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「タイムバール」少年探偵団の時代

元少年探偵団、現ダメ社長が「記憶と夢」を語ります。

夜道の掟

2007年04月15日 | Weblog

団塊の世代以上の人なら昔の夜道には格別の記憶があります。当時は街灯もまばらで、しかも途中に切り通しや雑木林があります。トンネルでもあったら最悪。この夜道をどう突破するかは子供にとっては一大事です。選択支は3つしかありません。「泣く」「走る」「歌う」です。「泣く」のは意気地のない子なのでバツ。「走る」と答えるのは恐怖の時間を縮めようとゆう「よい子」の発想ですが、実際には「走っている」うちに「追いかけられている」という錯覚に支配されて恐怖は逆に倍増します。時々夜道を泣きながら走ってくる子を見ましたが例外なく「よい子」でした。よって正解は「歌う」。それも壇上文雄作詞、白木義信作曲の「少年探偵団」でなければなりません。

この歌は暗い夜道を突破する歌に違いなく、まず歌詞が前向きです。「・・・勇気凛々、瑠璃(るり)の色・・・明日をめざす歌声は・・・月夜の空にこだまする・・・」そして一段を声をはりあげて「ぼっ!ぼっ!ぼくらは少年探偵団!」と歌うのです。曲も大きく手を振って元気よく歩くように出来ています。こうして暗い夜道を「突破」すると仲間内で少しだけ「兄貴かぜ」を吹かすことができます。しかし世の中そう甘くはありません。「見た子」に出くわすと事態は一変します。

トンネルの手前の街灯の下で男の子が佇んでいます。知らない子なので、まず「今晩は!」と声を掛けます。これが昔の流儀で素性を確認するためです。彼は黙ったままで、よく見ると震えています。そこはガキのことで震えはすぐに伝染します。「どうした?」と恐る恐る聞きます。彼はトンネルを指差しながらようやく答えます。「みっ、見たんだ!」・・・「みっ、見たって何を?」・・・。ここから先は不要ですね。勇気凛々はあっという間に消滅します。何を見たのかを直ぐに言わないのが話の肝です。

想像力というものは得体が知れないからこそ湧くものです。もし極めて正確にモノを言う人ならどうなるでしょうか。「どうしました?」「はい、左10時の方向から12時方向に、明度35%の不鮮明な白い物体が水平移動したのを確認しました。78%の確率で幽霊かと思います!」なんて言われると「あんた、洗濯物でも飛んでいるのを見たんじゃないんですか?」と言いたくなります。こうゆう「無神経」な人は折角の「恐怖の楽しみ」を台無しにするからです。そんな「無神経・無機的」な人間が跋扈しているのは、この闇の喪失が一因です。子供の想像力と勇気を育む「闇」を奪った電力会社に反省を求める所以です。


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