こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

『部下を動かす人事戦略』

2005年12月01日 | 読書ノート
部下を動かす人事戦略

PHP研究所

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  「わが社に人事部はいらない。人事というのはすべての人の責任であるべきだ。」というのは,ヒューレット・パッカードの創業者の1人,デイブ・パッカードの言葉。事実,ヒューレット・パッカードは ,創業後,従業員規模が1200人近くになるまで,人事部と称される独立した部署はなかったそうだ。(P162)
 一方,「日本の会社のように人事権を本社人事部に一極集中させているところは,知りうる限り世界でもあまり類例をみない。」その結果,「ただ,毎年の新規採用で東大生を何人採ったかが人事部の評価になる」という実態がある。

 企業の大小を問わず,あるいは,官民を問わず,日本の組織は人事部門に権能を集約化する傾向があり,現場を知らない官房が人の差配をすることで,現場の仕事と人の貼付けでミスマッチが起こり,結果として,組織が停滞するという話は,だれかれともなく聞いたことがある。
 
舵取りの難しい時代だからこそ,人を育て・活用する人事戦略が重要さを増す中で,このミスマッチは大きな痛手であろう。だから,本書でも「何度も繰り返すが,人事というものはもともとラインの仕事であり,その人事権をラインから引き剥がし,一カ所にまとめてコントロールしようとしたのが人事部だ。ところが,現在のように変化が激しい時代に,ラインの必要としている人材を正確に把握して採用,育成し,なお流出を防ぐことまで人事部が一手に引き受ける従来のやり方を続けるのは,もうほとんど限界だといえよう。」(P191~192)とある。

 お金やポストで社員のやる気が上がる時代ではない。組織にはびこる誤った人事の常識や制度の欠陥を問い,あわせて,会社を変え得るリーダーの育成法と新たな人事戦略の導入し,組織を活性化するのは,どこの企業でも急務であろう。とくに人材育成は最重要で,セブンイレブンもFC研修に年間30億円かけているというし,GEも人材育成予算は,グループ全体で1000億円,リーダ教育には120億円をかけているといわれる。このあたりの投資の思い切りの良さがあるかないかで,将来の組織の浮沈も決まるのかもしれない。

 組織にはびこる誤った人事の常識や制度の欠陥メスを入れ,組織の活性化プランを示すというのが本書のねらいであるが,総論の押さえは異論ないのだが,例えば,成果主義の負の部分の分析も力不足を否めず,共著のせいか,全体的に話にまとまりがなく,訴求性に欠けるきらいがある。
 古本屋(花市古書センター)で半額だったし,またあの名著『踊る大捜査線に学ぶ組織論入門』の金井壽宏が書いたものだったので読んでみたのだが・・・。組織行動論で著名な金井氏と人材マネジメントスペシャリストの高橋氏との共著で,相当期待して読んだのがかえって仇になったのかも・・・。半額でもちょっと損した気分。

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