快読日記

日々の読書記録

読書中『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』武田砂鉄

2016年06月04日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
6月3日(金)

朝、ふと、この前読んだ松本清張の短編「月」(『延命の負債』所収)が、田山花袋「布団」に似てるなあと思う。


夕方、図書館で『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(武田砂鉄/朝日出版社)を見つけた。
「言葉で」が「固まる」に係るのか「解きほぐす」になのか不明だったが(「美しい日本の私」的な故意でもなさそうだ)、目次を見ると「育ててくれてありがとう」とか「若い人は、本当の貧しさを知らない」「逆にこちらが励まされました」といった、日頃うっとうしく感じているフレーズばかりだったので、さっそく借りて半分ほど読む。

無自覚に繰り出す安易な決まり文句は、意味がないばかりか、想像力を奪い思考を停止させる。
こんなに鈍くていいのかおい!という苛立ちが伝わってくる。
特に、曾野綾子(と彼女に同調する論客たち)に対する批判がすごくいい、すっきりした。
武田砂鉄という人は1982年生まれだそうだ。
若い。
自身もいずれ年を取っていくわけだから、ぜひ曾野綾子のようにはならないでいただきたい。
というのも「自分だって必ずジジイになる」という視点がほとんどないのがちょっとだけ引っ掛かるからだ。
それも若気の至り、なのかもしれない。

しかし、それより何より、
ちょいちょい引き合いに出すお笑いタレントのネタやサッカー選手のコメントといった話題が目障り。
その、スピードとパワー溢れる論述をグイグイ読む快感に浸っているのに、いきなり〈ふかわりょうの一言ネタ〉に例えられても、ただただ気を削がれるだけで逆効果だ。


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