もちろん家計は火の車

読書と映画、クルマにゲーム……いろんなものを愛しつつ、怠惰な日常を送るオッサンのつぶやき。

「勝間和代vs.香山リカ」の図式を、どう見るか? ……(後)

2010年01月07日 | 日常

なんだかんだと、長いこと引っ張っちゃってる
「『勝間和代vs.香山リカ』論争をどう見るか?」ですが、さらに続きます。

前回のエントリでは、数々の自己啓発本をバイブルとする
“勝間教”に染まった挙句、努力のし過ぎで疲れ果て、
気づいたときには、かえって不幸になっていた……
そんな人々の悲劇を、童話にたとえて説明しました。
(香山リカの言葉を借りれば
「“勝間式”で、不幸女がいっぱい」ってことですね。
しかし、この表現は秀逸だよなぁ……いいセンスしてるわ香山リカw)

本質的な問題は「どうしてこうなってしまうのか?」にあります。
そもそも「幸せをゲットするための方法」を伝授しているはずの
“勝間式”で、どうして「不幸女が量産されてしまう」のか?
ここで忘れてはならないのは、
“向上心”とか“努力”という言葉が、ごくフツーに考えて
“素晴らしいもの”“賞賛されるべきもの”とされている点です。

そういった観点からすると、勝間和代の主張は
けっして間違っているわけではありません。
実際、“勝間式”に刺激を受けて努力を重ねたことにより、
社会的な成功(高年収その他)を手にした人もゼロではないはず。
ただ、そういった「ごく一部の、優秀な人々」以上に
「成功という果実を得られない人々」が多かった……
要するに、そういうことなんでしょう。
そして、おそらくそのような事態は、
(少なくとも初期段階の)勝間和代自身にとって
予想外のことだったのではないでしょうか?

つまるところ、勝間和代は「優秀すぎた」のです。
なものだから、彼女は「やればできる!」という、
なかば“信仰”にも近い信念をもつに至ったわけです。
そして、おそらくは彼女の周囲にいる人々も、
一般的な尺度において「優秀な人たち」であったハズで、
そういった環境がまた、勝間和代の中の
「やればできる!」という信念を、どんどん補強していったものと思われます。

勝間和代の書く自己啓発本、いわゆる“勝間本”は
言ってみれば、そうした信念の結晶のようなものです。
ところが、その“勝間本”を
何の疑いもなく盲信するタイプの人々(要するにカツマー)は、
誤解を恐れずに言うなら、
勝間和代(&彼女の周囲にいる人々)とは、
ちょっとばかり毛色の違う人たちだった、と……。
要するに、そういうことだったのではないでしょうか。
ここで念のため書いておくと、
私は「カツマー=愚かな人々」と主張しているわけではありません。
それどころか、カツマーとは、
“努力”だとか“向上心”といった言葉を額面どおりに賞賛し、
一生懸命頑張ってしまう、真面目で愛すべき人々だと考えています。

だからこそ、そういった人々の多くが
不幸になっている現実は、まさに悲劇としか言いようがないのです。

で。ここからが問題です。
さきほど私は、「このような事態は、
(少なくとも初期段階の)勝間和代自身にとっても
予想外だったのでは?」と書きました。そう、“初期段階の”です。
おそらく……ある段階から、勝間和代自身
「努力する」ことで、どういうわけか
「かえって不幸になってしまう」人々が存在することに
気づいたのではないかと、そのような気がしています。
というか、実際に優秀な勝間和代であるからこそ、気づかないはずがないのです。
「努力する」ことによって「かえって不幸になる」人々……
これは多分、それまでの勝間和代の周囲には
見られなかったタイプで、彼女自身にとっても
まさに“予想外”の事態だったのではないでしょうか?

ところが……。
みずから書いた“処方箋”が、すべての患者にとって
「有効なわけではない」という現実を突きつけられ、
勝間和代がどのように対処したかと言うと……
ここが問題なんですが、実は、何も手を打っていないのです。
要するに、完全な「ノー・リアクション」。
この“無作為”(あるいは“怠惰”)という一点において、
勝間和代の責任は、やはり「大きい」と言わざるを得ない。

ただ、「努力すればできるタイプ」の勝間和代としては、
「努力したにもかかわらず成功できないタイプ」に、
いったいどうアドバイスしたらいいのか、わからなかった……
という事情は、なんとなく理解できる気もします。
「朝4時起きの勉強」にしても「断る力」にしても、
つまるところ、もともと「努力すればできるタイプ」を
“より最短距離で”成功へと導く方法なのであって、
「努力したのに成功できないタイプ」を
成功に導くノウハウとは、根本的に異なるものなのだ、という点は
はっきりと認識しておく必要があります。

先日の番組『~ガチバトル』で、勝間和代はこのように述べています。
「努力そのものを、楽しんでほしいんです。
努力そのものが楽しければ「結果をともなわなくてもいい」と、
そのような考え方をできないものかな、と……」。
おそらく、この発言はかなりの部分、
勝間和代の“本音”を表していると思います。
要するに、「努力したのに成功できないタイプ」の人々に対し、
「たとえ成功を収めることができなくてもいいんだ」と、
ある意味「納得する」ように求めているわけですから……。

でも、これってけっこう、ヒドイ話だと思いませんか?
自己啓発を説くハウツー本としての“勝間本”に手を出す人って、
基本的には「昇進したい」「年収をUPさせたい」などなど、
極めて“実利的”なメリットを求めている人たちなわけで。
そういう人々に対し
「『結果をともなわなくてもいい』と、そのように考えるよう」求めるのって、
何かが根本的に間違っているのでは……? という気がします。

勝間和代に対する香山リカの批判は、
このような図式そのものを視野に入れた上でのものかどうか、
正直、それはわかりません。
ただ、上記のような理由から、個人的には
勝間和代の側に、やはり攻められてしかるべき理由はあるのではないか……
というのが、「勝間和代vs.香山リカ」論争に対する、私の個人的な見解です。

それでは、いったいどうしたらよいのか……?
答えは、意外と簡単なんじゃないかって気がします。
要するに、みんなそれぞれ「自分で“いい”と思うようにやる」、と(笑)。
「努力する・しない」も含め、それぞれで判断するしかない。
たとえ、みずからの判断に基づいた行動の結果
人生で「成功を収められなかった」としても(←なんか、イヤな言い方ですけどw)、
少なくとも「勝間式でやったのにィ!」とか、そういう
(ワケのわからない)悔いが残らない分、
どこかスッキリ、さっぱり……しませんか?
それからそれから。
もっと言ってしまえば、すべてを「自分で考える」ってことは、
要するに、「どういう状態になったら“人生の成功”なのか?」という
ジャッジすらも“自分で下す”ってことなのです。
これって、実はスゴイことだと思いませんか?
言ってみれば、「自分がプレーしているゲームの審判が、自分(!)」。
なんか絶対、負ける気がしないような……(笑)。
とにかく。“勝間式”に捕らわれない人間は、
勝間和代のようになれなくたって「不幸でも何でもない」と。そういうことですよ。

なんとな~く、なんですけど……。
“人生の成功”って、自分自身の2本の足で
きちんと前に進んでいけば、
けっこうな確率で、全員の前に用意されてるんじゃないかと。
そんな気がしています。


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2 コメント

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そう思うんです。 (はなふみ)
2010-05-30 22:45:40
朝日に連載中の勝間さん。相変わらず頑張ってはります。色々と法則を示してくれて何をダラダラ生きてるの。私のこの明快な解決法、人生の正攻法がわかるでしょ。私自身この法則を知っているから・・ってのが受けるのかしら。でもねぇそれを実行しない人はって言われてる気がする。時間を無駄にしすぎてるとか・・私的には苦しいものが。こういう人とやりあう香山さんは疲れただろうなぁ。
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勝間さんの場合は…… (「火の車」の中の人)
2010-05-31 08:24:09
そうなんですよね、勝間さんの場合、
なんで「何か、イヤ~な感じ」が
残るんだろ? って考えていくと、
結局「自分の言うことに賛同できない人」
=「いまの時代にマッチしてない人」っていう
図式に、なぜか“自動的に”されてしまっている
印象があるからではないか、という気がします。

で、彼女の場合、さらにイヤラシイのが
「別に、私の意見に賛同するように
押し付けてなんかいませんよ?」という風に
“一見、やさしく”振舞いつつ、その言動を総合すると
「ま、私の言うとおりに出来ない人は
“それまでの人”ですけどね」という感じで、
どうにも“冷たい一面”が
透けて見えてしまっている点があることだと思います。

なんつ~のかな、
「私は、あくまでも“あなたの自由”を尊重しますよ」とい言いつつ、心の中で
「そう、時代に置き去りにされて
“落ちぶれていく自由”をねw」って
笑ってるようにしか思えないんですよね……。

こっちの見方が、イジワルなんですかねぇ?

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