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2.5GHz比較審査評4:総評

2007年12月27日 | 情報通信政策関連
2.5GHzの周波数割り当ての審査結果に関しての総評を述べたい。

今回の比較審査は移動体通信の周波数割り当てについて割当数を申請事業者数が超えるという初めての自体であり、総務省の比較審査能力と、比較審査方式の妥当性が試される結果となった。私は政府の審査によって資源配分が行われるシステムが資源配分の効率性を達成するためには非常に難しい制度設計が必要であり、適切なメカニズムの模索を継続し続けるべきであると考えている。代替案は必ずしもオークション方式だけではなく、比較審査の中に市場メカニズムによる配分の効率性を組み込むのも一つの手であろう。今回の審査にあたって経済原理の活用は特に明示されていなかったが、以前の「電波有効利用政策研究会」の議論からみて、人口カバー率、エリア展開が経済原理として用いられている項目のようである。その肝心の人口カバー率が誤った基準によって評価されており、また技術方式間の違いを正しく評価していないように思われるのは残念である。

市場原理の異なる利用方法として、例えば投資資金は全て金融市場からの調達で行うことを義務づければ、効率的な事業者に資金が集まり、オークションと同様の効率性を発揮することができるのではないだろうか。オークション理論や制度設計についてはいまだ不勉強であるが、今後の研究課題の一つとして含めておこうと考えている。

また、今回の比較審査では免許を割り当てられた際の事業者行動は他の事業者の行動に依存しないだろうという仮定の下に事業計画の評価が行われていたが、移動体通信のように少数者による寡占市場では周波数を割り当てられた事業者の最適戦略はもう一方の事業者が何処であるかに依存するはずである。事業者の事業計画、保有資源等から4つの事業者から2つの事業者を選ぶ8通りの組み合わせそれぞれの経済状態の評価を実施し、その結果の是非から割り当て事業者を選定する方法も比較審査のありかたとして考慮すべきではないか。評価すべき状態が8通りであればそのような比較審査のありかたも可能であっただろう。8通りを評価せずとも、WiMAX2社と次世代PHSとWiMAXの2方式の場合の最適戦略はかなり違ってくるのではないだろうか。

今回の割り当ては結果としてKDDI、ウィルコムと既存のモバイルサービスの基盤を持ち、そこそこMVNOもやるがどちらかと言えば垂直統合を嗜好する事業者への割り当てとなった。次世代PHSとWiMAXには端末の互換性がないために、2社WiMAXの場合に比べて垂直統合型事業のメリットが大きくなるはずである。おそらく2.5GHzBWAが新たなMVNOの参入を呼ぶ事にはならないだろう。

ともあれ、審査は終わったので、あとは事業者が無事に資金を調達して良いサービスを提供し、高速無線通信技術の普及に成功してくれる事を期待したい。特に次世代PHSという技術を立ち上げればならないウィルコムの挑戦は非常に困難なものになるだろうが、無事にサービスを提供して、周波数の再割り当てなど起こらないよう、圧倒的高評価を与えた総務官僚のメンツをつぶさないよう、比較審査方式の妥当性が疑われないよう頑張って貰いたい。

来年行われるであろう固定系地域バンドの周波数割り当てでは約1,700の市区町村毎の周波数割り当てとなる。地域バンドの用途は地域ごとの個別事情を踏まえて評価をするとされており、地域の地方公共団体の意見を参考に本庁のスタッフが審査することになると思われるが、多大なる人的リソースを要することになるだろう。今回の周波数割り当てでは2免許への4事業者の申請を評価するのに4月かけているが、同等の時間をかけて審査するためには免許数の比率でおよそ3,400ヶ月、約300年もの年月を要する。賢明なる審査能力を持ったスタッフを100倍に増員したとしても3ヶ月かかる事になるが、はたしてどのようにして審査を行うのだろうか。実際には殆どの地域で免許申請が行われないのではないかとの見込んでいるようだが、そのような結果になった場合、一部地域の一部事業者、利用者のために多くの地域で周波数を死蔵させる政策が果たして肯定されるのだろうか。地域バンドの動向についても注視してゆく必要があるだろう。
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