桜陰堂書店2

ここは「超時空要塞マクロス」(初代)の二次小説コーナーです
左、カテゴリー内の「店舗ご案内」に掲載リストがあります

無題

2014-10-05 02:31:35 | 雑記
 皆様にはお世話になりっぱなしで大変心苦しく思っております。
 現在は自分の本来のテリトリーで映画の下手な感想を書いています。
 2週前に観た映画、これが結構SSに使えそうに思い、いろいろ考えたのですが残念ながら、これをヒントに書くマクロス・エネルギーが全然で有りませんでした。

  「バルフィ!人生に唄えば」(「Barfi!」・2012年・インド)
 ちと目の保養にインド美人を観てみよう、ちゅう動機だったんですけどね。(汗)
 観た時は気付かなかったけど、最近になって、これ「マクロス」のバリエーション?なんて気が。
 この映画、古今東西いろんな作品をパクッてるけど(オマージュ)、ま、それは100%無いでしょう。(笑)
 でも背景を取っ払って3人を見ると、輝、未沙、ミンメイを見てるみたいなんですよね。
 バルフィ 聾唖者で悪戯ッ子がそのまま大人になったような人物(輝と言うよりバーミリオン小隊の3人を1人にした感じ)、天然系。
 ジルミル 自閉症で言語が不自由、天然系。(お金持ち)~ミンメイ
 シュルティ 既に婚約者有り、理性的で後に人妻。(裕福)~未沙
 
 但し「マクロス」が正三角形なら、これは鏡に映った三角形。
 輝とミンメイが結ばれ、決断出来なかった未沙が一生後悔するという話。
 そのまま輝&ミンメイの話に置き換えてもいいし、脳内補正を掛けてWヒロインの位置を変えてもOK。

 http://www.youtube.com/watch?v=2mnnk_4neJI

 (以下、完全ネタばれデス)
 ダージリン市に引っ越して来たシュルティにバルフィが一目惚れ、即座にプロポーズ。
 しかしシュルティには既に婚約者が・・・。
 友達として付き合う内、陽気で表裏のないバルフィにシュルティも心が惹かれていくが、親の反対もあり地位と財産のある婚約者の元へ去っていく。
 傷心のバルフィに追い打ちを掛けるように親が倒れ、その手術代のないバルフィは銀行強盗を企てるが、そこで別の誘拐事件に巻き込まれ、成り行きから人質ジルミルと逃避行するはめに。
 長い逃避行の間に二人の心が通じ合っていき、やがてカルカッタへと、でも、そこはシュルティの居る場所でもあった。
 映画ですから二人は偶然再会。
 二人の親密さを見たジルミルが失踪。
 シュルティは夫を捨て、バルフィの元で生活するも、既に彼の心にはジルミルしか居なかった・・・。

 ここまで、凡そ2時間(笑)、でもSSに使えそうなのが、この後の30分に結構有るんですよね。
・3人の再会シーン。
 美しくて哀しくて切ない、この映画一番のシーン。
 ここでシュルティが最後の決断をするのですが、その時の表情がね。
 マクロスと逆だけど、未沙もやっぱりこういう顔して同じ決断をするんだろうなと思いました。
 (「何で俺だけスクランブルが来ないんだ!」と詰られ「戸締りはちゃんとしないと不用心よ」と答える未沙の表情に似てるかも)
・この映画40年に渡る時間があるのですが、最後、二人が逝って1人残されたシュルティ、その部屋の祭壇に飾ってあるバルフィとシュルティのツーショット写真。
 でも、それを手に取って延ばしてみると実はバルフィとジルミルの結婚式の写真、シュルティは介添え役でジルミルの隣に居るんです。
 それを屏風みたいに真ん中のジルミルの部分を折り畳んで無理やりツーショットにしてあった。(涙)
・他にも、故意に電柱を倒し自分に対する信頼度を試すシーンなんかも、上手くシチュエーションを変えればSSに使えそう。
 (シュルティは逃げたけど、ジルミルはボ~っと突っ立てた)

 こう書くとシリアスもので重そうに感じますが、これ基本コメディ映画。
 ベースはチャップリンの「街の灯」、「モダンタイムス」辺りだと思ってます。
 チャップリン映画にB・キートン、ジャッキー・チェン、Mrビーンを混ぜて現代のシリアスものも幾つか入れてみました、って感じで、長尺(151分)だけど楽しく笑いながらシンミリもできる作品でした。
 以前のエネルギーが有れば、これをヒントに二つくらいは書けた気もするのですが、今は駄目のようです。

※シュルティ役の方は超絶美人さんですが、ジルミル役の女優さんもメイクを取れば10年前のミス・ワールドで滅茶苦茶美人。
※バルフィを執念深く追いかける刑事、体型は中年のオイグルで頭の中は銭形警部。
※時間軸が無駄にパズル、集中いて見ないと「ここは何処・・」になります。
 

店舗ご案内

2012-03-19 22:15:20 | 店舗ご案内
 いらっしゃいませ、ようこそお出で下さいました。
 宜しければ下記の階へお進み下さい。

 更新記録~近況
   H24.1.24  「叢雲、立ち昇る時」をUPしました。

  1F 中・長編コーナー 全4話
      「叢雲、立ち昇る時」(H24.1.24) こちら
      「昭和歌謡劇場」(H22.12.2) こちら
      「サンセット・スーパー・ストーリー」(H22.5.5) こちら
      「HOLIDAY」(H21.7.4) こちら
      「マクロス 序章」(H21.5.4) こちら
      番外編「MEGAROAD BALL」(H20.10.29)  こちら

  2F Aフロア 「ゆばさんに捧げる 妄想トンデモ劇場」 全9話(H20.10.12~11.10)   こちら
      「萌えおぼ」で人気のゆばさんのイラストに添えた、桜陰堂の妄想書きコーナーです。
      1、「純情」編 2、「予感」編、3、「妄想」編 4、「魔性」編 5、「さざ波」編 6、「因果」編 7、「応報」編 8、「  」 9、「番外」編

     Bフロア 「その他、短編集」 全7話 こちら
      9、「信じ難い夜に」(H23.1.23) こちら      
      8、「あなたの傍へ流れたい」(H22.6.5)こちら
      7、「終わらないフーガの中で」(H22.1.19) こちら
      6、「ファンタズム PART2」(H22.1.1) こちら
      5、「Goodbye girl」(H21.12.24) こちら
      4、「Oh My God!!」(H21.12.6) こちら
      3、「祇園祭の牽牛と織女」(H21.4.6) こちら
      2、「バカ殿の野望with納めのご挨拶」(H20.12.23) こちら
      1、「2年前」(H20.12.20) こちら

     Cフロア 短編集「Play it、Sam」 全5話(H.21.10.14~10.20) こちら
      1、「Sugar、Sugar」 2、「31 1/2」 3、「アペリティヴ」 4、「所変われど・・・」 5、「僕たちの将来、私たちの将来」
 
  3F Aフロア 催事場   こちら
      1、実況中継「ラブラブさん、いらっしゃい! PART2」(H20.12.18) 
      2、実況中継「ラブラブさん、いらっしゃい! PART3」(H20.12.21)
      3、「あけましておめでとうございます」(H21.1.1)
      4、「未練・・・」(H22.6.12)
      5、「2011あけましてコラボ」(H23.1.2)  
      Bフロア 談話室「えとせとら」  こちら
      「超時空要塞 マクロス」(初代)、(愛・おぼ)のお客様同士、お
     客様と店主のお喋りの場にお使い下されば幸いです。 

  4F 超時空要塞マクロス 勝手に第38話 「たびたち ON THE WAY」は、「桜陰堂書店」
     へ移動しました。

叢雲、立ち昇る時

2012-02-03 13:25:05 | 叢雲、立ち昇る時
    前章

 貴方の事、忘れる訳じゃないのよ、でも・・・。
 何もかも無くなってしまったわ、
 貴方との思い出は、もう、このテーブルの上にあるものだけ。

 未沙は眠りもせずに、ずっと椅子に座りつづけていた。
 テーブルの上には、ライバーから届いた封書の束と二つの写真立て、そし
て小さなアルバム。
 マクロスは今、火星を遠く離れ地球へ向かっている。

 ねぇ、これ、しまっていい?
 この写真、二人で撮った最後の写真だけ残して・・・。

    (1)

2012-01-24 22:03:40 | 叢雲、立ち昇る時
 未沙が浴室で掃除をしている。
 「おおい、未沙、そろそろ来るんじゃないのか?」
 居間に座ったまま、輝が奥へ声を掛けた。
 「今、何時?」
 「ゼロハチ、ゴーナナ!」
 「え!?、もう、そんな時間、今、行くわ・・・、でも、困ったな、ここ、どう
しても落ちないのよね」
 「手伝おうか?」
 「いいわよ、輝には今日、しっかり働いてもらうんだから、せめて今だけ
でも、ゆっくりコーヒー飲んでて」
 浴室からシャワーの音が聞こえてきた。
 新築のカーテンのない窓からは、直接、日差しが部屋を照らしている。
 ピンポーン、ピンポーン!
 「未沙、来たぞ!」
 シャワーの音が止まらない。
 「・・・しょうがないな」
 椅子から立ち上がり、輝が玄関へ向かった。
 ドアを開けるとカーキー色の軍服を着た男が立っていた、輝を見るとサ
ッと敬礼する。
 軍用トラックが2台、家の前に停まり荷台からゾロゾロ男達が降りてい
た。
 「輸送第302小隊、ロビンス中尉であります、指定の荷物の搬入に参
りました」
 トラックから降りた隊員達が整列しながら、さり気なくこちらを見ている。
 「ご、ご苦労様」
 ぎこちなく、輝が敬礼を返す。
 そこへ漸く未沙が来た、中尉が改めて敬礼する。
 「お待たせしました、早瀬少佐です、今日は宜しくお願いします」
 二人の並んだ姿を、整列の終えた隊員達が見ていた。

 ボドルザーとの最終決戦の後、大規模な局地戦も大方収束した。
 マクロスを中心としたマクロスシティの整備が急速に進められている。
 地上に新たな兵舎も出来、潮が引くようにマクロスから民間人、軍人、
更に帰化したゼントラーディ人達が去っていった。
 ガランとした艦内の軍居住区に最後まで残っていた上級職の士官達も、
今月から順次、退艦が始まっている。
 早瀬未沙は少佐に昇進していた。

 「あの人達、どう思ったかしら?」
 開封されてない幾つもの段ボール箱を見て、未沙が輝に聞いた。
 昼食のサンドイッチを頬張りながら、輝は未沙を見る。
 その顔は、困ったような、そうでもないような・・・。
 「ヴァネッサかキム、シャミー、誰か一人でも居ればいいんだけど、今日、
みんな勤務だし」
 「だから、俺が休みを取って手伝いに来てるんじゃないか」
 「そうなんだけど、あの人達に、それが解るかしら」
 「俺と未沙が二人で居たってこと?」
 未沙が悪戯っぽく輝を見る。
 「そうよ」
 「別に気にしたってしょうがないさ、俺達の事って、もう、随分有名らしい
よ、軍の中じゃ」
 「有名って・・・」
 (「有名」も何も・・・、何もしないくクセに・・・これじゃ「行かず後家」じゃな
い)
 そんな思いも湧いてくる未沙、でも、「俺達の事、有名なんだ」と輝が言
い切ってくれたのは妙に嬉しくて、心がウキウキしないでもなかった。

    (2)

2012-01-24 22:03:18 | 叢雲、立ち昇る時
 「何だか、ちょっと前の事なのに信じられない気がするな」
 「何が?」
 「未沙と結婚する前の食事さ、あの頃は、別に何とも思わなかったのに」
 休日、パジャマを着替えたばかりの輝がテーブルの上の朝食を見ていた、
サンドイッチが綺麗に並べられ、作りたてのサラダ、淹れたばかりのコーヒ
ーの香りが鼻をくすぐる。
 輝は未沙の向かいの椅子に座った、
 「二人で食べるのって、いいね」
 未沙が立ち上がり、クルッと背を向ける、
 「私だって、作る時の張り合いが全然違うもの」
 そのままスキップするようにキッチンへ行き、お皿に綺麗に盛られたフル
ーツを持って、又、椅子に座った。
 二人の手が同時にサンドイッチに伸びる。
 見詰め合う二人、伸びた手がそのまま止まってる。
 「この生ハム凄いな、少佐になると、こんな上等なハムが配給されるんだ」
 「・・・、配給?」

 軍服を着た輝が、こっちを見ていてる。
 テーブルの上には、昼食用に作り置きしていたサンドイッチ、熱いコーヒ
ーの香りだけが未沙の他愛無い妄想と一致していた。
 「パイロットだって、こんな上等なハム、お目にかかれないよ」
 溜息をつく未沙、
 「それね、総司令から頂いたの、退艦のお祝いに」
 「なあんだ総司令か、・・・総司令じゃ、しゃあないか」
 輝が、食べかけの残りを口に押し込む。
 「コーヒーのお代わりは、どう?」
 「貰おうかな・・・、未沙、総司令って言えば、総司令の退艦の話どうなっ
たの?「絶対、降りない」ってゴネてるって噂だけど」
 「ああ、あの話?、何とか決着がついたみたいよ」
 「そんなに、あの狭い艦長室がいいのかな、あんな所に居たら気分転換
も出来ないよ」
 輝から目を逸らし、未沙が下を向いた、
 「私、何となく総司令の気持ち解る気がする」
 可笑しそうに、未沙を見る輝、
 「士官学校で心理学もやったんだ」
 「茶化さないでよ・・・、それが本当かどうかなんて解らない・・・解らないけ
ど、総司令、あの時、奥様を亡くしてるでしょ、それは、あの戦争と今の地
球への責任感も有るんだろうけど・・・、誰も居ない大きな家に一人というの
は、辛いんじゃないかしら」
 「でも、それって総司令一人が、そうって訳じゃないじゃないか、みんな無
事だった人なんてマクロス中探したって居ないよ、現に、未沙だって」
 未沙が輝を見つめた、
 「だから、そんな結果を招いた責任感なんだと思うけど、心の底には、そう
いう想いも有るんじゃないかなって気がするの、だって、食事は誰かと一緒
に食べたほうが美味しいもの、違うかしら、輝?」
 今度は、輝が下を向いた、
 「それは・・・、そうだけど」

    (3)

2012-01-24 22:02:51 | 叢雲、立ち昇る時
 陽が傾きだした頃、輝は、ようやく居間へカーテンを取り付けている。
 玄関や居間に積み上げられていた荷物も、残り僅かになった。
 最後のフックをランナーに差し終わると輝は椅子を降り、近くにあった大
きな段ボール箱へ向かう。
 見ると、箱にマジックでMと大書きしてある、未沙の寝室行きのマークだ
った、持ち上げようとして、一人では無理な事が解った。
 未沙は、その寝室で片付けをしている。
 躊躇する輝。
 (どうせ、また、本を詰め込んだんだろ)
 さっき、書斎へ運び込んだウンザリする程の本の数を思い出した
 決心したかのように、輝は大きな段ボール箱のテープを剥がしに掛かる。
 (運ぶだけなんだから)
 中には幾つもの箱、そして、その下には案の定、分厚い本がビッシリと詰
め込んであった。
 取り敢えず、本の上にある箱を運ぶ事にした。
 中箱、中箱、中箱、更に、その上へ小箱を乗せ、両手を大きく拡げ持ち上
げる、重さは大した事ないのだが前が見えない。
 ゆっくり、慎重に歩を進め何とか未沙の寝室に辿り着いた。
 荷物を支えながらノブに手をかける、
 「この荷物、この部屋でいいんだろ」
 大きく声を掛けドアを押す。
 途端に、中から「ワッ!」とも「キャッ!」とも言えない悲鳴が聞こえた。
 輝からは何も見えなかったが、丁度、未沙は広げた下着を箪笥にしまっ
ているところだった。
 バタバタと走る音がしたかと思うと、猛烈な勢いでドアごと押し返され、そ
の拍子で、折角、ここまで上手く運んで来た荷物が床に崩れ落ちた。
 「輝!女の子の部屋へ入る時はノックくらいするものよ!!」
 未沙の叩きつけるような大きな声。
 「あ、ご、ごめん・・・」
 訳も解らず反射的に、そんな言葉が口から出ていた。
 床には4つの箱がてんでばらばらに転がってる。
 軽く舌打ちしながら、輝がしゃがみ込む、その時、一番遠くへ飛んでいっ
た小箱から中身が飛び出してるのが目に入った。
 (あ、まずい!)
 慌てて小箱の元へ行く輝、その動きが急に止まる。
 輝の前には、琥珀色のクラシカルな写真立てに納まってる一人の若い男
の姿、デスクを背にこちらへ向かって微笑んでいる、その顔は、あのリン・
カイフンにとても良く似ていた、そして、丁寧に結わかれた3つの封書の束
と小さなアルバム。
 逆さになった束に書いてある文字を、輝は無意識の内に読む。
 Riber von Fruhling
 勿論、噂は知っていた、
 「あの鬼大尉、何でも、昔、ライバーって恋人がいたらしいぜ、それが、統
合戦争がもう終わるって頃、戦死しちまってさ、そのショックなのか、もう、そ
れからは軍務一筋、優しさなんか、その時、全部、忘れてきたきたんだって
よ、そりゃまあ、仕事は戦死なんかせんけど、こっちは、えらい迷惑だぜ」
 いつだか食事の時、後ろに座ってた男達が大声で話してるのを聞いたこ
とがある。
 その後も、二度三度、同じような事が耳に入ってきた。
 「これが・・・」
 もう既に「この世」に居ない、と解ってたはずなのに、何か、余り経験した
ことの無い陰鬱なモノが輝の中に拡がっていく。
 輝が、また動き出す、まるで感情のない機械のように。
 飛び出た物を戻すために小箱を引き寄せた、止めてあったテープがこの
箱だけ古い。
 (だからか・・)
 中を覗くと、まだ封書が一通残っている。
 切手の貼ってない未投函の封書。
 宛名には、見覚えのある文字。
 輝には、今まで見た未沙の字の中で一番綺麗な文字に見えた。

 白い紙の上に、ポトリ、ポトリ、落ちていく黒いインク。
 静かだった水面に沸き立つ雲が映ったかと思うと、突然、風が吹き出し、
波立ち、何も見えなくなる湖面。

 輝は、それでも飛び出した物を、なるべく丁寧に箱の中へ戻していった。
 
 

    (4)

2012-01-24 22:02:14 | 叢雲、立ち昇る時
 「今日は、ありがとう。本当に助かったわ」
 「いいんだよ、オタクは頭脳労働、肉体労働は俺が専門なんだから」
 輝が笑う。
 「私だって、ちゃんと鍛えてるわよ」
 「ほら、また、反応する。「女の子」って言うんなら、もう少しお淑やかにし
てた方がいいんじゃない」
 「まっ・・・、でも、本当に嬉しかった、手伝いに来てくれて・・・御礼が晩御
飯だけなんて、ごめんね」
 「美味しかったよ、晩飯も昼のサンドイッチも、それで、充分さ」
 足元に視線を落とす未沙。
 「どうしたの?」
 「ねえ、輝、また晩御飯食べに来て、いつでもいいから・・・」
 言った途端、慌てて未沙が輝を見る、
 「ほら、引越しの御礼が晩御飯一回じゃ申し訳ないじゃない!」
 「そんな事、気にしないでくれよ・・・、でも、それ、いいね。・・・未沙、しょ
っちゅう来たら怒る?」
 「ううん、でも、来る前に連絡して、準備があるから」
 「ありがと、そうする・・・、未沙?」
 「何?」
 「今日は早く休むんだよ、一日中動きっぱなしだったんだから」
 未沙が可笑しそうに笑う、
 「輝、優しいこと言うのね。ええ、そうするわ・・・、でも、何だか年上のお
兄さんみたい」
 「まあ、たまには・・じゃ、おやすみ、未沙」
 「ありがとう」
 未沙に背を向け、歩き出す輝。
 「夜道に気をつけるんですよ!輝!!」
 輝が、軽く手を上げた。
 (年上のお兄さんか・・・、あの写真、きっと、何処かに飾るんだろうな)
 仮設の疎らな街灯が薄暗く照らす道を、トボトボ進む黒い影が一つ。
 中空に昇った月が、マクロスを照らしてる。逆光の月はマクロスを巨大
な黒い陰にしていた。


                                       (終)

                                   H24.1.21
 

シナリオ「昭和歌謡劇場」 はじめに

2010-12-02 22:54:34 | 昭和歌謡劇場
 ※12.7 エンディング、別バージョンを追加しました。

 特報!今回も、いろはさんのイラスト付きです!!

 厚かましくも(いつものように)、「イラスト、描いて下さい」とお願いした所、即答で引き受けて頂きました。
 貴重なイラストは(描き下ろしですよ~!)、第2場にUPさせて頂きました。
 いろはさん、ありがとうございます!(平伏) 桜陰堂は幸せ者です。

 ♪工事はつづくよ いつまでも~♪
 と言う訳で、内装工事が完了するのは今月中旬になりそうです。
 休業中、長いのを書こうと思っていたのですが、見事に挫折。
 「予定は未定にして決定にあらず」を絵に描いたような結果に・・・。
 でも、何とか1つ出来たのでUPします。(良かった、6月が最終更新にならなくて)

 今回は、ミュージカル仕立て、出来れば、のんびりと観劇するような積りでご覧下さい。
 更に欲を言えば、ただ読んでも余り面白くないので、時間は掛かりますが歌って(頭ん中で)読んで頂いたほうが、多少でも面白味が増すんじゃないかと思っています。
 これを小説風に書く技量はないのでシナリオ風にしました、幾分(かなり)、読みにくいと思いますが、御容赦下さい。

 それでは、開幕のベルを鳴らします。

 

「昭和歌謡劇場」第一場

2010-11-15 23:56:49 | 昭和歌謡劇場
(オペレーション・ルーム指揮所)
未沙 ♪追いかけて 追いかけて    「恋のフーガ」ザ・ピーナッツ (  )部分ヴァネッサ
     探し回るのよ
     仕事中に フェイド・アウト
     馬鹿にしないでよ
    
     スカル2 スカル3
     聞いてまわったわ 
     「隊長は何処ですか?」
     やってられないわ
 
     初めから(初めから)
     あなたには(あなたには)
     向いてない
     仕事と 思ってたわ

     帰らない 隊長機
     今日は何ですか?
     あの人の コンサート
     それとも サイン会

(スカル1・コックピット) 
輝   ♪本部では 鬼のような    「傘がない」井上陽水
     顔をした 人がいる

     さっきの 通信の
     声を聞けば 目に浮ぶ

     行っちゃおうか 
     君に遭いに 行っちゃおうか
     君の声を聞きたいな
     少しだけ

     優しい声を 偶に聞くことくらい
     悪いことじゃないだろう

(オペレーション・ルーム指揮所)
未沙 ♪バカ!バカ、バカ!    「恋のフーガ」

     見たくない(見たくない)
     聞きたくない(聞きたくない)
     あなたの顔
     あなたの声も

     知らないわ その人と
     好きにすればいい
     明日から 報告は
     別の人にして

    (ズンズビズバ ズンズズビズバ)
     バカ!バカ、バカ!
    (ズンズビズバ ズンズズビズバ)
     バカ!バカ、バカ!



「昭和歌謡劇場」 第二場

2010-11-15 23:56:30 | 昭和歌謡劇場
(オペレーション・ルーム)
  心配になってやって来た輝、取り囲む3人娘。
  ドアが開いてグローバル総司令が入って来る
グローバル「どうしたんだね、指揮所に早瀬君がいないのだが」

ヴァネッサ♪ちょいと一言 ふざけてみたら   「スーダラ節」クレージー・キャッツ 
       あっと言う間に 大喧嘩          (  )部分、ヴァネッサ、キム、シャミー
       気が付きゃ少佐は
       飛び出て行くし
       これじゃゴールはまだまだ先ね
       わかっちゃいるのに やめられない
       (スイスイスイダカラッタ スラスラスイスイスイ
        スイスイスイダカラッタ スラスラスイスイスイ)
キム   ♪主席の少佐は 頭が固い
       年下大尉は 無神経
       水と油を ちょいと火にかけりゃ
       火傷するのが 私たち
       他所でやってよ 大喧嘩
       (スイスイスイダカラッタ スラスラスイスイスイ
        スイスイスイダカラッタ スラスラスイスイスイ)
シャミー ♪愛し合うには 言葉がいるわ
       優しい笑顔も 大切よ
       乙女心は 傷つきやすい
       いつになったら 気がつくの
       意地悪 鈍感 不誠実!
       (スイスイスイダカラッタ スラスラスイスイスイ
        スイスイスイダカラッタ スラスラスイスイスイ)

総司令「大尉、またかね!」
輝  「は、はぁ、まあ・・・」
総司令「大尉、君は、こんなのを希望するのかな」

総司令  ♪ブリッジ よいとこ    「帰って来たヨッパライ」フォーク・クルセイダース ※歌詞の順番が元歌と異なって
       一度はおいで                                      います。
       タバコはダメだが
       ネエちゃんはキレイだ
       ウッハ ウッハ ウッハッハ

       君が そんななら
       私も 考えが
       素敵な考えが
       あるんだぞ
       今度の メガロード
       ブリッジ・オペレーター
       君より ましな奴
       揃えるぞ

(未沙 声のみ)ブリッジ よいとこ
   ↓      毎日 うれしい
   ↓      渋い男に マッチョなイケメン
           ウッハ ウッハ ウッハッハ

       少佐の父さんに
       昔 頼まれた
       娘の将来を
       よろしくと

      「なあ お前 まだフラフラしとんのか
       ほなら また アポロへ行ってまえ~」

輝  「え!?また、アポロって、そんなぁ」
総司令「ああ、今度は帰って来んでいいぞ」


輝    ♪毎日 毎日     「およげ!たいやきくん」子門真人
      男に囲まれて
      熱い視線に
      さらされる

      ある朝 不意に
      僕のケイタイに
      短いメールが
      飛び込んでくる

      あなたと私は
      お友達
      ずっと仲良く
      よろしくね

      たしかに いつも
      僕が悪いけど
      どうして こんなに
      なっちゃったんだろ

  輝、悄然とオペレーター・ルームを出て行く。
ヴァネッサ「あらあら、総司令に敬礼するのも忘れてる」
キム   「相当、ショックみたいね」
シャミー 「Mr.ランジェリーには、これくらいでいいのよ」
総司令  「ふふ、薬が効きすぎたかな。ところで、今晩、忘年会でもどうだね、
      パッといこう!パッと、君達も来るだろうね」
ヴァネッサ「え、また、「銀恋」ですか」
キム   「すぐ肩に手を回すんだから」
シャミー 「と、言う訳で、謹んでご辞退させて頂きます、総司令。イヤねぇ」
総司令  「ふうん、そうかね、そろそろ人事の季節も近いのに」
ヴァネッサ「総司令!それ、パワハラです!!」
シャミー 「あのぅ・・・私、行こうかな、きっと、楽しそうだし・・・」
ヴァネッサ、キム「シャミー!!」


「昭和歌謡劇場」 第三場

2010-11-15 21:35:26 | 昭和歌謡劇場
(湖面近くのマクロスのデッキ、未沙、淋しそうに風に吹かれてる(第36話 冒頭のシーン参照))
  未沙、呟くように小さな声で歌いだす。

未沙 ♪何であいつは ああなの   「よろしく哀愁」郷ひろみ
     わざと意地悪ばかり
     優しい言葉
     たまに欲しいのに

     私 年上だから
     あいつ 甘えてばかり
     折れそうな この気持ち
     気づきもしないで

  (クローディア、未沙の後からそっと近づく)

     会えない時間が
     愛 育てるって
     夢 見たのは
     いつだっけ?

     友達と恋人を
     器用に 使い分けて
     これ以上は 御免よ
     あいつに サヨナラ

     会えない時間が
     愛 育てるって
     夢 見たのは
     いつだっけ?

  未沙、堪えきれずに詰まる。

クローディア ♪もっと上手に 甘えたり    「ワインレッドの心」安全地帯
         もっと喧嘩も したかったわ
         忘れられない 想い出は
         未来なんて ないのよ
         それでもいいの?

         恋なんて どこかで 傷つけあうのよ
         あなたの 心みたく もろいものだわ
         私には 解るの 自信をもって
         あの子に 似合うのは あなたよ 泣いちゃ駄目

  (クローディア、デッキの手摺りに手を掛け、並ぶようにして空を見上げる)

         年上 年下 何が悪いの
         飾らない あなたの 素顔のままで
         誰でもない あなたが とても素敵よ
         自分の心へ 静かに 聞いてみて

クローディア「大事な人ってね、未沙、失くして初めて解るものよ、あなたには・・・、
        あなたには、こんな思いをさせたくないわ」
未沙    「クローディア・・・」
クローディア「一度、ちゃんと話し合ってみたら、怖がらずに。それからでも遅くはな
        いんじゃない。それでも・・・、それでもどうしても駄目なら、仕方ないじ
        ゃない」
未沙    「・・・」
クローディア「ほら、来たわよ」
未沙    「!」
クローディア「あなたを探しに来たのよ、ふふ、お邪魔虫は退散するわ」
  去って行くクローディア、入れ替わるように未沙へ近づく輝。
輝     「ごめん、未沙」
未沙    「・・・」

輝  ♪少佐が立っていた    「真赤なスカーフ」ささきいさお
     いつものブリッジ
     喧嘩したけど
     頼りにしていた

     よそ見したのは 
     本気じゃないさ
     ごめんよ 君には 
     わかって欲しい

     旅立つ 君のそばにいて
     いつまでも 君を守りたい
  
     ラララララ ラララララ 
     だから 許してほしいんだ

未沙 ♪ため息のでるような   「恋のバカンス」ザ・ピーナッツ
     あなたの意地悪に
     甘い夢を見ていた
     私が馬鹿ね

     銀色に輝く
     翼 広げながら
     私を迎えに来た
     遠い 出来事

     アポロから 帰るのを
     待ちわびた あの日々は
     私だけの 思い出
     虚しくなるわ

     ああ 恋のよろこびは
     一人芝居だったわ
     甘い夢を ありがとう
     私 馬鹿だわ

  未沙、輝の横をすり抜け立ち去ろうとする。
  輝、その手を摑む。
輝  「御免、未沙。君を傷付けて本当に悪いと思ってる、御免、謝るよ」
未沙 「輝、もう、いいのよ、これっきりにしましょう、この辺で」
  未沙、再び歩き出そうとする。
  輝の腕に力が入って、ぐっと未沙を引き寄せる。
輝  「行かないでくれ、未沙。君はまだ知らないだろうけど、メガロードのブリッジ
    は危険なんだ」
未沙 「?、何の事、メガロードのブリッジが危険て」
輝  「まだ解らないけど、とにかく危険なんだ」
未沙 「何言ってるの、変よ、輝。もう、離して!」
輝  「だから!とにかく、未沙と一緒に行きたいんだ、メガロードでも何処でも!
    君をずっと守っていたいんだ」
  輝の手に、また力が入り、今度は未沙を強く抱き締める。
輝  「未沙、お願いだ・・・」
未沙 「・・・信じるもんですか!もう、こんな思いをするのは厭なの」
輝  「信じてくれよ、約束する」
未沙 「何を、信じろって言うの」
輝  「僕をだ・・・、僕を、もう一度だけ信じてくれ」
未沙 「・・・」
  未沙、輝の胸で、そっと歌いだす。

未沙  ♪もし 私の 願いごとが   「翼をください」赤い鳥
      叶うならば
      翼が 欲しい

      いつも あなたが
      駆ける空を
      あなたと二人
      飛んでみたいの

      この大空に 翼をひろげ
      飛んで行きたいな
      あなたといつも 微笑ながら
      手を取り合って
      飛びたい

輝     二人 背中に 翼をつけて
      飛んでいこうよ
      ちからのかぎり

      心の空に 翼をひろげ
      飛んでいかないか?
      心を合わせ 思いを合わせ
      手を取り合って
      飛ぼうよ

輝・未沙 心の空へ 翼をひろげ
      今 飛び立とう
      心を合わせ 微笑ながら
      手を取り合って
      飛ぼうよ

  二人、そっと見詰め合う
未沙 「本気なの?」
輝  「当り前じゃないか!」
未沙 「信じて・・・みようかな、でも、これが最後よ」
輝  「解ってる」
  二人の唇が熱く重なる。

(フェード・アウトするように暗転、幕が降りる)
(直ぐにまた、幕が上がり明るい光に包まれる、
 誰もいないデッキへ、キャスト、それぞれ歌いながら順番に登場)
三人娘    ♪意地悪 ヤキモチ 喧嘩    「東京ラプソディ」藤山一郎
クローディア  ヤキモキ ハラハラ したわ
総司令     ようやく 提督に 父上に
         報告が おめでとう

(合唱)     花の都 恋の都
         夢のパラダイスよ
         花のマクロス

     (輝、未沙 舞台の両袖より登場)
未沙      あなたと私で 二人
輝        これから いつでも 二人
輝・未沙    果てない 宇宙でも 宇宙でも
         怖くない 二人なら

(全員合唱)  花の都 恋の都
         夢のパラダイスよ 
         花のマクロス
         花の都 恋の都
         夢のパラダイスよ
         花のマクロス!!         


         (END)







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 (エンディング・新バージョン)

輝・未沙    果てない 宇宙でも 宇宙でも
         怖くない 二人なら

         花の都 恋の都
         夢のパラダイスよ
         花のマクロス

輝 「それでは、今日、この狭いオーケストラ・ボックスで演奏してくれた方達、パート・リー
   ダーだけですが、紹介します」
未沙「まず、1stバイオリン、マクシミリアン・ジーナス!」
輝 「ドラムス・・、今回、出番がないとブーたれてました、僕の先輩、ロイ・フォッカー!」
未沙「ギター、コンマスのハニー、ミリア・ファリーナ・ジーナス!」
輝 「パーカッション、さっき、特大のステーキを平らげてました、柿崎速雄!」
未沙「ベースは勿論、Mr.技師長!」
輝 「今回の為に、わざわざマイクローンになって参加。サックス、親分・カムジン!トランペ
   ット、オイグル!、チェロ、ラプラミズ姐さん!」
未沙「そして最後に・・・私の父です、ピアノ、早瀬隆司!!」

(キャスト全員合唱)
        花の都 恋の都
        夢のパラダイスよ
        花のマクロス
        花の都 恋の都
        夢のパラダイスよ
        花のマクロス!!


        (END)

                                         (H22.12.7追記)
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   Special Thank‘s

 貴重な時間を使って読んで頂き、ありがとうございました。

 今回のSS、切っ掛けは、いろはさんの「栞の秘密」を無断で替え歌ミュージカルにしちゃったら、なんて実に厚顔不遜な思いつきから始まりました。
 1曲目は割りと上手くいったと思ったのですが、2曲目であらぬ方向へ、それがそのまま修正も効かず転がり落ちていって、結局、似て似つかない作品に。(笑)

 ヒントを頂いた上に、イラストまで描いて頂いた、いろはさんに感謝です。
 ありがとうございました。


                                                                             H22.12.2 桜陰堂


サンセット・スーパー・ストーリー

2010-05-02 19:58:36 | サンセット・スーパー・ストーリー
 いろはさんのサイト「りめんば」でUPされた作品(「不満」、「叱咤」)が今回のSSにぴったりなもので、厚かましく「使わせて~」と
 おねだりしたところ、即答を頂けました、イラストは(2)と(6)に掲載させていただきました。
 素敵ないろはさんの作品の足を引っ張り気味なのですが、何卒、御容赦下さい。
 いろはさん、本当にありがとうございます。(追記 5.6 13:45)

 久々のSS更新・・・なのですが、今回はいろいろと前置き(言い訳)が有ります。
 以下の事項に御留意の上、読んで頂ければ大変有り難いです。
 ・完全なパラレル話です、統合軍マクロスの乗組員は全員生きています、が、提督は出てきません、お亡くなりになったか、どこか、
  別の所にいらっしゃるか、それは、お読みになられた皆様次第です。
 ・時間設定は第2部の頃、皆が公認の仲と思ってるのに、当人同士だけが煮え切らない、あの頃・・・。
 ・テーマ等と云う大それたものは全然有りません、リアリティも出来れば考えないで下さい、携帯は無いという事でお願いします。
 ・ラスト・シークエンスが2通りあります。(どっちか決められなかった)
 ・ちょいと長いです。
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  (1)

 「あら」
 「やあ」
 夕暮れのマクロス・シティ、2階建ての大型スーパー・カッシーニの前で二人は偶然
出合った。
 「買い物?」
 「未沙も?」
 そのまま店内へ入って行く二人。
 「今晩、何にしようかしら、輝は何にするの」
 「俺もまだ何も決めてないんだ」
 「マクロスに居た頃が懐かしいわ、3食、食堂へ行けば良かったんだから」
 「へえ、未沙の口から、そんな言葉を聞くとはね、料理、得意って言ってたじゃないか」
 「作るのは好きよ、でも、考えるのはね、毎日々々」
 二人は並んで食品売り場を歩いてる。突然、スピーカーから店内放送が流れ出した、
 「まもなく6時より、1階食品売り場に於いてタイム・サービスをさせて頂きます、本日
の目玉商品は当店自慢の高級ステーキ肉を150g500マクロス、150g500マクロス
にてご奉仕させて頂きます・・・」
 顔を見合す二人、直ぐに足が動き出す。
 目指す場所には、既に大勢の人だかり、当り前の事だが、その殆どが女性客。
 気後れする輝、
 「お、俺、いいや、別のにするよ」
 その顔が、少し淋しそうになってる。
 「・・・いいわ、輝、私が買ってきてあげる」
 「え、未沙・・・大丈夫?」
 戦場で感じる、いつもの殺気と異質の殺気が時間の経過と共に、ひしひしと高まって
いくのを、輝は肌で感じ不安になってきた、
 「止めたほうが良くない?何か凄い空気だよ」
 「ふふ、輝、ここは女の戦場なのよ、私にまかせて」
 「でも」
 「平気だってば」
 「じゃ、じゃあ、お願いしようかな」
 輝が、ボソッと小さい声で呟く。
 「ねえ、輝、そのかわり、入口の所に有るクリーニング屋さんで私の制服取ってきてく
れない、輝と話してて忘れちゃったわ、はい、これ引換券」
 未沙がバッグの中から、手早く半券を取り出し輝に渡す。
 「わ、解った、それくらい何でもないけど、本当に大丈夫、怪我しそうだよ」
 「大丈夫、私の事は気にしないで、貴方こそ、こんな所に居ると怪我するわよ」
 そう言う未沙の顔は、戦闘中、バルキリーのパネルに映る顔と同じになってる。
 「じゃ、悪いけど頼むよ、無理しなくていいから」
 「解った」
 それだけ言うと、未沙は輝に背を向ける、それを見て歩き出す輝。
 遠ざかる自分の後ろで地鳴りのようなどよめきと幾つもの悲鳴が上がった。
 

(2)

2010-05-02 19:58:21 | サンセット・スーパー・ストーリー
 「これ、お願いします」
 入口近くに有るクリーニング・コーナーのカウンターで輝が引換券を差し出しす。
 店主と思しき中年の男が、直ぐ奥へ行き戻って来た。
 「はい、上着とスカートの2点ですね、お確かめ下さい、間違いありませんか」
 見慣れた制服の上着はともかく、スカートを差し出されて、輝は急に顔が赤くなって
いくのを感じる。
 「間違いないです」
 下を向き、鸚鵡返しに輝。
 ビニール袋に入れられた品物を渡されると、物も言わず急いでその場を立ち去ろう
とした。
 「旦那さん!旦那さん!」
 そのまま輝は止まらない。
 「旦那さん!お客さん!!」
 男が慌てて引換券を見る、
 「早瀬さん!!」
 ビクッとして、やっと輝が足を止め振り返った、
 「早瀬って・・・」
 「旦那さん、今日はサービス・デーなんでクジ1本引いてって下さい」
 「ダ・・・ダンナって、誰の事だよ」
 狐につままれたような顔をしてカウンターに戻り、機械的に出された紙箱の中へ手
を突っ込む、摑んだ紙をそのまま渡す。
 「はい、ティッシュ・ボックス。ありがとうございました!」
 何か釈然としないまま、小箱を小脇に挟み、又、歩き出した。
 「一条大尉!」
 聞き慣れた声に心がざわめく、恐る恐る振り返ると、興味深そうにこちらを見てる三
人娘が立っていた。
 「や、やあ」
 「珍しい所で会いますね、大尉」
 「何してんですか」
 「絵に描いたような侘しいカッコね、一条大尉、ティッシュ抱えて洗濯物ぶら下げて」
 そう言いながらキムが近づいて来る、ぶら下げてる大きなビニール袋を見た、
 「やだァ!これ女物だわ、スカートよ」
 「え?!」
 手に下げてる袋を見ると、店のオヤジがぞんざいに入れたのかスカートの端がビニ
ール袋からはみ出てる。
 慌てて端を押し込み、丸めるようにして胸へ抱え込むと、ティッシュ・ボックスが音
を立てて床に落ちた。
 「ねえ、今の少佐のスカートじゃない?」
 シャミーの声、
 「うん、間違いない」
 ヴァネッサが断定する、顔を見合す三人。
 「へえ、今日は二人でお買い物なんだ」
 「グズグズしてると思ったら、少佐もスミに置けないわね」
 ヴァネッサとキムが意味ありげに、こちらを見てる
 「そんなんじゃ無いってば!何で俺が少佐と」
 「じゃあ、それ、何なんですかァ?」
 「ど、どうだっていいだろ、そんなこと!」
 急いで立ち去ろうとする輝。
 「一条大尉、いつまで少佐のスカート抱き締めてるんですか~」
 ヴァネッサの声に、シャミーの声が被さる、
 「ティッシュ、忘れてますよぉ!」
 その声に構わず、どんどん輝が遠去かって行く。
 「あ~あ、行っちゃった」
 「可愛いわね、あんなに動揺しちゃって」
 可笑しくて堪らない様子のヴァネッサとキム。
 シャミーが落ちたままのティッシュ・ボックスを拾い上げた、
 「でも、いいわよね、愛し合う二人が仲良くお買い物なんて」
 「また始まった、あんたは一人で夢見てなさい、ティッシュ抱えて」
 呆れたようにヴァネッサとキムがシャミーを置いて歩き出す、シャミーが慌てて二
人の後を追いかけた。
 

(3)

2010-05-02 19:58:07 | サンセット・スーパー・ストーリー
 「ハア、ハア、ハア!・・・」
 ようやく荒い息が鎮まってきた、未沙の髪は、あっと云う間にボサボサになり、服
は激戦の跡を物語っている、その買物カゴの中には戦いをくぐり抜けた戦果が首尾
良く納まっていた。
 未沙にとって初めての勝利、生まれ育ちのせいか今迄こういう戦場では、あえな
く弾き飛ばされるか、遠くから見守っているだけだった。
 先っき、輝の哀しそうな顔を見た瞬間、何故だか解らないが、気持ちが高揚してき
て、心にもない言葉が口を突いた、
 「任せて!」
 何で、あんな言葉が口から出たのか、とにかく、獲物は無事確保する事ができた、
戦い済んで気持ちが落ち着いてきた未沙に、或るアイデアが浮ぶ。
 「未沙・・・、大丈夫?怪我しなかった?」
 輝が、未沙のボサボサの髪を見ながら、心配そうな顔をして立ってる。
 瞬く間に元気になる未沙、急いで髪を手で直しながら、
 「平気よ、慣れてるから。ちょっと手古摺ったけどね」
 誇らしげに買物カゴを輝の前に差し出す。
 「うわぁ、ありがとう、未沙。今夜はご馳走だよ」
 「ねえ、輝、良かったら、これ一緒に食べない?オニオンとキノコソースなんてどう
かしら?私の実力見せてあげるわよ」
 「え、いいの・・・?そりゃ、助かるし、嬉しいけど」
 「いいわよ、招待してあげる」
 輝の顔が綻んだ。
 「大尉!少佐!」
 その声に驚いて、二人が振り返る。
 「柿崎」、「柿崎君」
 「仲良く買物っすか、おっ、ステーキ2人分、今夜は二人で食事かァ、いいですな、
羨ましいですよ。大尉、これ見て下さい、俺もゲットしましたよ」
 差し出されたカゴの中には、ステーキ肉5人分が入ってた。
 「ご、5人前!!」
 「まあ、1日で食べられん事もないですけど、何とか2日分にはなりますよ・・・、し
かし、大尉も、いよいよ大胆になってきましたな、人目も憚らず、なんて」
 一人でニヤニヤしてる柿崎。
 「馬鹿言うな!今、偶然、会ったんだよ、そこへ、お前が来たの」
 「そうよ、勘違いしないで、これは、私の分」
 「へぇ、少佐、凄いっすね、二人分食べるんですか」
 「あのね、柿崎君、貴方と一緒にしないで、私とクローディアの分よ」
 「クローディアさんって、じゃあ、フォッカー大佐の分はないんですか?」
 「あ・・、そ、それはね、あそこの家は今、ダイエット中なのよ、だから、一人分で
いいんだって」
 見かねて輝が助け舟を出す、
 「柿崎、余り人の詮索すんなよ、趣味悪いぞ。では、少佐、ここで失礼します。じ
ゃあな、柿崎、俺、2階に用が有るから」
 そのまま、傍に有ったエスカレーターに飛び乗る輝。
 「私も失礼するわね、柿崎君。クローディアを探さないと。柿崎君、若いからって暴
食してると、今に痛風になるわよ、じゃあね」
 敬礼してる柿崎を置いて、一目散に未沙も逃げ出す。
 「酷えっす、痛風なんて、相変わらずキツイ事を平気で言いますな、少佐は」
 一人でブツブツ言ってる柿崎の肩を、誰かがポンと叩いた。
 「ク、クローディア少佐」
 「柿崎君、相変わらずね、何人分買ったの?」
 「へへへ、5人分です。それよりクローディアさん、早瀬少佐が探してますよ、たっ
た今、少佐を探しに向こうへ行きましたけど」
 不審げな顔付きになるクローディア、
 「えっ、未沙が?私がここに来てるって何で知ってるのかしら、変ね」
 「一緒に来たんじゃないんですか、クローディアさんの分のステーキ買ってました
けど・・・、あ!やっぱり、あの二人!!」
 「何なの、二人って、未沙だけじゃないの?」
 「実はですね・・・」
 柿崎の顔が、急に嬉しそうになった。


(4)

2010-05-02 19:57:51 | サンセット・スーパー・ストーリー
 (まったく!何で、いつもこうなるのかしら)
 仁王顔のまま、ずんずん歩いてく未沙、気を落ち着かせ、フッと溜息をつくと目の
前にワインの棚が有る。
 (そうだわ、ワイン、有ったほうがいいわよね)
 顔が少し緩む。
 (肉だから赤か、何がいいかしら)
 「少佐!」
 「え!?」
 振り向くと、マックスとミリアがニコニコして立ってた。
 「少佐、今晩はステーキですか、僕がいいワイン選んであげましょうか」
 「ま、まあ、肉は肉なんだけど・・・」
 「マックス、又、例のウンチクとやらを並べるのか、あんまり、いつまでも講釈する
と少佐が迷惑だぞ」
 「大丈夫だよ、ミリア、手短に話すから」
 「講釈って、そんなに詳しいの?マックス大尉は」
 ミリアが少しウンザリ顔で答える、
 「私は、いつもここで20分講義を受けるのだ、そろそろ飽きてきている」
 そんなミリアの声も聞こえぬように、マックスが寄って来た。
 「少佐、肉はどうするんです?ソースは?」
 「え、に、肉は軽く塩・胡椒で焼いて、ソースはオニオンにキノコを混ぜようかなっ
て」
 「スタンダードですね、ステーキなら、やはり、しっかりした赤がいいですよ、ミディ
アム以上、ライトだと肉の味にワインが負けてしまいます」
 「そうね、でもフル・ボディはヒカ・・・ひか、控えとくわ、ソースに合わないかも・・・」
 「さすがは少佐、良くご存知ですね、ソースがコッテリしてないですから、ミディア
ム・ボディがいいと思いますよ、なら、これなんかどうですか、シャトー・ダイダロス、
値段も手頃だし、僕、これ好きです。只、もう少し奮発していいのなら、こっちの~
~~」
 未沙はミリアを見直した、今迄、直情系の短気な士官だと思っていたが、さすが、
ゼントランで部隊を率いてた名士官、ちゃんと忍耐力も備わっているのを改めて思
い知らされた。
 毎日、マックスの話を聞き続けられるだけでも凄い事だ。
 自分には、とても真似は出来ないと思いながら、ひたすら続くマックスの講釈が、
一刻も早く終わるのを未沙は祈っていた。