内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

シリーズ 安全神話は取り戻せるか? (その3)

2011-08-30 | Weblog
シリーズ 安全神話は取り戻せるか? (その3)
  1、基本的な防災対策強化の必要性         (その1に掲載)
2、崩れた原子力発電の「安全神話」        (その1に掲載)
  3、今後の原子力発電の安全性確保の上で何が必要か (その2に掲載)
 4、原子力安全庁はどの組織に置くべきか
このように見てくると新設される原子力安全庁については、環境への影響が大きい放射性物質を管理、監督するという側面に着目すれば環境省の下に置くことが検討されている趣であるが、何処に設置されるか以上に、次のような基本的な問題がある。
(1)安全性確保のためのコストは誰が負担するのか
 上記1、のようなハード、ソフト双方の面に亘る広範な安全措置を何処ま
で実施させるかという問題とコストを全て電力会社に負わせるかという問題がある。保険を何処まで掛けるかの問題に類似するが、それを余りにも綿密に要求し、企業負担とすれば採算性を超え事業継続は事実上困難になる。稼動継続・再開に当たってのテストについても同様だ。企業側からすれば、それを国が要求するのであるから、国が一定の費用負担をするか、料金を引き上げるかを要請することが予想される。いずれも国民の負担となり、微妙な選択となろう。
 (2) 「事業所外のリスクを伴う事故」以上への対応
最大の問題は、今回のような事故などが発生した場合、事故の深刻度がレベル4の「事業所内のリスクを伴う事故」までであれば企業を中心とした対応で良かろうが、「事業所外」への放射性物質の飛散リスクを伴うレベル5以上、特にレベル6、7の「大事故」や「深刻な事故」レベルと判断される場合は、高度な放射能防護、対策が必要となり、企業レベルでは対応困難となるので、直ちに国家緊急時対策センターを立ち上げ、官邸レベルでの対応が不可欠となろう。テロなどの攻撃が発生した場合は直ちに国家レベルでの対応が不可避となる。
このような原子力施設の安全確保の意味合いを勘案すると、本来であれば原子力安全庁は内閣府に置くことが望ましい。しかし内閣府の総合調整機能が増える一方で、事務体制は関係省庁からの寄合い所帯で出身官庁を見て仕事をする傾向となることなどが危惧されている。
現在の各省庁体制の最大の問題は、それぞれが設置法などで所掌を明確化し、
各省庁が相互に干渉、介入させない縦割りの体制になっていることであり、省庁間の調整や省庁の枠を超えたニーズや対応に内閣や官邸が一丸となって取り組める体制を築くことが望まれる。原子力安全庁を環境省に置く場合、長官を副大臣クラスとするなど、広範な安全対策につき省庁間の調整・指揮が十分に出来るようにしなくてはならない。
 特に事故の深刻度が「事業所外のリスクを伴う事故」のレベル以上になった場合は直ちに対応の権限を官邸に移すこととすべきであろう。「大事故」以上の危機時には、警察、消防などの出動だけでなく、自衛隊の核防護ユニットの緊急出動など一省庁では対応出来ない事態も予想されるので、何処に設置されるにせよ、内閣全体としての効果的な調整・指揮機能が発揮出来る模範例とすることが望まれる。
 なお大臣の数を18に制限することについては、それはそれで良いが、新たなニーズに応えて行くためには、全体の大臣の報酬、予算の範囲内で、一人当たりの報酬を下げる、或いは各省庁に複数配置されている副大臣や政務官を整理し、内閣の総合調整機能を強化する方向で政務3役全体として検討することは可能であろう。(2011.08.11)
(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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