続・軍務尚書の戯言

国際情勢や医学ニュースに関して日々感じたことを残すブログです。

靖国神社問題~外交カードとしての重要性~

2005-05-24 07:38:18 | 国際情勢
またまた中国の胡主席が小泉首相の靖国神社公式参拝について抗議したとのこと。

靖国神社に関しては日本国内にも様々な意見がある。
いわゆる左翼の人々は中国の丁稚よろしく,靖国神社を戦前の日本帝国主義の象徴とみなし、政治家の公式参拝は憲法の定める政教分離に反するとして訴訟を起こしている。
一方,右翼の人たちは靖国神社は日本を守るために戦い死んで行った人々の眠る聖地であり,彼等の尊い死を忘れないためにも参拝を続けるべきだと言う。

小生の立ち位置は限りなく右にいる中道もしくは真ん中よりの右派なのだが、正直に言うと首相の靖国神社公式参拝自体には肯定的・否定的いずれの意見も持ち合わせていない。
先の大戦における日本人の死者は600万人,その中には神風特攻隊でなくなった若い兵士もいれば、広島で原子爆弾により一瞬にして灰になった少女もいる。
亡くなった全ての人が「御国のため,大東亜共栄圏のため」自分の死を受け入れられたとはとうてい思えないし,それが人間と言うものだろう。
そうした人々を「祀る」場所に参拝することに意味があるとすれば,その後アメリカの属国として繁栄を享受している日本が、先の大戦の記憶を呼び覚ますことだけであり,つまりは現在の日本人がどのように先の大戦をとらえるかと言うことにつきると思う。

それでは経団連奥田会長宗教団体謹製の公明党幹事長らが言うように「両国関係の重要性を考慮して」首相は公式参拝を中止すべきなのだろうか。

絶対にそうではない。

靖国神社に死者を祀る行為は日本の文化に根ざしたものである。
日本人は「死者に寛容」だと言われ、これは死者を「仏」と呼ぶ習慣からも分かる通り,仏教を通じて形成されたものだ。
よほどのことがない限り死ねば生時の悪行は清算され良き仏として成仏するのであって、逆に成仏してもらわないと「悪霊」となり生きているものが困るのだ。
だから一兵卒には捕虜となることを禁止し自決を命じたにもかかわらず自分は東京裁判の後処刑されたA級戦犯も,アメリカ軍の無差別爆撃により犠牲となった市井の少女もみんな一緒に「仏」になっていただかなくてはならない。
そのための施設が靖国神社であり,祀る行為にA級戦犯も市民も区別はないのである。
「死者にむち打つ」故事のある中国人には決して理解できないだろうが、理解できないからといって批判される筋合いはない。

首相が靖国神社を公式参拝することの違憲性や是非は純然たる日本の国内問題であり,いくら過去に日本が中国を侵略したからといって中国が日本に内政干渉をする権利はどこを探しても存在しない。
武部幹事長が同じことをいったら中国側が激怒したらしいが、お門違いも甚だしい。
中国共産党の丁稚と化した日本の左翼政党や左翼系マスコミは「日中関係をこれ以上冷却させてはならない」といったたわごとをくりかえしてプロパガンダに熱心だが,主権国家と主権国家の外交上最も守るべきルールを逸脱しているのは中国であり,これを指摘せずして何をか言わんやである。

ただし,この靖国問題を日本の外交戦略における非常に狡猾なカードだと見る分析もある。
すなわち、靖国神社を参拝すること自体には本来なんら外交的価値はない。
日本人にとっては一部の共産主義者をのぞいて「ああそうか」程度のことであり,中国にとっても参拝を中止させたからといってODAが増額されるわけでもない。
小泉首相の公式参拝に中国が抗議をし,これに日本国民が反発する。中国は愛国反日教育を行って来た手前抗議を引っ込められないが、小泉首相も頑固に参拝を続けるため外交問題化せざるを得なくなるわけである。
中国の視点からみれば、小泉首相になってからの日本の防衛政策の変化は本来外交問題化するに十二分なはずであった。
戦後初の自衛隊の戦地派兵,アメリカとの軍事同盟強化,台湾-日本を結ぶ対中防衛ラインの構築と,中国にとっては重要な案件が目白押しだったのである。
ところが小泉首相の頑固さのために、本来「中国国民のプライドを満たす」ぐらいしか意味のない靖国神社問題に気を取られてしまい,これら重要案件はさしたる外交問題になることなくスルーされてしまったのである。

こうした「靖国問題の外交カード化」は最初から小泉首相や外務省の意図したところではないだろう。
おそらく途中から靖国カードの有効性,特に対中政策の変更と自民党内の親中派追放に有効であることが分かり、最近は意識して使用しているようにも見える。

いずれにせよ中国が気を取られているうちに,今後の日本と極東アジアの運命を左右する問題である憲法改正と自衛隊の合法化並びに国防軍昇格を急いでやらなくてはならない。
それが首相との会談をドタキャンする国、中国の脅威に対抗する唯一の手段である。

今日の箴言
「ゴミを高く売るのがリサイクルショップの極意」

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