こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

新井満の『自由訳 般若心経』を読んでいる

2006年02月26日 | 読書ノート
自由訳 般若心経

朝日新聞社

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 『般若心経』。あまりにも有名な仏陀の教え・経典である。孫悟空・西遊記の玄奘訳が有名だが,我が国では全部で7種類ある訳本のうち,新井満が今回自由訳に使った流布本がよく流通している。

 短くテンポも良いので,身だしなみの感覚で,私も,この流布本の『般若心経』を覚えた。暗誦すればするほど,体に馴染みフィットしてくる,この感覚が心地よい。意味をしっかり理解しているわけでもないけれど,読み込めば,心眼が真意を捉えるような錯覚があっておもしろい。

「 舎利子よ・・・。実は,あなtのいのちとは,宇宙大河の一滴のことなのだ。わずかの一滴ではあるけれど,その一滴がなければ宇宙大河はついに成り立たない。
 あなたのいのちの一滴は,宇宙大河を成し,宇宙大河はあなたのいのちの一滴に,依存している。
(P32~33)」

 宇宙の一滴だが,その一滴がないと宇宙が成り立たないしくみが良い。祖父母や父母から受け継がれた命は連綿と連なり途切れることがない。その時空を超えた連なりに自分がしっかりとつながれていることを感じたとき,舎利子ならずとも,そこはかとなく,涙が出てくるような感動がある。
 「いのちの一滴が,宇宙大河を成し,宇宙大河はあなたのいのちの一滴に依存している。」ことを感じたときの癒しは,何にも変えがたいものではないだろうか。『般若心経』が唱え継がれてきた所以でもある。

 冬季五輪。 リルハンメル閉会式の閉めのイベントの総括責任者であった新井満。アイデアは優れていたものの,長野大会へつなぐ,風船の花びらは,変化の激しい冬山では,なかなか,咲き誇ってくれない。リハーサルは失敗につぐ失敗。加えて,イベント直前に飛び込む母危篤の知らせ。10億人の視聴者へ向けた大会の現地指揮か母かの苦悩の選択で,新井満は一人の命を選択した。「既に起こってしまった母の死に対するこだわりを捨てたように,これから生じる生に対するこだわりを捨てようと思った(P93)」とき,リルハンメルに舞う美しい風船の花びらはやさしく微笑んだ。

 母の骨壷の脇に置かれていた文庫本の『般若心経』。11年後,新井満をこの自由訳へ誘った。

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2 コメント

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Unknown (軽部豊)
2006-03-03 11:56:43
般若心経、大河の一滴作者の五木さんが本とかをだされていて興味がずっとありました。

あと確かアニメの一休さんが唱えてたり、心霊番組の除霊とかにも使われてたり。

非常に優れた奥深い真理が書かれているのだろうなぁ。

この記事をよんで、また興味が戻ってきました。どうもありがとうございます!
ありがとうございます! (toru_moon)
2006-03-04 06:37:49
「覚えればおこずかいをもらえる」という,おじいちゃんのリクエストに応えて,わが息子が覚えるのにあわせて,私も暗記しました。



 自転車に乗っているとき,電車でぼんやりしているときなど,ときおり,ふと,思い出しては暗誦をしているのですが,だんだん,体にフィットしてきました。 



 動機は不純でしたが,今は,覚えてよかったと思います。新井満さんの本を読んで,一層,親近感が湧いてきました。

 興味が湧きさえすれば良いので,アニメの一休さんでも良いのではないでしょうか。



 コメント,ありがとうございました。