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鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

雅文図鐔 鎌倉

2010-02-04 | 
雅文図鐔 鎌倉

 
① 雅文図鐔 無銘鎌倉

 
② 雅文図鐔 無銘鎌倉

 
③ 雅文図鐔 銘 和州住吉包八十八歳

 ここでまた、少し風合いを異にする鐔Photo①、Photo②、Photo③を紹介する。鎌倉鐔(かまくらつば)と呼ばれている、これも作者や地域、あるいは製作の時代など鎌倉とは全く関わりのないところに呼称の起源があるという、少々理解し難い点のある個性の強い作。鎌倉と関わりがあるとすれば、鎌倉土産として広く知られている鎌倉彫の盆などのように、鋤き下げの手法によって表面がほぼ平坦な文様表現とされているところ。鐔工群について良く分からないことから、近代に至って、やむなく付けた呼称らしい。ただ、一点のみだが、「和州住吉包(よしかね)八十八歳」の銘のある作が遺されており、貴重な資料ともなっている。それがPhoto③である。
 ここに紹介した三点とも、鉄地を極めて薄手に仕立て、耳をわずかに立て、地を鋤き下げてほぼ平面に仕上げ、文様部分のみ薄肉に残している。透かしの切り口も縁取りしてわずかに肉高く処理している。鎌倉彫に似ていると言われればその通りだが、この呼称が定着してしまい、むしろ作品から漂う豊富なイメージが失われるのではないかとの懸念もある。文様の構成は、応仁鐔や平安城象嵌鐔のように、文様化された風景を散し絵の如くに配している点。文様の草体化は作者の個性と言えようが、この種の作品では、ほぼ似た印象がある。それでも、同種の鐔を並べて鑑賞すると、明らかに個性が際立ち、同じ工の手になるものと確信し得る作もある。文様の多くは、雲、山、塔、花文、松や梅などの植物、そして秋草。この三点の鐔にも、竜胆、竹、薄(萱)などがみられる。それらが無関係に布置されている点も興味深い。
 純然たる秋草というわけではないが、金工の作風の変遷を眺める上でこの趣の鐔を避けて通ることはできない。


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