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雑感録

これもビートルズだ! その10『YELLOW SUBMARINE』

 
YELLOW SUBMARINE(1969年)

発売順でいくと『THE BEATLES』(ホワイトアルバム)より後なのだが、制作順でいくとこちらが先。
後発世代にとっては別に発売日はどうでもいいので、中山康樹先生に準じて制作順でいかせてもらうことにする。
とにかく『Yellow Submarine』は、もとはEPだった『MAGICAL MSTERY TOUR』に輪をかけて困ったアルバムである。
いろいろと謎も多い。

1)映画の公開からなぜ半年もほったらかされたのか
映画の公開が68年7月、アルバムの発売は69年1月である。
映画は大ヒットしたのだから、公開と同時発売が無理だったとしても、セールス的に考えればあまり日を置かずに発売するのがフツーだろう。
正直なところ、ビートルズはこの企画(サントラ)をボツにしたかったのではないか。
もともと外部から持ち込まれた企画(映画)だし、ビートルズ自身、つまらない曲ができると「それは『YELLOW SUBMARINE』向きだ」と自虐的なギャグを飛ばすくらい不本意なものだったらしい。
ではなぜ結局そんなシロモノをだしてしまったのか。
それは多分、年アルバム2枚というEMIとの契約によるものではなかろうか。
68年は『THE BEATLES』というWアルバムを出したので、これを2枚組と勘定すればクリアしたことになる。
しかし、レコーディングには以前よりはるかに時間がかかるようになっており、おまけにグループ内には不穏な空気が漂っている。
これは早めに1枚出しておいて余裕をもたせておいた方がいいという判断があったのではなかろうか(だったら土壇場の12月でもいいんじゃないかということになるのだが)。

2)なぜEPにしなかったのか
『A HARD DAY'S NIGHT』でも『HELP!』でも、ファンのためにB面には映画とは関係ないビートルズの新曲が入れられた(サウンドトラックという意味では、B面に映画のオーケストラ曲を入れたCapitol盤の方が正しいサントラ盤である。当然Capitolではそこで作ったストックで別のアルバムをでっちあげている)。
『MAGICAL MYSTERY TOUR』では端っからB面など考えず、EPで出した(今度は逆にCapitolの方が気を使ってビートルズオリジナル曲によるLPに仕立てた)。
ならばこちらも無理にLP仕立てにする必要はなかったのではないか。
前述の通り、このアニメ映画は外部から持ち込まれた企画で、曲はすでに『REVOLVER』『SGT. PEPPER'S ~』あたりで構成されおり、当初この映画に乗り気でなかったビートルズは、映画用の新曲に過去のボツ作品や即興で作った曲くらいしか提供しなかった。
これでEPを構成してしまっては、ボツばかりに見えてしまう。
曲数を増やしてボツを薄めてしまおう。
ひょっとしたらそんな意図があったのかもしれない。
あるいは、いつも世話になっているマーティン先生に恩返しのつもりでB面を提供したのか。

とにかく、映画の挿入曲ということでいえば、99年にレコーディングテープからリミックス、デジタルリマスターされた『YELLOW SUBMARINE SONGTRACK』というのもが出ているので、これをもっていれば、このリマスター盤『YELLOW SUBMARINE』を買う必要はなし!というのが僕の結論。
映画の方は、後年この映画のビデオを友だちの家で見たショーンが「お父さんはビートルズだったの」と尋ね、それで隠棲していたジョンが復活を決意した(その結果として、射殺されることになる)という逸話が残る。

01 Yellow Submarine
もはや言うことはない。こちらをご参照のこと。

02 Only a Northern Song
『SGT. PEPPER'S ~』でボツになったジョージの曲。なんかよく分からない経緯で、当初ステレオミックスは疑似ステレオ、モノミックスはそれをモノに合体したモノ。『SONGTRACK』で初めてちゃんとしたステレオミックスが作られ、今回のリマスターで初めてちゃんとしたモノミックスが作られたそうな。故にこの曲はステレオ盤なのにモノで収録されている。でも、そんな細かいことはまったくどうでもいい曲だ(もともとNORTERN SONGSへの当てつけで意図してヘンテコな曲にしたらしいが)。

03 All Together Now
映画を見ながら聞く分にはいいが、曲だけ聴くにはちと辛い。しかし、この曲を作った時点ではビートルズはまだ映画の実態を知らず(しかもそれは『MAGICAL MYSTERY TOUR』にとりかかって間もない頃)、アニメというからには子どもだましだろうと思ってこんな童謡にしたてたのではないだろうか。意外とジョンはお気に入りのようで、一部リードボーカルもとっている。リンゴもコーラスで参加。

04 Hey Bulldog
こちらはビートルズが映画のラッシュ(?)を見て感動した後に作られた曲だが、皮肉なことに映画ではほとんどカットされてしまった。『Lady Madonna』のプロモ・フィルムの撮影時に即興で作られレコーディングされたもの(つまり、口パクどころか、端っから絵と曲をあわせるつもりがない。ピアノだってポールではなくジョンが弾いてるし)だが、その即興というかライヴ感がたまらなくカッコいい。後にこの映像で実際の『Hey Bulldog』があわせられたものが公開されたが、とにかくカッコいい上に、ジョンとポールが並んで1つのマイクで歌う姿が和気あいあいとしていて涙が出そうになる(曲だけ聴いても、歌のないところで二人がはしゃぎまくっているのが分かる)。
ちなみにオリジナルミックスではサビ以外のボーカルが右に寄っていて、ソロ直前でギターが突如センターに来たり、エンディングではアドリブの語り(?)のところで演奏が小さくなったしする(まるで劇団☆新感線の舞台のよう)が、『SONGTRACK』ではボーカルがセンターにあるが通りが悪く、演奏は安定した音を出している。

05 It's All Too Much
『All Together Now』と同じ頃、つまり『MAGICAL MYSTERY TOUR』の初期に作られたジョージの曲。このしばらく後に『You Know My Name(Look Up the Number)』という面妖な曲(こちらはLennon - McCartney)も作られているので、そういう指向の頃だったのかなと考えられなくもないが、『You Know ~』は聴いてて楽しいが、これは別に楽しくない。ジョージ、もう少し修行が必要だな。

06 All You Need Is Love
もはや言うことはない。こちらをご参照のこと。

07~13 マーティン先生のコーナーは割愛させていただきます。

つづく
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