弁護士辻孝司オフィシャルブログ

京都の弁護士辻孝司のブログです
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裁判員制度 4年!

2013-05-21 19:59:28 | 社会・経済

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4年前、2009年5月21日、刑事裁判を市民の手に取り戻すことが期待され、

裁判員制度が始まりました。

  

私も、模擬裁判やプレゼン、法廷弁護技術の研究に始まり、ジムに通って体力づくりをしたり、戦略論の研究、オーストラリアの陪審視察、ダイエットにホワイトニング、英会話と様々な取り組みをしてきました。

いくつもの裁判員裁判も経験し、現実の裁判員裁判がどうなのかということが掴めてきたような気がします。

  

裁判員制度について、報道や最高裁、法務大臣のコメントでは、審理の長期化や裁判員の心理的負担といったことが今後の課題であると言われています。

しかし、そんなことは、大きな問題ではないだろうと思います。

確かに、以前なら起訴されて2ヶ月ほどで終わっていた自白事件が半年近くかかるようになり、その間、被告人が拘束されたままという問題はあります。

遺体写真や殺害時の音声などショッキングな証拠を見せてしまったという問題もあります。

ただ、こうした問題は、裁判員制度というよりも保釈制度の問題であったり、審理のあり方の問題であって、裁判員裁判のそのものの根本的な問題ではありません。

  

裁判員制度の一番の課題は、

市民のよる裁判が市民の権利を守るための裁判だということの理解が広まっていないこと。

報道や最高裁、法務大臣のコメントは制度の維持だけを考えているように思えてしまいます。

  

裁判員制度によって実現しようとした刑事裁判、社会のあり方に近づいてきているのか? ということこそ検証されるべきだと思います。 

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裁判員裁判の弁護人をしてみて感じることは、裁判員となった人たちはとてもよく考えてくれたということです。

そのように考えてくれた裁判員経験者が増えていけば、刑事裁判も社会も変わっていくのではないかと思います。

ただ、裁判員がどのように感じ、どのように考えてくれるかは、法廷にいる裁判官、検察官、そして弁護人次第です。

弁護人がいい加減なことをしていれば、裁判員は、犯罪者はやはり社会から隔離して、排除すべきとしか考えてくれないでしょう。

弁護人がしっかりと説明すれば、裁判員は、犯罪を犯した人でももう一度社会で受け入れることを考えてくれるでしょう。

 

裁判員裁判を通じて、優しく、寛容な社会をめざしていきたいと思います。

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TEDプレゼンを解剖する!笑いと感動 2013.5.19

2013-05-20 09:33:33 | アート・文化

理事をしているNPO法人国際プレゼンテーション協会の定期総会と創立10周年記念フォーラムに参加してきました。

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記念フォーラムでは、

「TEDプレゼンを解剖する 笑いと感動を巻き起こす・・・TEDプレゼン」というテーマで、

フランク・ウォーレンというプレゼンターの「50万通の秘密」というプレゼンを取り上げられました。

こんなプレゼンです。 リンクをクリックしてご覧下さい。

http://www.ted.com/talks/lang/ja/frank_warren_half_a_million_secrets.html

  

笑いと感動のプレゼンということで、

紹介される手紙は、ユーモアで笑いを巻き起こすもの、感動的なものが、とても良く計算されて並べられています。

そして、プレゼンターは、笑いと感動を切り替えるために間をとり、話し方を変える・・・・

コードスイッチングという技術だそうです。

    

もう一つ、このプレゼンのすごいところは、とてもリラックスしているというところ。

大きなホールで、大勢の観衆を相手にプレゼンしているのに、まるで、すぐ近くにいる友達に話しているようなプレゼンテーション。聞き手もリラックスして、感情を呼び起こしやすい状態をつくって、笑いと感動を届けています。

  

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人前で話をするときに、せっかくだから聞き手が笑ってくれるような話をしたいと思うもの。

ところが、用意していった話が滑ってしまうということが良くあります。

すべらずに笑いを巻き起こす話をするための技術が2つあるようです。

   

ひとつは、自虐ネタ。自分の失敗や欠点を取り上げて、笑いにすること。

   

もう一つの方法は、聞き手をいじること。

聞き手に投げかけて、聞き手の発言に突っ込みを入れる。

聞き手がボケ役、話しては突っ込み役になるということだそうです。

なるほど、明石家さんまさんや島田紳助さんの司会というのは、そういう感じですね。

うまく突っ込んであげる技術は必要ですが、聞き手がネタを考えてくれるので、ネタが尽きることがありません。

万が一すべっても、聞き手の責任なのでダメージも少なさそうです。

   

笑いと感動のコードスイッチング、ユーモアのあるプレゼン・・・

法廷でも使ってみよう。

   


奈良少年刑務所 ~寮美千子さん講演~2013.5.10

2013-05-11 11:29:25 | インポート

カトリック河原町教会で開催された、「詞が開いた心の扉~奈良少年刑務所の社会製管用プログラムから~」(死刑をやめよう宗教者ネットワーク主催)に参加してきました。

以前に、このブログでも紹介した、作家寮美千子さんの講演です。

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講演内容は、以前に伺ったものと基本的に同じなので、詳細は前回の記事をご覧ください。

リンクはこちら http://blog.goo.ne.jp/tsuji-defender/d/20121124

実際に受刑者と向き合い、その教育に携わってこられたという実体験に基づく話、

そして、寮さんの人への優しさや情熱があふれる感動的な講演でした。

弁護士も何人か来ていましたが、もっと多くの弁護士がこの話を聞くべきだと思います。

今年は、京都弁護士会の刑事委員会の委員長だから何か企画しよう!

  

さて、寮さんが指導に行っておられた奈良少年刑務所というのはこんなところです。

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まるで、ディズニーランドかUSJかと思うような門構えです。

中の建物は、こんな感じです。

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奈良少年刑務所の建物は、明治41年に完成、山下啓次郎という司法相の建築家の設計です。

レンガ造りの建物なのですが、このレンガは受刑者たちが焼いたレンガ、すべて手焼きのレンガで、一枚一枚色合い、風合いが異なるということです。

東京駅の丸の内口の赤レンガ駅舎が話題になっていますが、東京駅の駅舎のレンガはすべて工業レンガ、工場で機械生産されたレンガで、とても手焼きレンガの風合いにはおよばないそうです。

どうして、刑務所にこれほど素敵な建物が建てられたかというと、明治時代、外国との間の不平等条約の撤廃というのが政府の大きな課題でした。

不平等条約の大きな一つが「治外法権」

日本政府は、外国人が犯罪を犯しても、日本の裁判所で裁判をすることができませんでした。

日本の刑事司法が整備されておらず、刑務所も極めて劣悪なものしかなかったため、外国は、自国の国民を日本の裁判を受けさせることを拒んでいたのです。

そこで、不平等条約の撤廃を外国にアピールするために立派な監獄が作られました。

 

同じような問題は今でもあります。

現在でも、日本には死刑度があるために、外国に逃亡した犯罪者をするという条約を日本はほとんど締結できていません。

そのため、日本で殺人事件を犯した犯罪者は、外国に逃げてしまえば、日本の警察に引き渡されることがありません。

死刑廃止国からすれば、自国で同じ犯罪を犯しても死刑にはならないのに、日本に引き渡してしまうと、死刑で殺されてしまうかもしれないということになれば、それは引き渡すことはできませんよね。

死刑制度があるために、日本が司法権を行使できないという場面があるのです。

  

さて、立派な監獄は、明治の五大監獄といわれ、千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島にありました。

しかし、その後、次々と建て替えが行われてしまい、当時の建物が残っているのは奈良だけだそうです。

奈良少年刑務所も、文化財指定などがされていないため、いつ取り壊されてもおかしくない状況だそうです。

こうした建物はぜひ残して行ってもらいたいものです。

 

そういえば、裁判所も立派な建物がいっぱいあったのですが、次々に建て替えられて現代的なビルになってしまっているところがたくさんありますね。

 

奈良少年刑務所は、奈良市内で比較的便利な所にあるので、ぜひ皆さん見に行ってみてください。

年に一度、『奈良矯正展』というのが開催されて、一般の人も中を見ることができるようです。

そういう私も、一度も見たことがないので、ぜひ見学に行ってみたいと思います。