第七回目の講義「カーテレマティクスの現状と課題」の後半です。
3・グローバルな趨勢は国内カーナビの延長線上にない
・IT産業では出荷のボリュームが重要であり、グローバルな出荷台数では05年まではハイエンドナビ>PND>GPS搭載携帯であったが、06年にPNDがハイエンドナビを超え、10年以内にGPS搭載携帯がPNDを超えると予想される
・PND最大手tomtom社の全世界出荷量は900-1,000万台、2007年は前年度比73%増の4000万ユーロの研究開発投資
・ハードの費用は量産と共に大幅に低下するが、地図のライセンス料は労働集約的であるためにコストが下がらず、地理的な拡大と共にむしろ高くなる
・YahooもMicrosoftもGoogleもNAVTEQを利用→「Web2.0」の7つの法則の一つ「データは次世代のIntel Insideになる」がまさに地図データの世界で進行
・携帯の最大手Nokiaは地図データ最大手のNavteqを、PND最大手のtomtomが地図データ2番手のTeleAtlasを買収
・日本の地図データベースは地形図・都市計画図・道路規制データ・ガイド情報を1つのシステムとしてDB化し、地物に種別を与えて、種別毎にレイヤとして管理。
・今後は基本地図+道路属性情報+ユーザからのプローブ情報で地図データベースを構築
・位置・速度・ABS稼働・ヘッドライト・雨量などをDBとして蓄積することで、よりダイナミックな最速ルートガイダンス・付加価値サービス・S&S等を提供可能に
・緊急車両・公共交通の運行支援、安全運転、歩行者の安全等の公共目的にも利用可能・携帯最大手とPND最大手が2大地図会社を買収したのは、地図が最も大きなコスト要因であり、データベースとして重要であるから
・カーナビ開発と携帯の機能拡張は同じ方向へ向かっており、カーナビにもGoogle Phoneのようなクライアント-サーバアプリケーションの開発環境やAPIの共通化が訪れる事で全てのクルマでの情報共有が可能となる
4・自動車会社はそれにどう対応するのか
・クルマ会社にこの考え方を受け入れることが可能なのか?
・アナログvsデジタル、プロプライエタリvsオープンアーキテクチャ、モジュール化・標準化vsすりあわせ、垂直統合vs水平分業、etc
・デジタル技術での成功要因は、技術を読む目と市場を読む目のバランス・アイディア・スピード・廉価化・アプリケーションや使いやすさによる差別化
・標準プラットフォームとしてのIT-Unitを開発し、市場ニーズの違いをアプリケーションで吸収してゆくのが解決策
・車載のみならず、各種クライアント/サービスと結合させることが可能に
・自動車の制御系とITとの境目にGateway/Firewallを置くことで文化の違いを吸収
以上が講義概要となります。
野辺様は元々IT業界にいらっしゃった方なので(ブロードバンドの黎明期にヒットしたネットゲーム「リネージュ」の立ち上げをなさった事もあるそうです)情報通信分野のトレンドと自動車をどのように融合させるかについての興味深い洞察についてお話しいただくことが出来ました。カーテレマティクスの世界にもWeb2.0のトレンドが押し寄せて来ており、これが自動車事業全体においてどの程度の影響力を持つようになるのでしょうか。現時点ではCARWINGSのようなカーテレマティクスは自動車購入において殆ど考慮されていないとの事ですが、先述の「エコ運転アドバイス」のように自動車の基本スペックに直接影響を与える用途が出てきたことで、今後は自動車にもネットワーク効果が生まれ、さらに規模の経済の影響が大きくなり、世界レベルでの寡占化がいっそう進むことになる可能性もあります。プローブ情報が自動車会社、もしくはPND会社の私的財産のまま共有・解放が行われないのであれば、GoogleのIndexやVideoID、Amazonのデータベースがもたらしたように、自動車も一人勝ちの産業となるでしょう。このとき、日本の市場の特殊性が、日本の自動車産業の競争力を損なわないように舵取りをしてゆく必要があるのでしょう。
他方、自動車事業においてテレマティクスの貢献できる部分は極わずかであり、自動車会社は自動車事業に特化して、テレマティクスはその他の事業者に任せてしまうという考え方でいる可能性もあります。また、万が一影響力が大きくなって来たとしても、テレマティクスにとって自動車はボトルネックとなりますから、MSがNetscapeを排除したように、tomtomのPNDも容易に排除できる可能性もあります。tomtomは先手を打ってプローブ情報のインターフェイスの標準化、プラットフォームのオープン化、公共のための中立性議論などを行っておく必要があるでしょう。また、世界シェアで劣位に立っている自動車会社は既存シェアの影響力を減耗させるプローブ情報のオープン化戦略を採用するかもしれません。米国のGM等はConputation能力の高い人材を確保しやすく、自動車のシェアが減少しつつあり、もともと水平分業への親和性が高いですから、プローブ情報の標準化・オープン化の先陣を切るかもしれませんね。
今回の2.5GHzの周波数割り当てにおいて、どの自動車会社もどの陣営にも参加なかったのは驚きでした。今回の講義で日産は徹底して水平分業・オープンアーキテクチャを指向しているようだと言うことで納得したのですが、KDDIのWiMAX企画会社にトヨタの出資がなかったのはトヨタもオープンアーキテクチャを指向しているのか、それとも自ら参加せずともKDDIを通じた間接的な出資で十分であると判断したのでしょうか。今後もITとクルマの融合には注目していきたいです。
3・グローバルな趨勢は国内カーナビの延長線上にない
・IT産業では出荷のボリュームが重要であり、グローバルな出荷台数では05年まではハイエンドナビ>PND>GPS搭載携帯であったが、06年にPNDがハイエンドナビを超え、10年以内にGPS搭載携帯がPNDを超えると予想される
・PND最大手tomtom社の全世界出荷量は900-1,000万台、2007年は前年度比73%増の4000万ユーロの研究開発投資
・ハードの費用は量産と共に大幅に低下するが、地図のライセンス料は労働集約的であるためにコストが下がらず、地理的な拡大と共にむしろ高くなる
・YahooもMicrosoftもGoogleもNAVTEQを利用→「Web2.0」の7つの法則の一つ「データは次世代のIntel Insideになる」がまさに地図データの世界で進行
・携帯の最大手Nokiaは地図データ最大手のNavteqを、PND最大手のtomtomが地図データ2番手のTeleAtlasを買収
・日本の地図データベースは地形図・都市計画図・道路規制データ・ガイド情報を1つのシステムとしてDB化し、地物に種別を与えて、種別毎にレイヤとして管理。
・今後は基本地図+道路属性情報+ユーザからのプローブ情報で地図データベースを構築
・位置・速度・ABS稼働・ヘッドライト・雨量などをDBとして蓄積することで、よりダイナミックな最速ルートガイダンス・付加価値サービス・S&S等を提供可能に
・緊急車両・公共交通の運行支援、安全運転、歩行者の安全等の公共目的にも利用可能・携帯最大手とPND最大手が2大地図会社を買収したのは、地図が最も大きなコスト要因であり、データベースとして重要であるから
・カーナビ開発と携帯の機能拡張は同じ方向へ向かっており、カーナビにもGoogle Phoneのようなクライアント-サーバアプリケーションの開発環境やAPIの共通化が訪れる事で全てのクルマでの情報共有が可能となる
4・自動車会社はそれにどう対応するのか
・クルマ会社にこの考え方を受け入れることが可能なのか?
・アナログvsデジタル、プロプライエタリvsオープンアーキテクチャ、モジュール化・標準化vsすりあわせ、垂直統合vs水平分業、etc
・デジタル技術での成功要因は、技術を読む目と市場を読む目のバランス・アイディア・スピード・廉価化・アプリケーションや使いやすさによる差別化
・標準プラットフォームとしてのIT-Unitを開発し、市場ニーズの違いをアプリケーションで吸収してゆくのが解決策
・車載のみならず、各種クライアント/サービスと結合させることが可能に
・自動車の制御系とITとの境目にGateway/Firewallを置くことで文化の違いを吸収
以上が講義概要となります。
野辺様は元々IT業界にいらっしゃった方なので(ブロードバンドの黎明期にヒットしたネットゲーム「リネージュ」の立ち上げをなさった事もあるそうです)情報通信分野のトレンドと自動車をどのように融合させるかについての興味深い洞察についてお話しいただくことが出来ました。カーテレマティクスの世界にもWeb2.0のトレンドが押し寄せて来ており、これが自動車事業全体においてどの程度の影響力を持つようになるのでしょうか。現時点ではCARWINGSのようなカーテレマティクスは自動車購入において殆ど考慮されていないとの事ですが、先述の「エコ運転アドバイス」のように自動車の基本スペックに直接影響を与える用途が出てきたことで、今後は自動車にもネットワーク効果が生まれ、さらに規模の経済の影響が大きくなり、世界レベルでの寡占化がいっそう進むことになる可能性もあります。プローブ情報が自動車会社、もしくはPND会社の私的財産のまま共有・解放が行われないのであれば、GoogleのIndexやVideoID、Amazonのデータベースがもたらしたように、自動車も一人勝ちの産業となるでしょう。このとき、日本の市場の特殊性が、日本の自動車産業の競争力を損なわないように舵取りをしてゆく必要があるのでしょう。
他方、自動車事業においてテレマティクスの貢献できる部分は極わずかであり、自動車会社は自動車事業に特化して、テレマティクスはその他の事業者に任せてしまうという考え方でいる可能性もあります。また、万が一影響力が大きくなって来たとしても、テレマティクスにとって自動車はボトルネックとなりますから、MSがNetscapeを排除したように、tomtomのPNDも容易に排除できる可能性もあります。tomtomは先手を打ってプローブ情報のインターフェイスの標準化、プラットフォームのオープン化、公共のための中立性議論などを行っておく必要があるでしょう。また、世界シェアで劣位に立っている自動車会社は既存シェアの影響力を減耗させるプローブ情報のオープン化戦略を採用するかもしれません。米国のGM等はConputation能力の高い人材を確保しやすく、自動車のシェアが減少しつつあり、もともと水平分業への親和性が高いですから、プローブ情報の標準化・オープン化の先陣を切るかもしれませんね。
今回の2.5GHzの周波数割り当てにおいて、どの自動車会社もどの陣営にも参加なかったのは驚きでした。今回の講義で日産は徹底して水平分業・オープンアーキテクチャを指向しているようだと言うことで納得したのですが、KDDIのWiMAX企画会社にトヨタの出資がなかったのはトヨタもオープンアーキテクチャを指向しているのか、それとも自ら参加せずともKDDIを通じた間接的な出資で十分であると判断したのでしょうか。今後もITとクルマの融合には注目していきたいです。