こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

アースダイバーになろう!

2005年09月04日 | 読書ノート
アースダイバー

講談社

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 中沢新一『アースダイバー』を読んだ。滅茶苦茶おもしろい本だった。第一に,今ある東京を縄文期のセッティングで見るという視点の斬新さ。芝,上野,新宿,銀座・新橋の成り立ちをたどる旅はそれだけで楽しい。しかも,道具は地図を自転車。簡単なのである。地に埋もれた価値観をアース・ダイビングで掴み取る旅。タウンガイドとしても十分使える。切口がおもしろい。
 第二に,西欧的価値観への挑戦。インディアンも含めたアジアの視点からの西欧的ものの見方へのアンチ・テーゼが掲げられる。神から下賜されるのではない,天と地の相互作用。価値の転換を迫る。
 第三に,こんな大真面目な,文化人類学のテキストのような作品が,週刊現代に連載されたという奇妙さ。でも,アースダイビングなるヘンテコナなアプローチをおじさん族の目に触れさせただけで価値ある一打というべきだろう。

 中心に鎮座する西欧的価値観への挑戦。天地創造。何でもプログラムに沿ってカタカタと上からの成り立ちを持つ西洋的世界感に,東洋的世界観が異議申し立てをする。地中に埋もれた価値を地球をダイビングして手繰り寄せる。まだ,完成には至らない概成レベルの荒削りの理論かもしれないが,私的には,結構共鳴した。いわく,

「 自然といわず生命といわず,あらゆるところに自分の原理を浸透させていこうとする押しつけがましさが,キリスト教と資本主義と科学主義と言う,西欧の生んだグローバリズムの三つの武器には共通している。このうち資本主義と科学主義とを受け入れてきた日本人は,それによってずいぶん得をした反面,心の内部の深いところにまでその原理の進入を許してしまった結果,いまやおおいに苦しめられている。
 ぼくたちの心情の中に,グローバリズムへの反感が,根強くわだかまっているのはそのためである。ぼくたちの心の奥には,経済合理主義に会うように造りかえられるのを拒否しようとすう頑固な部分が,まだ,生き残っている。」

 東京タワーは,朝鮮戦争で使った戦車を解体してつくったとか,銀座は,京都の銀細工職人が移り住んだところがルーツだとか,お岩さんはつくられた話だとか,街の成立にいたる,色々な話が満載で,一つ一つの話だけでも,へえ~てな具合なのである。とにかく,皆さんもアースダイビングに一度はまってみてください。


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