マネキン７ MannequinⅦ

幼い頃、田舎の街頭に不思議なポスターが掲げられていた。『犬神家の一族』と題されたその映画のポスターは何故か、湖畔にV字に脚が突き出た物で、見る人を小馬鹿にしているような画像であった。この作品、原作は横溝正史の同名の小説で、1976年の角川映画の第1回映像作品であったらしい。そんなこととは露知らず、ガキンチョの私は小学校のプールで仲間達と逆立ちをしては「犬神家の一族！」と叫んでいたものである。



この映画、連続猟奇殺人を扱った内容ではあったが、このV字開脚や菊人形の首が殺害された生首とすげ替えられており突然転げ落ちたりと、物心付いてこの作品を見た私は思わず笑わずにはいられなかった。巨匠、市川崑の代表作というから驚きである。

グランドオープンしたショッピングモールの三越をぶらついていて、２階のエレベータを下りたときのことである。ドアが開き一歩踏みだし度肝を抜かれた。何と『犬神家の一族』を思い起こさせるオブジェがあった。



あまりにも斬新なので思わず見入ってしまった。なるほど一流デパートのブランド展示はアーティスティックな見せ方となるらしい。それにしても犬神家を思わせるマネキンがエレベータの真ん前に２体並んでいるという状況は一体誰が想像できようか．．．。

その横の売り場へ行って更に驚いた。何ともゴージャスなセットの上に豪華な衣装をまとったマネキンが数体飾られていた。なぜか全て外人っぽい作りである。



おそらくこのブログで今まで紹介してきたマネキンシリーズの中で最も高い衣装を身にまとった物であろう。

その後も店内をまわると、エレガンスを漂わせるマネキンが数多く展示されていた。まさに一流デパートの名声を得ているだけのことはある。眺めているだけで楽しかった。



思うにこれらのマネキン、おそらく搬入から撤去・解体までのルートがきっちり確保されているのであろう。撤去後も見に来てヨンのように日夜風雨に堪え忍ぶような廃れ方はしないのではないであろうか。