Don't Let Me Down

日々の雑感、引用。
言葉とイメージと音から喚起されるもの。

手品師をボーっと見つめる観客たち

2013-10-04 11:35:11 | 日記

ぼくが思うに、“現在ニッポンのひとびと”というのは、一部の例外(たぶん数パーセントだ)を除き、テレビを見ているうちに、“手品”にやすやすと洗脳される習性が身についた人々なのだ。

いま藤原新也ブログ(Talk & Diary)の最新記事に<手品師>のことが書いてあるので引用する(全文);

<手品師が一番いやがるお客さんでいること。> 2013/10/02(Wed)

昔トルコのイスタンブールでヤクザの見張る買春宿の居並ぶ一角(ゲネレブ)があった。
一角には頑丈な門扉がありそこにはヤクザの見張りがおり、門から入った各家にもヤクザが見張っていた。
その現場を撮影しょうとしてイタリアのカメラマンが袋叩きに遭って血だらけで門の外に放り出されたという曰く付きのところだが、そこを撮影するために一計を案じた。
観光客を装い、腕組みにし、体を横向きにして肩からぶら下がるカメラのシャッターを押すということをやったわけだ。
その際、シャッター音をかき消すために大きな咳払いをするという手の込んだことをやった。
ただし現場が薄暗く、咳払いによってカメラブレが起こるため、ホテルで予行演習を何度もしたものだ。
                            ◉

昨日の安倍首相の消費税増税会見を見ながら、なぜかふと私はあの時の自分の曲芸を思い出した。

「復興特別法人税の前倒し廃止」という不埒な政策をかき消すための「消費税増税」という咳払いをするという曲芸だ。

「消費税増税」と「復興特別法人税の前倒し廃止」とは何の関係もない別々の事案であり、本来別々に発表されるべき筋合いのものである。

すでに前々から決まっていた「消費税増税」よりとつぜん持ち出された「復興特別法人税の前倒し廃止」の方が寝耳に水で、報道と論議に値する案件であることは一目瞭然なのだが「消費税増税」の”ことの大きさ”に報道も世間の論調も引きずられ、安倍の手法は半ば功を奏したと見る。

私たちの所得税は25年間、税額に2.1%を上乗せするという形で徴収され、住民税は10年間、年1000円引き上げるにも関わらず「復興特別法人税」というものがわずか3年間というこの優遇処置と不公平をうかつなことに私は知らなかったが、さらにそれを1年前倒しで廃止するというのである。

この理不尽をうすらぼんやりと見送っているマスコミも完全に”安倍マジック”に洗脳されていると言わざるをえない。

思うにこの「復興特別法人税の前倒し廃止」というのは、かねてより財界からの要望が強い法人実効税率引き下げを留保する”見返り”案として安倍と経団連の間で密談されたとも勘ぐることもできるだろう。

昨今財界べったりの安倍は国民の見えぬところで経団連の老醜と何を話し合っているかわかったものではない。

だいたい「復興特別法人税の前倒し廃止」による企業の内部留保増大分を労働者に還元配分し、それによって消費を拡大、それがまた企業を活性化するし、それが成長戦略に繋がるというほど復興特別法人税が巨万の額を占めているわけでもない。

内部留保を社会や労働者に還元するというなら、なにも「復興特別法人税の前倒し廃止」を待つまでもなく、今現在においても企業の内部留保は腐臭が立ちのぼるほど”腐るくらいにある”のだから、どこかの予備校教師の言葉ではないが”やるなら今でしょ!!”の世界なのである。

つまり還元する意欲と誠意があるなら「復興特別法人税の前倒し廃止」を待つまでもなくすでにやっているということだ。

ということは「復興特別法人税の前倒し廃止」が履行されたとしてもそれは十分に”還元”されることなく、新たな内部留保の財源になる可能性が大。

企業の内部留保は現金貯蓄のみではなく当然土地や建物にも投資されているわけだが、このニッポンの企業の溜め込み癖こそが国(社)栄えて民滅びる、日本固有のいびつな経済風土を生んでいるひとつの要因であることは疑いようのない事実である。

大企業の内部留保だけでも461兆円というあのベルルスコーニもあっと驚く天文学的数字。

さらに10年間ごと100兆円が増加するこの恐るべきだぶついた贅肉の肥大。

ちなみに2011年3月期の内部留保ランキングは、

1/トヨタ自動車/13兆8630億円
2/本田技研工業/7兆7826億円
3/NTTドコモ/4兆7250億円
4/キヤノン/4兆3141億円
5/パナソニック/4兆1662億円
6/日産自動車/4兆24億円
7/三菱商事/3兆4946億円
8/東京電力/3兆2652億円
9/ソニー/3兆876億円
10/関西電力/2兆4595億円

それぞれが国家か?と錯覚するくらい巨大である。

絶対損をしない『総括原価方式』に庇護されている東電(8位)、関電(10位)、中電(20位)がランクインしているのもふざけきっているわけだが、国から3兆円の支援を受けた東電の内部留保がまだ3兆円以上もあるというのはブラックユーモアである。

あきらかにこの国は狂っている。

ちなみに調べてみるとたとえばトヨタ自動車の内部留保13兆8630億円はあのアジアの大国インドネシアの国家予算13兆6510億円に相当するわけだから、つまりトヨタ自動車というのは”国家”なのである。
                          ◉

というわけで、今後安倍が大きな咳払いするときには、その裏に何か隠したい案件が潜んでいるのではないかと冷静に事態をみつめる必要ある。

昨日の会見でもそうだが”人相鑑定家”の私が観るところ、最近安倍は言葉巧みな手品師の立ち居振る舞い、面構え、に似てきている。

手品師が一番いやがるのは衆目を注意を逸らすべくブラフをかける手以外のところを見つめている醒めた客だが、逆を言えばそういう風に安倍と現政権の行状を見つめる楽しみもあるということだ。

(以上引用)






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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
書き手としての「藤原新也」 (不破利晴)
2013-10-05 08:14:01
おはようございます、不破利晴です。

藤原新也氏は、書き手としてもレベルが高いですね。
引用を読ませていただき、「ドーン!」と旨にぶつかる
何かを感じました。
この「Shinya talk」は僕もブログかメルマガで紹介
したいと思います。
Unknown (warmgun)
2013-10-05 09:09:00
不破利晴 様

ぼくにとっては、ぼくよりちょっと年上のふたり=辺見庸と藤原新也というのは、独特の存在でさ。

最初に藤原を知ったのはフォーカスの『東京漂流』で、写真も文章も新鮮だった。
辺見庸はだいぶ後で読んだ。

もともと、とくに最近は、辺見が病気後の“身体障害”もあって、そうとうデスペレートなのに対し(故郷は震災で壊滅だし)、藤原はNHKでドラマ化される小説まで書き、釣りをしたりして悠々自適に見えるけどね(笑)

ただこの二人は、そうとう違う資質であるにもかかわらず、現在日本では貴重な“反骨”ではあると思う。
またぼくにとっては、かなり共感するが、厳密に言えば、若干の“違和感”がないわけじゃない。

わずか数年の違いなんだがこの“世代”は、ぼくら“全共闘世代”!とは、違うんだな(もちろん“全共闘世代”だって全然共感なんかないともいえるし、ちょっと年下の春樹さんへの違和感は先日ちょっと書いた)

まあ、“世代”じゃないんだが、微妙な差というのも面白い。

藤原新也が芸大中退して“旅に出た”こととと、辺見庸が共同通信社員としてある程度の地位を得て(その間小説家として芥川賞を取り)、自分の仕事(ジャーナリスト!)に嫌気さして辞めたという“キャリア”も重要だと思う。

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