ザグレブは、人口80万人。クロアチアの首都であり、同国最大の都市でもあります。しかし観光的に強い見どころがないため、観光で訪れる人はそれほど多くないようです。クロアチアといえば、アドリア海沿岸が、ヨーロッパ人のリゾート地として年々発展していますが、対する内陸は全般的に地味です。それでも首都ザグレブは、首都だけあり、特に夏は旅行者もかなり見かけます。
ザグレブとはそんな街ですが、じっくり歩いてみると、なかなか味わいがあります。私が初めてザグレブを訪れたのは、ユーゴ分裂に伴う内戦を経て独立してまだ日も浅い頃でした。その前年にもオーストリアまで行って、スロヴェニアへ行っても大丈夫かと聞いたら、オーストリア人の反応は、行かないに越したことはない、という感じでした。その翌年、スロヴェニアまで行ったら思いのほか平和で安定していたので、思い切ってスロヴェニアからザグレブまで、日帰りで足を伸ばしてみました。そうしたらそのザグレブもとても安定していて、内乱の余韻すら感じることなく、人々が生活を謳歌していたのに感銘を受けました。
それが1990年代前半の話。それから20年近く。クロアチアという国の存在が普通になり、若い人にとっては逆に、ユーゴスラヴィアが歴史の教科書にしか出てこない国となりました。
ザグレブのトラムの歴史は古く、19世紀末の馬車トラムに遡るそうです。軌間1メートルの狭軌ですが、今日、100キロを超す路線網を有しており、15系統が概ね5~10分間隔で運転され、市民の身近な足として活躍しています。複数系統の通る路線が殆どなので、トラムの路線のある所、どこにいても頻繁に電車がやってきます。車輌はクロアチアのメーカー、クロトラム製が主流で、低床式の新型車もどんどん増えています。毎日50万人の利用者があるといいますから、市民の3人に1人が一日2回乗っているという計算になります。
(Zagreb, Croatia/Hrvatska. March, 2011)