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労働時間法制:改革を「逆風」にしてしまった安部内閣

2007-01-07 | ケンカイ
年明け以降、ホワイトカラー・エグゼンプションを巡る議論がさらに加熱していますが、そんな中で、今日のasahi.comにこんな記事が紹介されていました。

残業代ゼロ見送り論、与党に強まる 厚労省に戸惑い(asahi.com-朝日新聞)


一定の条件で会社員を労働時間規制から外し、残業代をなくす「ホワイトカラー・エグゼンプション」を導入する労働基準法改正について、今年の通常国会では見送るべきだとの声が与党内で強まっている。労働界が猛反対しており、「サラリーマンを敵に回しては、夏の参院選は戦えない」との懸念からだ。だが、この制度導入は安倍首相が掲げる成長戦略の支えであるほか、ほかの労働法制見直しともからんでおり、簡単には見送れない事情もある。
(中略)
しかし、ここへきて、公明党が反対姿勢を打ち出した。太田代表は6日のNHK番組の収録で「基本的には賛成できない。残業代が生活に組み込まれる現実もあったり、職種によって残業の形態が違ったりする。慎重であるべきだというのが基本的な主張だ」と語った。
 厚生労働行政に影響力のある自民党の丹羽雄哉総務会長も4日、「法改正は極めて慎重に対応しなければならない。経営者は人件費の削減ばかりでなく、従業員が報われるような雇用環境の整備にもっと力を入れるべきだ」と指摘した。
(以下略)


今年はちょうど「統一地方選」と「参議院通常選挙」という政治的には「大き目の節目」がやってくる年。そんな中で、労働者側の強い反発が予想されているこの制度の導入に「ハンタイ」の声が上がってくることは容易に想像できます。

これに加えて自民党内に潜んでいるのが、「今年が“亥年”である」ということ。
どうやら、「亥年の選挙は自民不利」というジンクスがあるようです。

「亥年」の政治は自民党に不利というジンクスの理由とは?(R25.jp)


(前略)
じつは来年の選挙は参院選だけじゃなく、4月には全国の多くの自治体で統一地方選挙、知事や市長、議会などの選挙がおこなわれる。この統一地方選があるのは4年に1度で、一方、参院選があるのは3年に1度――。ようするに12年ごとの「亥年」には、必ず春に統一地方選、夏に参院選がおこなわれるのだ。

それが自民党の苦戦とどんな関係があるのか。もともと自民党の選挙を支えてきたのは各業界団体と地方議員。ほとんどの国会議員には地元の議員がついていて、とくに組織的な選挙をおこなう自民党では選挙運動のかなりの部分を地方議員が担ってくれる。ところが、「亥年」の場合、自分たちの選挙があるから地方議員は参院選どころじゃない。そのため、選挙疲れで応援活動にも手を抜いてしまう。これが「亥年」に自民党が苦戦するといわれるゆえんだ。
(以下略)


こうした「回避できない不安要因」がある以上、できるだけ「回避できる不安要因」は避けておきたいというのは人情と言うもの。これまでの報道の流れを見る限り、ホワイトカラー・エグゼンプションの制度導入は「五分五分」といったところではないかと感じます。

さて、今回のドタバタを見ていると、「安部内閣の弱点」というものが浮き彫りになってきてしまっているというのが私の感想です。

何らかの「変化」を起こす時には必ず「現状のままの方が良い(=自分たちの利益が大きい)」と考える人々から「ハンタイ」の声が上がります。この「変化への抵抗」に立ち向かうためには、必ず大義名分となる「軸」が必要となります。なぜなら、この「軸」が無い状態では、変化へのアクションそのものが「逆風」として自らに降りかかってきてしまうためです。

例えば、いったん「変化」を起こそうとした後で「ハンタイ」の声に押し切られて“先送り”や“撤回”という判断となれば、「自分たちに優柔不断で、なにも変化させられない」というマイナスの評価となってしまいます。一方、強引にハンタイを押し切ってしまうと、「周囲の声を全く無視して、むちゃくちゃなことをする」というマイナスの評価を生み出します。即ち、「変化」を起こす時には「ハンタイの声」を押し切ることが出来るほどの強い「軸≒信念≒大義名分≒覚悟」がどうしても必要なのです。

小泉内閣には、良し悪しはさておいて常に一本筋の通った「強固な軸」というものが存在しました。小泉内閣が志向した「強固な軸」のうち、内政においては「自由な競争に任せ、出来るだけ政府は民間のやることに干渉(邪魔)しない(いわゆる小さな政府)方が、日本の活力を高める」というものでした。そして、この派生として形作られたものが「郵政公社・道路公団の民営化」であり、「規制緩和」であり、その他のもろもろの“改革”であったと私は感じています。

しかし、安部内閣になって既に数ヶ月が経とうとしていますが、そこから発せられるメッセージとは「美しい国」ばかりです。言葉の響きはきれいなのですが、非常に曖昧であり、人によって受け止め方が代わってしまう「美しい」という言葉には、残念ながら「軸(≒信念)」というものが感じられません。(例えば小泉内閣で良く用いられた「民間で出来ることは民間に」というフレーズは、良し悪しはともかくとして「具体的な軸」は分かります。)

この違いが生じた理由と言うのは様々な面があろうとは思いますが、「自らの力で地位を獲った」小泉内閣と、「既定路線として当然の成り行きで出来た」安部内閣では、そもそもの“地力”に差があるのかもしれない、と私は感じられてしまいます。

話しが横道にそれましたが、一旦「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」を導入スケジュールに載せてしまっている以上、安部内閣にとっての「サイ」は既に投げられてしまっています。現状では「進むも地獄、戻るも地獄」です。これを打破するためには「進むも戻るも突き通すだけの“大義名分”」が必要なのですが、これだけ世間の注目を集めている議論の中で、もし表面を取り繕うような対応をしようものなら、あっという間に「大変なこと」になる可能性は十分に想定できると私は考えます。

本ブログでは、今年も引き続き「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」を含めた労働契約法制・労働時間法制の議論について取り上げます。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
最後の (キムコウ)
2007-01-10 11:21:32
安倍が阿部
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Re: 最後の (Swind)
2007-01-10 11:31:46
キムコウ様>

はぅ、最後の最後でやらかしてしまってましたね(⌒∇⌒;;

こっそり直しておきました・・・・。
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