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Policy Essayist

国際司法裁判所のロヒンギャ虐待への対応を評価 (その2 ) ―国際難民問題に一石を投じる―

2021-05-28 | Weblog

    国際司法裁判所のロヒンギャ虐待への対応を評価 (その2 )
     ―国際難民問題に一石を投じる―
 ミャンマーのバングラデシュ国境付近に居住するイスラム系少数民族ロヒンギャの抑圧問題について、国際司法裁判所(ICJ、本部オランダ)は1月23日、少数民族ロヒンギャに対するミャンマー軍による集団虐殺(ジェノサイド)が存在したとして、ミャンマー政府に対し、「迫害を防ぐあらゆる手段を講じる」よう指示する仮保全措置命令を出した。
この問題は、ガンビア政府がイスラム諸国で構成されるイスラム協力機構を代表してICJに提訴したものだ。国際司法裁判所は「ロヒンギャは依然として危険にさらされている状況にある」と認定し、ミャンマー政府に対し、「対策」の実施状況を4ヶ月以内に報告するよう命じた。

 1、難民排出国・源泉国の責任が問われ、改善措置が求められた意義は大きい (その1で掲載)

 2、今後難民問題解決には排出国・源泉国の責任と負担の明確化が不可欠 
 国連傘下の専門機関である難民高等弁務官事務所が対象としている内戦や迫害、地域紛争から逃れた難民や避難民は、2018年、世界中で約7,080万人に達している。このうち、国内避難民が4,130万人であるが、国外に避難した難民が2,590万人、庇護申請者が350万人となっている。戦後、内戦や武力紛争、政治的迫害、地域紛争などが世界各地で発生している一方、難民排出の根源となっているこれら紛争等が長期化し、解決のめどが立たないケースが多いことから、避難民・難民の数はこの20年間で2倍を超え、激増している。難民キャンプが長期に維持されるとキャンプ内で自然増が起こり、規模の問題だけではなく、子供の教育やキャンプ内での閉鎖された将来という人権上の問題も生ずる。
 因みに難民全体の3分の2以上の67%が、シリア(670万人)、アフガニスタン(270万人)、南スーダン(230万人)、ミャンマー(110万人)、ソマリア(90万人)などの発展途上国で発生しており、その内難民申請で許可され第3国定住となったのは902,400人に過ぎない。難民排出国が途上国に集中しているため、世界の難民の84%が途上国で受け入れているが、先進国も全体16%を受け入れている。
 多くの場合、難民等は難民キャンプに収容され不自由な生活を強いられるため、シェルターや食料、衣料、薬品などの必需品は主に難民高等弁務官事務所が支援しており、年間予算額は約80億ドル(2018年、8,800億円規模)にも及び、これらは日本を含む国連加盟国による拠出金(各国の税金)や寄付金等で賄われている。更に、長期に亘る中東紛争の根源となっているパレスチナ難民を含めると、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) の年間予算7.5億ドル(2018年、825億円規模)、その他世界食糧計画(WFO)による食糧支援などの国連機関によるによる支援を加えると、年間1兆円内外の支援を続けていることになる。
 難民の根源である武力紛争や内戦、地域紛争を解決して行かなければ、難民問題は解決せず、コストは増加し、これを各国の税金で支えて行かなくてはならない。人道上仕方がない面があるが、このようなことを何時までも長期間続ければ、難民総数は膨らみ、世界の負担が増え続ける一方であり、また難民の環境に置かれている人々にとっても自由な生活は奪われ、長期化は不幸であろう。
 難民の根源である内戦や紛争を解決する努力を優先すべきだ。その上でも、難民の源泉国、排出国に費用分担や国連の保護下に置く区域の提供などを義務付けると共に、国内抗争や地域紛争の平和的解決を強く求めるべきであろう。それを怠る場合は、人道援助を除く、国連や2国間の援助の削減を行うと共に、大量虐殺(ジェノサイド)や迫害等については近隣国や域内組織、或いは国連が国際司法裁判所に提訴し、関係国に公正な措置を求めるなどすべきであろう。
 現在の状況は、難民の源泉国、排出国のフリーライドとなっており、これがまた抗争や紛争の早期解決へのインセンテイブを失わせているのではないか。

(2020.2.17.)


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