昨年も紹介したカンヌ国際広告祭 FILM LION(コマーシャルフィルム)部門 今年の受賞作も決まりましたね。
まずは今年のグランプリ作品。
Old Spice "The Man Your Man Could Smell Like"
「君(女性視聴者)の彼氏を俺みたいにカッコよくするには、このフレグランスを使うしかないぜ!」的な内容を延々しゃべり続けるだけというアホアホなCMだけど、その間にも場面が手品のようにどんどん変わっていく。話や画面の一部に気をとられていると何がどうしてこう変化するのかわからず、ついつい何度も見なおしてしまいます。
しかし昨年に比べるとグランプリにしてはインパクトがちょっと…と思ってしまいますが、今年からフィルム部門にFILM CRAFT(映像制作技術?)という賞が開設されたんですね。この部門はさすが映像的にもインパクト大の作品がめじろおし。ちなみにそっちの方のグランプリはこれ。
Philips Cinema "The Gift"
もう完全にショートフィルムの世界。ちょっとビョークの"All is full of love"に似たロボットくんの造型が抜群にチャーミング。後半のバイクチェイスも『ターミネーター』×『ダークナイト』って感じで、ヤラレました!
他にも唸らされた作品はたくさんあるので、いくつかご紹介を。
FILM LION部門、金賞の作品では
WWF "SPACE MONKEY"
かつて宇宙ロケットで地球を離れた猿が65年後、帰還。しかしその時、地球は… という設定で、ちょっと映画『猿の惑星』へのオマージュを感じる作品。老いた宇宙猿の表情が何とも切ない。
Canal+ "The Closet"
破天荒なアクション・ストーリーが語られるが、それが何のためかというと…(オチは見てのお楽しみ)Canal+(フランスのTV局)が雇ってる脚本家はこれほどのストーリーテリングの名手ですよ、うちの番組は面白いですよ!と言いたいわけですね。馬鹿馬鹿しい事にやたら壮大な描写を使うという手法は、毎度おなじみAXE(LYNX)のCMにも近いかも(例えばこんな)。
銀賞で引っかかったのはこれ。
Panda Cheese "Kitchen"
「チーズはいらない」と言ったばっかりに、なぜかそこにいるパンダに暴力をふるわれるという理不尽な設定が素敵。他にもあるのですが、続けて観てるとじわじわこみあげてくるものがあります。
Panda Cheese "Office"
Panda Cheese "hospital"
暴力に走る前のパンダの表情(無表情)と沈黙が、かなり好きです。
FILM CRAFT部門では、このアニメーションが気に入りました。
NZ Book Council "Going West"
書物の中には素晴らしい世界が広がっている…という事を視覚的に表現してみせたこの作品は、ものすごく手間のかかった切り紙細工アニメ。光と影の演出から生まれるなんともノスタルジックでロマンチックな世界は、先日紹介したクワクボリョウタ作品『10番目の感傷』にも通じるものが。
それにしてもカンヌのショートリストは、「ベストCMの"まとめサイト"」的な位置づけというか、見落としていた凄いCMをあらためてチェックするのに実に便利ですな。そしてほとんどの作品は今や動画サイトで鑑賞可能というわけで、いや嬉しい時代になったものです。
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