ウッチー回顧録2006~2007

2004年10月よりオーストラリアに住んでいる管理人が、釣りをはじめとして興味のあることをありのままに伝えます。

ワーホリ編その6 目覚め

2006-04-30 19:39:02 | Weblog
今日も昨日も全く自分の投げるルアーには魚がかからないのです。
その頃の自分はトゥィッチングさえも知らなかったのですから釣れないのは今になって思えば当たり前なのでした。
クックタウンに来て初日の夕方に魚がかかるのを目撃した桟橋のへりに伊藤くんと2人で腰を降ろし、ルアーを沖に向かって投げ続けます。
海は相変わらず静かで日差しが強く、露出した肌がじりじりと焼けるのを感じました。
その時は突然やってきました。ラパラのハスキー13センチを投げていると突然手元に衝撃が伝わります。
同時に海を見ると口にルアーをくっつけた魚が大ジャンプ!
唖然としていると魚が手元に向かって走ります。慌ててラインを巻き取ると緩めのドラグから糸が吐き出されます。リールのドラグを締めて無我夢中で巻き取ります。
桟橋から海面までは2メートル以上あって抜きあげることは無理、横目で見ると伊藤くんが桟橋備え付けのギャフを構えているのが見えました。
最後は伊藤くんのギャフが一発で決まり見事にランディング成功。
釣れたのは60センチほどのマッカレル(サワラ)でした。
横たわった魚を目の前にして呆然としていると隣で釣りしていたおじさんが、魚が生きているうちにえらの下のところを切って締めた方がいいと言います。
ですが指先もひざも震えてしまってそれどころではありません。
「今までこんなひざが震えるくらいの感動なんて経験したことがあっただろうか。」
やっとの思いで締めた時ようやく笑みが浮かびました。
「これだったんだ。」探していたものが見つかった気がしました。
何も夢中になれるモノがなかった自分にようやく何かが見つかったのです。

ワーホリ編その5 クックタウンでの苦戦

2006-04-23 11:37:17 | Weblog
翌朝は夜が明けると同時に宿を出発、歩いて桟橋の方に出かけます。
桟橋で釣りをしたかったのですが、すでに先客が陣取っていたので周辺を探ることにしました。
私はシャロークランク、伊藤くんはポッパーです。
しばらくすると伊藤君に魚がかかります。スピニングのパックロッドがひん曲がってなかなか寄ってきません。
ランディングしたのは小さなトレバリー、ルアーごとつかんで持ち上げるとえらの動きに合わせてぎぃぎぃと鳴き声をたてます。
師匠の写真撮影係です。
どうやってルアーを動かしてるんだろうと伊藤くんを観察です。
彼はトップが好きで中学生の頃に則さんの「ブラックバス釣りの楽しみ方」を読んで影響を受けたのだと言ってました。
伊藤くんの操るポップRは移動距離が少なくポーズの時間が長めで、ポップ音は「もわあぁぁぁ」と甘ったるく糸を引く感じです。
緩急をつけて低い音、高い音を交互に発しながら岸ぎりぎりまで引いてくると水中から突然影が飛び出して炸裂します。
岸近くで暴れるのをなだめてランディングしたのはベビーサイズのクィーンフィッシュでした。
またもや写真係、師匠に脱帽です。
その後は桟橋近くにあるカフェで朝食をとり、9時から3時までボートを借りる予定になっていたので桟橋近くのスロープで待ち合わせです。
スズキの四駆でボートを牽引してやってきたのが伊藤くんがケアンズで電話して予約を入れたボート屋さんでした。
犬を2匹連れており、毛並みがよく大切に飼われているのがひとめでわかります。
河口域の地図を手渡され、それにはいくつかのバラマンディーの実績ポイントに×印がしてありました。
希望を胸に抱いて出発です。広大な河口域をしばらく遡るとだんだんと川幅が狭くなってきました。大きく曲がったところで遠目に水面が騒がしくなっているのが見えます。
「今がチャンスだよ」伊藤くんが呟きます。二人でルアーを投げますが一向に反応がありません。
ルアーには見向きもしないのです。魚の正体は全くわからずじまいです。後ろ髪を引かれながらさらに上流へ移動します。
流れが枝分かれしてだんだんと細くなり、両岸はマングローブになっています。
水路のひとつに入り込み、ボートを流れに任せてドリフトさせ、ルアーを岸沿いにキャストします。
伊藤くんがオールで器用に方向転換しながらポジションをとります。エレキなしで印旛や牛久に通っていたそうなのでオールの扱いには年季が感じられました。
実際、私がオールを握るとルアーをキャストするどころではなくなってしまうのです。
全体的に水深が浅く感じられたマングローブ帯では魚の反応がなく、ボイルのあった場所に戻ることにしました。
元に戻ってみると水面はすでに静かになっており、魚は見当たりませんでした。
桟橋方面へ向かいます。
スロープが近くなってきたところで岸沿いをクルーズしている魚を見つけました。
ルアーをキャストすると追ってきますがあと一歩のところで反転してしまいます。
伊藤くんがマリアのザ・ファーストをキャストするとロッドが曲がります。
釣れたのは60センチほどのバラクーダでした。
大きく開いた口には尖った歯が並び、新品のルアーはすでにガビガビです。
3時が近くなり、ボートスロープに戻ることにしました。
その後、太陽が傾くまで桟橋で小魚を釣って遊んだのでした。
水平線が見たこともないようなオレンジに染まり、暮れ残った空に星がちらつき始めると海が黒くなり、夜がやってきたのです。
翌日も早いので宿に戻り、休むことにしました。
翌朝はボート屋さんの家に直行です。おんぼろのスズキの四駆の助手席には犬が陣取り、お客の我々が後ろの荷台に乗り込んでスロープに向かいます。
たびたびエンストするこの車でケープヨークまで行ってきたと聞き、少なからず驚きました。
当時、何人かの日本人がオフロードバイクでケープヨークに向かい、消息を絶ったと聞いていたからです。
出発しましたが、昨日と同じく魚の反応がありません。伊藤くんは厭になってしまったようで昼にはボートを降りてしまいました。
午後になって一人で上流方面へ向かいましたが砂のハンプに座礁し、ボートを降りて腰まで水に浸かり、ボートをやっとこ元に戻したら釣りする気分ではなくなってしまいました。
ゆっくり時間をかけてスロープに戻ります。
伊藤くんとボート屋の人に釣れなかったことを告げてボートを返しました。
その後は桟橋で釣りをすることにしましたが、本当にルアーで魚が釣れるのか疑心暗鬼になってしまいました。つづく。

ワーホリ編その4 クックタウンへ

2006-04-09 19:49:35 | Weblog
ケアンズを出発したのが午前10時頃、途中で4WDのバスに乗り換えてからはさすがに遠くまでやってきたなぁと思わせる景色が続きます。
小さな川をざぶざぶと車で渡ったりしながら6時間後に無事クックタウンに到着しました。
クックタウンではまず、バックパッカーズに宿をとります。荷物を置いてから桟橋の方に伊藤くんと向かいます。
柴田哲孝の本によれば、クックタウンの桟橋でヘドンのタイガーを投げたら得体の知れない魚にラインブレイクされた、とあったのです。
まだ明るい時間帯でしたが丸太を組んだこじんまりとした桟橋では隙間がないくらいの釣り人で賑わっていました。
ここの桟橋はエンデバーリバーの河口に位置しており、水深もあって潮通しもよく、今にして思えば岸釣りでは絶好のロケーションでした。
伊藤くんが冗談で「オーストラリアで一番混雑している釣り場じゃん」と言います。
殆どの人が投網で捕った7,8センチほどの平べったい小魚を餌にしての泳がせ釣りです。
見ているうちに4メートル以上のロングロッドをひん曲げて魚とのファイトを始めた人がいます。大きめのスピニングリールのスプールが逆転し、ラインが吐き出されます。ドラグを使ってのやりとりを見たのはそのときが初めてでした。
しばらくして釣れ上がってきたのは10キロほどのGTです。
「こんなのが桟橋で釣れるのか」と驚いていると別の人にまた違った魚がかかります。
なかなかのファイトで上がってきたのはクィーンフィッシュです。口が目の後ろまで裂けた感じの間抜け面ですが、なかなかのファイターです。
桟橋の隅のほうで一人のアボリジニがエビをえさにして魚を釣っています。当時のオーストラリアでよく見かけた、プラスチックの丸枠に太いナイロンの道糸を巻き、直接ハリを結び、餌をつけて投げるだけというかなり原始的なスタイルです。
ほどなくして30センチほどのカマスが釣れたのです。そして口からハリを外したかと思うと背中にハリを刺し、そのまま水に返します。
伊藤くんと二人で「いくらなんでも強引だよなぁ」と笑いながら話をしているとその仕掛けに魚がかかったのです。
ひょいひょいと慣れた手つきで糸が手繰られ、釣れ上がったのは、60センチほどのバラクーダでした。
餌のカマスは喰いちぎられて胴から下半分だけがハリと一緒にまだついたままになっていました。
さすがに二人で驚いてしまい、翌日からの釣りに期待を抱いてパブに飯を食いに出かけました。

ワーホリ編その3

2006-04-02 10:02:47 | Weblog
9月も差し迫ったある日、伊藤くんが私の住んでいたフラットに遊びに来ました。
話はいつしかケアンズ方面への旅行になって、とんとん拍子で行くことに決まりました。
ゴールドコーストからブリスベンに戻って、以前滞在していたユースホステルに顔を出します。出発の時間まで懐かしい面々と顔をあわせ、最後のあいさつをしてバスターミナルのあるローマステーションに向かいます。
ここからケアンズまでは休憩時間をちょっとずつとりながらバスで27時間かかりました。途中下車して遊びたくなるようなところもあったのですがケアンズに直行です。
前の日の午後3時に出発してケアンズに着いたのが夜の7時過ぎ、さすがにグッタリです。伊藤くんが前に来たとき泊まっていたバックパッカーズに宿をとり、シャワーを浴びてドミトリーの2段ベッドに潜り込みます。
次の日、ケアンズ市内にある「ジャックアースキン」という釣具店に立ち寄ります。ここには大きな水槽があって、その中にはバラマンディーが悠然と泳いでいるのです。
しばらくの間、透明なオレンジに光る目と古代魚を思わせる魚体に見とれます。
ルアーが壁一面に陳列されていますが、素人の自分が見てもあまり釣れそうにないものも目立ちます。
ほとんどプラグを持っていなかった私はここでいくつかのルアーを買いました。
伊藤くんは釣りの新聞を買ってクックタウンにあるボート店の広告を見つけ出し、公衆電話で現地の情報を聞きだします。
実際のところ、英語力では私の方が勝っていましたが、こういった行動力やバイタリティーでは彼の方が数段上でした。
クックタウンに向かうバスの予約をして昼間はボート桟橋まで出かけてキャストの練習に励みました。
伊藤くんはバックハンドキャストがとてもうまく、狙ったところの際にピシリと着水するのです。
どうしてバックハンドにそれほどこだわるのか私はその時あまりわかっていませんでした。
彼は5月にケアンズに来た際、GTのみならずバラマンディー狙いでもガイドを雇って釣りをしたそうで、
テリーホールマンというガイドのキャストの見事さにずいぶん感銘を受けたらしいのです。
曰く「足でハンドコンを操作しながら右からでも左からでも狙ったところにビシビシ入る」のだそうで、キャストの重要さをその時私はちっともわかっていませんでした。
伊藤くんはゴールドコーストで買った5.5フィートのダイワのスピニングのパックロッド、私はアブの5.6フィート2ピースのライトアクションスピニングと2人とも随分と貧弱なタックルでした。
とてもこれからバラマンディーを釣りに行こうという感じではありませんでしたが、私はタックルについて無知だったので特に不安はありませんでした。
伊藤くんが財布をなくして予定が2日ほど遅れましたが、クックタウンへ出発する日がやってきました。