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菊之助・彦三郎・梅枝・右近が絶好調!国立劇場「一條大蔵譚」が見事です!

2017-07-04 01:33:14 | 劇評

きのうは、既報通り、国立劇場大劇場にて、歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎のみかた」と「一條大蔵譚」を見てまいりました。どちらも見ごたえがあり、特に「一條~」では、菊之助・彦三郎・梅枝・(尾上)右近のすばらしい活躍で、すぐれた劇的効果を挙げました!今年の歌舞伎公演のひとつの白眉といってもいいでしょう。

まず坂東亀蔵による「歌舞伎のみかた」。先月の隼人とはうってかわって、非常にまじめで端正な解説。せり上がりから盆周りの説明をして、黒御簾の音楽、竹本、つけうちをてきぱきと口跡鮮やかに解説していくさまはさすがの一言です。また、竹本の解説で「国姓爺合戦」「本朝廿四孝」などを例にとりつつ、電光掲示板でそれぞれの本文わかりやすく説明したのはお手柄です。大変すぐれた解説となりました。

つづく「一條大蔵譚」は、なんといっても菊之助の一條大蔵卿が岳父・吉右衛門に学びながらも、独自の境地をすでに開いているのがすばらしく、かれの新たなる当たり役となるでしょう。「檜垣」での稚気あふれる「阿呆」ぶりもおかしく愛らしく、大蔵卿の無邪気なこころを演じ切り、また「奥殿」ではぶっ返りとともに...、あざやかな大蔵卿の矜持を見せたのが収穫。吉右衛門は人間の二面性と複雑な心理を大蔵卿に託しましたが、菊之助はさらに柔軟に大蔵卿の心理に踏み込み、「稚気もまた大蔵卿の本意である」とするところに現代青年のリアリティを現出させました。鋭敏さもたたえつつ、圧倒的な菊之助自身がもつ気品が、公家としての品格につながり、平家調伏の大望をひそませる意地となったように思います。初日とは思えぬ完成度の高さに驚嘆するとともに、回を重ねて、大蔵卿を彼自身の新たなる鉱脈として大事にしてほしい役となりました。

吉岡鬼次郎(きじろう)役を好漢・彦三郎がまたも快演。ダブル主役といってもいいほどの圧倒的な存在感と抜群の口跡のよさで見せ切りました。直情径行なところもありつつ、大蔵卿・常盤御前への疑念に揺れる多感さを見事な感性で演じ、また一段と役者の華が上がったように思います。顔の拵えもよく工夫し、祖父・17代目羽左衛門にますます似てきて、好劇家の紅涙を絞りました。

梅枝の常盤御前も、亡き夫・義朝との交情を感じさせる情のふかさとそこはなとない色気を感じさせてすばらしいですし、右近のお京も大変美しい女芸者で、鬼次郎とのわりない仲を想像させて見事です。今月この四人がいいので、ドラマに大変テンポが生まれ、快調な運びとなりました。

鑑賞教室の域を超えた完成度の高さなので、チケットも残り少ないと聞きますが、今月の必見の舞台といえましょう。大変満足して、隼町をあとにしました!



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