邦題: 星の旅人たち 2010年
原題 : The Way (道、聖地への巡礼道、生き方、想いの行方)
◆ひとり息子の死◆
カリフォーニア州ロスアンジェルスで眼科医を営むトーマス・エイヴリー。年齢は70歳ほどでしょうか。
医者仲間とゴルフに興じている最中に、携帯電話で、息子の事故死の連絡を受けました。
息子ダニエルが、サンティアーゴ・デ・コンポステーラへの巡礼を開始した初日に、フランス・エスパーニャ国境(ピレネー山脈)の山中で事故死したのです。
連絡をくれたのは、フランスの最西端の町、サンジャン・ピエ・ドゥ・ポール(聖ヨハネスにちなむ町名)の警察官、セヴァスティアン警部でした。
トーマスは、ただちにその町に向かいました。まずパリまで航空便で行き、そこから夜行列車でサンジャンをめざしました。
列車中の眠れない長い夜を、トーマスはダニエルのことを回想して過ごしました。
トーマスは、そこそこそこそこ成功した富裕な医者としての人生を選び取ったこれまでの生き方に自負を抱いていました。ところが、知識人のダニエルは「人は自ら能動的に人生=生きざまを選ぶことはできない。生かされているにすぎない」と反論しました。
さて、翌日の朝、そのセヴァスティアン警部から、ダニエルが背負っていた大きな青いバックパックと杖を受け取り、そして息子の事故の様子を聞きました。
周りが止めるのも聴かずに、ひどい嵐をついて峠越えに挑み、事故に遭ったのです。
今年40歳になる息子ダニエルは、この数年間ずっと世界を放浪する生活を続けていました。それまでは、一流の大学の博士課程で研究をしていたのですが、突然、退学して世界を放浪する生活を始めたのです。
トーマスはそんなダニエルの想いが理解できません。突然エリートコースを投げ出して、トーマスには理解できない生き方を選択したのです。
トーマスの妻、ダニエルの母は、ずっと以前になくなっています。家族は2人だけなのに、トーマスは息子とすっかり疎遠になっていました。
サンジャンに向かった理由は、半ばダニエルの一見無軌道な生き方に腹を立てながら、なぜダニエルが道のり900キロメートル近くにおよぶ遍路道をひとりで歩こうとしたのか、その気持ち・理由を探ろうとしたようです。