Natural Mystic ~ナチュラルミスティック~

There's a natural mystic blowing through the air

霧積温泉

2005-09-28 19:07:59 | 
「目的地に到着しました。案内を終了致します。運転お疲れ様でした。」
カーナビは電子音と共にそう言い残し、ナビをやめた。
碓氷峠手前、JR信越本線終点横川の駅から北へ12km。人里離れた霧積ダムを越えた細い林道。周りには掘っ立て小屋すらない。左側の土手ではサルの群れがこちらを「ギィー!ギィー!」と威嚇している。

【威嚇するサル】

夕暮れ間近のこの時間、台風17号の影響で雨と風が強い。目的地の霧積温泉までは一本道であるためそのまま進む。薄暗い林道はところどころ狭くなり、対向車が来たらすれ違うのがやっとである。

突然、頭上遙か高みに場違いな架橋がそびえる。長野新幹線の一ノ瀬トンネルと碓氷峠トンネルの間にかかる300m程の橋であり何とも不気味であった。

霧が濃くなるばかりの曲がりくねった山道を恐る恐る進むこと5km、ようやく建物が見えた。しかしこれは『きりづみ館』という宿で目的の温泉とは違う。手前にゲートが開いた道があり、更に右の山側へ続いているが、通行禁止の表示が出ている。よく見るとそちら側に『金湯館』の案内が出ていた。不審に思いながら更に通行禁止のはずの狭い林道を進む。霧は濃さを増し更に両側にある側溝は深く、道を切り開いた山側の斜面にはところどころに落石の跡がある。

子供はさすがに心細いのか泣きわめき、嫁はあやすのに必死だった。5分ほど進むが途中、案内は一つも出ていない。ナビはすっかり林道が消えて何もない大平原の中にウェイポイントを残すのみとなっている。更に5分ほど進み、Uターンしようかと考えていると旅館の案内板が立っていた。安心して進むとまもなく、車が4台ほど林道脇に止まっていた。その左側の谷に建物があった。『金湯館』到着である。

雨の中、子供を抱きかかえ、歩道を5分ほど歩いて下りると、川の向こうに明治時代に建てられたという鄙びた建物があり、水車が回っていた。

【金湯館入口】【この2階の窓の部屋に宿泊しました】

受付を済ませ、案内された部屋は湯治用の2回の座敷でエアコンはなく、既に温風ヒーターと電気炬燵が用意してあった。荷物を運び込み落ち着いたので風呂に浸かる。アトピー・皮膚病に効くという硫酸カルシウム塩泉は39度とぬるく、ゆっくり浸かるにはもってこい。運良く子供と貸し切りになり広い浴場に大はしゃぎだった。

部屋に戻り夕食。決して豪華とは言えないが川魚と山菜をメインにして名物の鯉コクが自慢の料理だった。

国道18号から40分程度であるが、林道が開通したのが昭和56年それに伴い、電気・電話が通ったとのこと。

歴史的には明治憲法の草案が作成され、近代日本が輩出した各界の著名人が訪れたというこの霧積温泉・金湯館。秘湯の宿としてかなり趣のあるところだった。

余談だが、温泉はぬるいため30分以上の入湯が勧められている。ゆっくり入ったつもりではあったが私はその後、風邪をひいてしまった。

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