反撃の集い

世代の違う卒業生が集う「同窓会」は元少年探偵団にとって緊張の場です。地方の「名門」学校としては、我々のようなガキ共の存在はなるべく「隠蔽」したいものです。「無理して呼ばなくていいからな・・・」引退した先生からこんな連絡があると、そろそろ同窓会の時期です。「東京支部長のお前はしょうがないが、他の連中はなるべく呼ぶな」と言う意味です。こうなると張り切るのが探偵団です。片っ端から電話をしまくって、通夜に行く１人を除いて、全員の「出席」をまとめました。見栄をはって都内の一流ホテルを借り切った同窓会は盛況で、テレビで見かける大先輩の有名人が挨拶をしています。若い連中は同窓の有名人に興奮しているようです。

「ばかな奴らだ！」なんて後輩共をこき下ろしていると、「先輩達の頃はどうでした？」いきなり親子ほど年の違う若い女達に囲まれます。とても清水出身の女とは思えないほど洗練されており、桂三枝に日本一汚いと言われた方言もありません。一人はどこかで見た顔ですが悪い気はしません。それより「学校の名」を汚さないように「知的」に振舞うようクギを刺されています。「昔は朝から晩まで運動ですか？」まあ運動で有名な学校なので「１年の半分は合宿所だったな」合宿生活での悪さが頭をよぎります。昔の運動部→勉強しない→赤点、と言う流れになる前に手を打たなければなりません。「いやっ～！運動の疲れは”詩”で癒したもんだ・・・」耳を疑るような台詞は探偵団のあの「ウンコパンツ」です。「詩と言うとリルケとかハイネですか？」「バ、バイロンかな・・・」まずい展開になってきました。

女を黙らせるには哲学の話しが一番です。「どちらかと言うと詩より哲学だな！」「・・・！」不用意な言葉でした。相手は現役の女子大生です。僅かとは言え哲学専攻の可能性も考えるべきでした。基本を忘れたのは若い女に浮かれた証拠です。「わっ～！凄い偶然！今取り組んでいる卒論がハイデッカーなんです。彼の存在論的な形而上学の解体手法を見ると、実存主義と西田哲学は必ずしも対極関係ではないと思うんです・・・」「△□×○＠・・・」意識が遠のいていきます。「もうその辺にしておきなさい！」いつの間に恰幅のいいおばさんが微笑んでいます。「・・・！」我々を監視していた元女子監視団です。どこかで見たような気がした女子大生は娘でした。親子2代にわたって粉砕される訳にはいきません。

不用意な発言をした探偵団を指差します。「こいつは日本のはいでっかーだよ！」「・・・？」女共はキョトンとします。「転んでウンコを漏らしたパンツを海に捨てた。その秘密を知っている俺らはこいつに声をかけるときは・・・」一呼吸します。女子監視団の女校長は顔をしかめて女子大生を連れ去ろうとしますが、彼女らは動きません。言葉を続けます。「おい！今日はちゃんとパンツを・・・はいてっか？」「・・・！」一拍して仰け反りかえる女子大生達。「く、苦しい！」泣き笑いは止まりません。「また女を泣かせてしまったな・・・」おじさんだっていつまでもガキではありません。