれは結構凄いが),根本的な解決策にはなりえない。

 古来,需要と供給は市場原理でバランスするもんである。ネットインフラの不足が目に見えるものになってくれば,その使用料金が上がるわけだ。基本料金でパケット使い放題という時代がいつまで続くかわからない。もちろん倫理的な問題も浮上するだろ。ネット先進国の連中がポルノ・ムービーやネットゲームに興じるために後進国の通信環境を劣悪なままで放置していいのか,とかね。

 それとも何か画期的な技術革新……例えばスタートレックばりの「亜空間通信」なんてがこの問題の福音となるのだろうか。どっちにしろその成り行きが見えてくる日もやっぱりドッグ・イヤー刻みでやってくることだけは間違いない。



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