東葛人的視点

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中堅・中小向けERPビジネスはオフコン商売だ

2004-08-31 11:44:14 | ITビジネス
 大手ERPベンダーが、中堅・中小企業開拓に血道を上げている。大手需要が一巡したためだが、従業員200人以下の企業をターゲットにした「Business One」を発表したSAPをはじめ、オラクル、ピープルソフトなどのベンダーは「これからは中堅・中小開拓だ」と一様に叫ぶ。しかし、市場の反応は鈍く、システム・インテグレータが商材として担ぐ機運も弱い。

 反応が鈍いのは、考えてみれば当たり前。中堅・中小企業向けのERPビジネスは、一昔前のオフコン・ビジネスと商売の方法がほぼイコールだからだ。基幹業務ソフトの統合パッケージを顧客ごとにカスタマイズして納入するというやり方は、オフコン時代から確立されたモデルだ。もちろん、ターゲットとなる顧客も同じ。ERPビジネスとの違いは、オープン系のハードか専用機かぐらいの差でしかない。

 しかも、この市場には多数のプレーヤーが既に存在する。「オフコンの夢をもう一度」を狙う富士通やNECなどのメーカー、及び、そのSE子会社。OBCなど中堅・中小に特化した独立系ベンダーも大きなシェアを持つ。いまさら、大企業向けの外国製ERPパッケージの値付けを多少安くしたからと言って、この市場に入り込める余地は少ない。

 そもそも中堅・中小企業にとって、大手向けのERPパッケージがどれほどの役に立つのだろうか。かつて、外資系ベンダーとそのお先棒担ぎのシステム・インテグレータは、欧米企業のどうでもよいビジネス・プロセスをベストプラクティスと偽った。外国ベンダーは日本のビジネス・プロセスをサポートする手間を省くために、日本には「ベストプラクティスがない」と勝手に決めつけ、「ERPを入れて業務改革しなければ生き残れない」と顧客を脅した。一部の無知なマスコミが、その太鼓持ちを演じたために、愚かで、無駄なIT投資が随分行われた。

 こうしたマーケティングがIT不信を生み出したため、今ではさすがに「ERP=ベストプラクティスの塊」といった言い方をするベンダーはいなくなった。しかし、だとしたら逆に「青い目のERP」は中堅・中小企業に対して何を売り物にするのだろう。中堅・中小企業の経営者の多くは、自分の信じる独自の経営指標を使って、マネジメントしている。こうした個別ニーズに対応するカスタマイズも含めて、“オフコン的なパッケージ”よりも安く、手離れよくシステムを提供できるのだろうか。オフコンというドブ板商売は、外から見る以上に深さがあると思うが。