プラチンブリの風 第13章

2010年05月30日 | プラチンブリの風

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プラチンブリの風 (第13章) タイ政局(#2) By HARRY H.

【5月19日 治安部隊は、UDDが占拠しているバンコク中心商業地区の強制排除を開始し、UDDが、抗議終結宣言をして終わった。前回の掲載から、時系列的に振り返って見る】

タクシン派(UDD:赤シャツ隊)と、現政権(アピシット首相)との抗争は、4月3日に、UDDがバンコクの中心にある商業地域を占拠し、7日にはバンコクに非情事態宣言が出された。そして、とうとう4月10日には、UDDと治安部隊との衝突で、日本人カメラマン一人(村本氏)を含む25名の死者を出した。

 4月10日の衝突以降は、タイ正月(ソンクラン)の休暇もあり、両者が、バンコA_004クSILOM地区を中心に、にらみあいの状態となった。その後、現政権をサポートするデモ隊(赤シャツ隊に対し、黄色いシャツを着ている)も出てきて、三つ巴の状態になった。

 抗争が長期化する中、知識人の中には、国民投票をして国民の意志を確認しようという動きや、一般市民団体A_006の中にも、力ではなくて、平和的な解決策を模索して欲しいと、両陣営に所信を送るなどの行動も起きてきた。また、国王の介入を期待する声もあったが、国王は、入院中であり82歳と高齢でもあり、政治に介入することには積極的ではない。

 こうした中、現政権のアピシット首相は、5月3日A_005に、現状打開のため、5項目の行程表(ROAD MAP)と、11月14日に総選挙を実施することを発表。これにより、国会は9月15日~30日の間に解散することになり、UDDは、このアピシット首相の提案を受け入れることを表明し、事態は収拾するかに見えた。

 が、UDD強硬派が、バンコク中心部の占拠を解かないことから、治安部隊は、5月13日に、占拠地区を封A_003鎖し、電気・水・地下鉄・BTS・携帯電話等の社会インフラをストップする兵糧作戦に出た。両者の睨みあいが続く中、同日の夜、爆破・銃撃事件が起き、タクシン派の重鎮・SEH DAENG少将が狙撃され重傷を負ったほか、一人の死者と9名の負傷者を出して、緊張感が一層高まった。

 UDDは、現政権側のこうした対応に、更に団結を強め、占拠地区の死守を宣言し、バンコク・ポスト紙では、生々しA_002い写真と共に、“WAR ZONE”と表現して、記事を掲載した。占拠地区には、多くの商業施設、ホテル、学校、病院、大使館があり、閉鎖したり、場所を移したり、その影響は大である。日本大使館も、14日午後から窓口を閉鎖し、近くのホテル内に仮事務所をOPENした。

 治安部隊は、ついに19日にデモ隊の強制排除を開始した。その結果、19日の午後になって、UDD幹部が、デモの終結・解散を宣言した。これで、一段落かとおもいきや、強硬派は、都内各所や地方で、放火や略奪を起こし、政府は、バンコクと23県に夜間外出禁止令(CURFEW)を発令した。バンコクは、17日の週は、公休日となり、学校や官公庁は休みとなった。

 23日の日曜日には、バンコク都内に、4000人ものボランティアが参加して、占拠された地域を中心に、清掃作業を実施し、タイ国民の団結が垣間見られ、将来に対する希望が若干だが見えてきた。

 5月24日の週から、多くのホテルおよび商業施設が、営業を再開させたこともあり、HARRYは、5月28日(祝日:VISAKHA BUCHA DAY)、2カ月ぶりのバンコクに足を運んだ。ビルの3割を消失したCENTRAL WORLD(伊勢丹や紀伊国屋書店が入っている)の黒く焦げた鉄骨は無残であったが、街中は平穏で、車も人出も、ひところの賑わいを取り戻している。被害に会わなかったSIAM PARAGON, SIAM CENTER,MBKの大型SHOPPING・センターには、大勢の人で賑わっていた。SILOM通りは、歩行者天国になっていて、今回の紛争で、店を閉めざるを得なくなった小売店が臨時に店を開いており、そこも賑わっていた。どの店も、GRAND SALEとかMIDYEAR BARGAINと銘打って、30-50%といA_008う大きなDISCOUNT SALEをしていた。

 街中は明るい雰囲気になってきてはいるが、今回の政治紛争は、タイの歴史で最悪ともいわれ、国内外に大きな禍根をのこした。バンコクおよび23県には、まだ非常事態宣言が出されたままであるし、第二UDDが6月には、デモを再開するとの情報もあり、タイが本当の意味で民主国家となり、“微笑みの国”の国民が、微笑みを取り戻すのは、いつの日であろうか。   5月29日記

 

QT 2007年より、イギリスのエコノミスト紙の調査機関が世界中の149カ国を対象に、24項目(暴力・犯罪・軍事費・戦争等)にわたって分析し、国ごとの平和度(GLOBAL PEACE INDEX = GPI)を数値化して発表している。2010年6月現在の数値がつい最近発表された。政治紛争が大きく影響して、タイは前年の118位から124位と後退している。参考までに、我が日本は前年7位から3位とアップ。因みに最下位はイラクである。7月1日記 UNQT