つらつら日暮らし

今日は成人の日(令和3年度版)

今日1月11日は「成人の日」である。まずは、成人になられた皆さんに、心からの祝意を申し上げる。今年は、昨年から続く新型コロナウィルス感染症の影響で、成人式を取り止める地域も多いと側聞する。たいがい、成人式はついでに同窓会にもなり易いのではあるが、今年は中々難しいことだろう。

ところで、「成人の日」とは、「おとなになったことを自覚し,みずから生抜こうとする青年を祝い励ます」ことを趣旨としている。「自覚」に「みずから生き抜く」といった表現からは、確立された自己によって自ら生きることを目指させる日でもあるといえようか。また、「成人式」の起源などについては、【成人式の起源に関する雑考(成人の日・平成30年度版)】をご覧いただければ良いと思う。

それで、拙僧自身も成人の初心に戻るべく、毎年この日は、「成人」に因む学びをしているのだが、今年は以下の文献を紹介しておきたい。

 尤も維新前は冠を戴くと云ふ事でなくして、元服すると云つて男子十五才になれば、頭の前髪を剃ることになつて居りました。是れが支那の冠の礼に代る元服式であります。それで徳川幕府以来明治初年頃迄は、此の元服式は行はれて居りましたけれども断髪令と共に、此の習慣も消滅したのであります。其後民法制定せられて、男子の丁年を定めらるるや、家庭に於て丁年式(成年式)を挙行する人、皆無ではありませぬ。されど夫れは暁天の星よりも稀れであります。唯だ畏れ多くも宮中及び各宮家では、此の丁年式を遊ばす様な事を仄かに承知致して居りますが、私の友人中で子供の為めに、此の丁年式を挙行した人は、僅かに二人あります。此の二人の友人から私にその式辞を読み且つ子供に訓誡をしてくれと頼まれ、其通り為した事がありますが、現在では世間一般に全然行はれて居らぬと断言して差支へなきかと思はれます。
    安達謙蔵「成年式」、『安達先生時局講演集』家入明・昭和12年、37頁、漢字は現在通用のものに改めた


この安達謙蔵氏については、既に【成人式の展開に関する雑考(成人の日・平成31年度版)】で採り上げたことがあるのだが、大正時代から昭和時代初期の日本の政党政治家である。憲政会の加藤高明内閣で逓信大臣を務めるなど、幾つかの大臣職を歴任し、また選挙に強かったことから、「選挙の神様」と呼ばれた人である。

それで、上記一節の通り、安達氏の見解では、昭和初期頃にはほとんど、「成年式(成人式)」が行われていないと指摘されているのである。なお、途中に見える「丁年」とは、「強壮の時に丁(あた)る年」という意味から、いわゆる「成年」と同じ意味である。

日本の成人式は、ここで安達氏が指摘される通り、江戸時代までは「元服」ということで、武家が行う行事であったが、明治時代以降は皇族が採り入れたという。しかし、一般世間で行うことは極めて少なく、現代に見るような成人式の盛り上がりは、この時代はまだ望むべくもなかったといえよう。

それから、「丁年」については、民法の制定によって成立したという。この件について、安達氏は以下のようにも指摘される。

然らば年齢幾つ許りで成年式を挙行するが適当なるやと吟味研究しまするに、生存競争の熾烈なる今日に当つて、民法の規定を遵守して二十一才になつて成年式をすると云ふ事は、余りに晩過ぎる。さらばと云つて十五才は早過ぎる。それで其中間なる十八才を選んで成年とし、十八才になれば弥々独立せる男子として成年式を挙行し度いと云ふ事を考へて居る次第であります。
    安達氏前掲同著・39頁


当時の「明治二十九年法律第八十九号・民法」の「第二章・第四条」が「成年」に関する規定で、「年齢二十歳をもって、成年とする」とある。要するに、二十歳=成年という観念は、ここから来たということになるだろう。日本の旧民法は、フランス民法を土台にしているとされるので、その関係も考えるべきなのだろう。

それで、安達氏は、その20歳成年は遅過ぎるという。結局、20歳になるまで社会に出ている若者を多数見ているためだろう。一方で、その教育などを考えれば、15歳では早過ぎるとし、その間を取って、18歳を成年と見なしてはどうか?と提案している。この辺、奇しくも現代の議論と共通し、いよいよ選挙権など18歳に引き下げられたものもある。

ただし、現代の成人式は、やはり20歳としている。その内に18歳になるのかもしれないが、問題は年齢ではない。要するに、「大人」になるかどうか、ということが問われる。その意味では、年齢でもって一律に決まるものではない。ただし、こういうセレモニーをすることで大人になっていくことを、社会全体で後押しすることも大切だ。今日という日の意義とは、それであろう。

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