朝岡聡の畳三昧

フリーアナウンサー、朝岡聡が面白い畳、最新の畳事情をレポートします。

旅を振り返る

2007-10-08 18:18:33 | Weblog
 今回の「畳の生まれ故郷を訪ねて」は宿を人吉にとりました。八代の南、球磨川沿いにあるこの町も良質のイグサの産地です。ジャパン畳工房のメンバーと名産の馬刺しや焼酎を交えて楽しいひとときに話は弾みました。

 しかし国産イグサの現状は厳しいものがあります。今から20年程前はイグサが「青いダイヤ」と呼ばれ、そこかしこにイグサ御殿が林立した熊本・八代も、今や輸入イグサにおされて栽培面積約1300ha農家は約1000軒と大幅に減っています。

 なんとかして国産イグサと畳をもっと広めたい。今回御紹介したお店は皆さんそんな熱い気持ちで仕事に打ち込んでいます。そのためには輸入物に負けない高品質と創意工夫、お客様の畳ニーズにどれだけ敏感になれるかが勝負。一方で、たとえ輸入のイグサを使ってもニーズに応えられれば畳の需要はもっと増えていく、と考えて積極的に新しい畳を提案している人も八代にはいます。とにかくイグサの産地だけに皆さんとっても畳の未来に真剣。それを実感できたのが今回の旅の最大の収穫でした。

 畳は皆さんが考えている以上に種類もデザインも値段も豊富。画一的では決してありません。ジャパン畳工房のお店に相談すれば、必ずやあなたの御宅にドンピシャリの畳や襖を選択してくれるはずです。


えっ!イグサ食べました…

2007-10-04 13:28:02 | 
 八代の「いぐさ館」の中でも目をひいたのが食べ物。そうです。完全無農薬・有機栽培のイグサを野菜として食品加工しているのです。作っているのは稲田さん。イグサの需要をもっと広める目的で14年前から食品分野にも進出したそうです。

 成分分析の結果、イグサには味がないのですが、それが逆に強みなのだそうで主な商品だけでもイグサのお茶、胡麻と一緒にしたふりかけ、いぐさ麺、い草あめ、いぐさ蒟蒻、蜂蜜といぐさ粉末のブレンド…と多種多彩。まずはイグサのアイスクリームを食べました。色は抹茶アイスそっくりですが、もっとあっさりしていて食べやすい。イグサには苦味や臭みを取り込んでしまう作用があるそうです。



 稲田さんと協力して中華料理にイグサを利用している市内の人気店「太楼」にお邪魔するといぐさ麺のラーメンが登場。独特のつるつるした感触が蕎麦のようで粉臭さなんて微塵もなし。美味いのなんの。ほかにも餃子やシュウマイ、春巻の皮にイグサを練りこんであってこれまた美味。一緒に飲んだ熊本名物の焼酎には「焼酎の友」(いぐさ粉末のティーパック…これでお酒が実にまろやかになります)とイグサづくしの食卓に大満足。



 畳の部屋でホッとするのと同じような効果が食品としてのイグサにもあるのには正直驚きました。

八代ならではのジャスコ

2007-10-01 16:12:25 | 
国内最大のイグサの産地、熊本は八代の旅。

 畑や工場を訪れた後にジャパン畳工房のメンバーが案内してくれたのは郊外にあるイオン八代ショッピングセンター。
ここにはジャスコと75の専門店が入っています。よく見かける大型スーパーと同じかな…ところが!ありました!ユニークなお店が。
その名も「いぐさ館」。

 畳だけではないイグサ活用商品がずらりと並んでいます。
イグサ縄のれん、見事な絵柄の花ござ、枕、座布団、めがねケースにペンケース、木綿といっしょに編んだ洋服やイグサ石鹸もある。襖や障子、壁や天井にもイグサを使った「全てイグサからなる和室」の提案や約百年前の手織り織機も展示されている。


その種類の豊富さに驚くと同時に、イグサの持っている可能性の大きさも実感できる場所ですね、ここは。



 それだけではありません。食べるイグサもあったのです。まさかっって?
いや本当の話。次回はイグサ試食編です。乞うご期待。

畳表の出来るまで(その2)

2007-09-28 17:30:57 | 
日本初?の畳表誕生リポート続けます(笑)。  前回は刈り取ったイグサを泥水に浸けて乾燥させるところまでお話しました。今回はそれを畳表に織る場面です。今度は熊本・八代の深川商店を訪問しました。  こちらは農家からイグサを買って畳表やござを製作しています。工場の中では数台の織機が休みなく動き続々と新しい畳表が編み出されています。使うイグサも生産者や畑、質や長さによって等級があるのです。生産地ならではの贅沢な選別ができるから、製品となる畳表もバラエティに富んでいるのでしょうね。そうそう、市松模様の縁なし畳用の表も製作していました。イグサの織り方は工夫次第でいろんな畳になるのです。今、従来にはなかった全く新しい畳柄も増えているんですよ。  織機には左右からイグサが送り込まれ、2本の縦糸によってしっかり編みこまれてゆきます。良質のイグサが畳表になってゆく様子は、青い草絨毯が出現するのにも似た感動。出来上がった畳表は編目が美しく揃った抜群の手触り。 農家の人が丹精こめて育てた最高級イグサはこうして第一級の畳表になるのです。

畳表の出来るまで(その1)

2007-09-09 22:18:27 | 
生まれて初めて訪れたイグサの畑も興味深かったのですが、刈り取ったイグサをどうやって畳にするかを見るのが今回の僕の最大の目的。いよいよ枩島さんの加工が始まります。お宅には大きな水槽のようなものがありました…はて、何に使うのかな?
 実は刈り取ったイグサは水で洗った後、泥水に浸けるのです。泥?と驚くでしょ。そうなんです。イグサを乾燥させて畳表に編む時に、泥が草を覆う事でイグサの水分を吸収して均一に乾燥させることが出来るそうです。これ畳作りのポイント。僕もビックリでした。凄いなぁ、先人の知恵は。
 泥水に浸ったイグサを55度の熱風で17時間ほど乾燥させると、あらっ、僕らが知っている青畳の色になったイグサの出来上がりです。何とも良い色合いと香り。これを品質別に分けていよいよ畳表を編む段階へと進みます。次回はその様子をお話しましょう。

八代のイグサ畑を見て

2007-08-24 15:14:08 | Weblog
皆さんは国産イグサの最大の生産地をご存知ですか?日本のイグサの栽培面積と畳表の生産量の8~9割を占めるのが九州熊本の八代なんです。球磨川の河口に臨み八代平野が広がるこの地方こそ、国産畳のふるさとです。演歌の八代亜紀さんやパ・リーグの誇る強打者だった秋山幸二さんの出身地ですね。

 輸入モノが増える一方で、国産にこだわるイグサ農家の枩島(まつしま)さんは農水大臣賞も受賞しているイグサ作りのエキスパート。7月初めの収穫期に畑を訪ねると濃い緑のイグサが大人の背丈ほどに伸びています。畑と言っても収穫後は稲作もするので田んぼといっしょです。フサフサとして艶やか、乙女の黒髪のような密度の濃さ。畳から想像していたよりも太い茎をもっているんですね。
6月下旬から3週間ほどが収穫の時期ですが、収穫前45日ほど前に出た芽が長くて高品質のイグサとして珍重されるそうです。それにしても良質のイグサを作るには手間がかかります。畑の土・肥料・世話…普通の農家ならこれで収穫してオシマイなのですが、イグサ農家は育てるだけではなく収穫したものを加工処理して畳表として完成させるところが多いので、とにかく設備投資が必要。人件費と共にこのあたりが現在農家にずっしりのしかかっている問題なのだそうです。

さて、刈り取られたイグサがどうなるか?これまた「へぇ~」の連続の面白さでした。続きは次回!

ジャパン畳工房 佐賀支店について

2007-08-08 13:33:50 | Weblog
国内最大のイグサの産地である九州には他にはないユニークなお店もあります。ジャパン畳工房佐賀支店もそのひとつ。ここの特色は藁床にこだわっているという点です。 私達の使っている畳は床といわれる分厚い中心部の表に畳表を縫い付けてあるわけですが、昨今は床の部分が発泡スチールのような素材で軽くて薄い床も出回っています。しかし佐賀支店では品質への強いこだわりから、あくまで藁を使って床を作っているそうです。 佐賀支店の小林さんは言います。
佐賀の藁は実に良質なんですよ。佐賀牛のエサとして使われるくらいですからね。うちはもともと俵や『かます』(藁でできた袋)を作っていたんですが、その藁をしっかり熱処理することでダニも出ない、半世紀は持つ畳を製作しています。この畳の上を歩いたり座った時の感触は、もう格別ですよ!」  九州でも藁床の畳を作っているのは小林さんの佐賀支店だけだそうですが、職人気質の小林さんの表情からは畳にかける情熱と誇りがひしひしと伝わってきます。
現在は御子息と二人三脚で業務の幅を広げています。自慢の藁床畳の根強い人気に加えて、デザイン性や健康志向の商品で次なる一歩をしるすべく、日々研究にも余念がありません。

東京にいたのでは分からない「畳の現場」の空気がなんとも心地良いのでありました。

ジャパン畳工房 福岡支店について

2007-07-28 18:31:49 | 
取材で熊本を訪れた僕を迎えてくれたのはいつものようにジャパン畳工房のメンバーです。国産イグサの最大の産地である九州だけにジャパン畳工房の支店も個性豊かでお客様の絶大なる支持を集めているお店があります。北九州を拠点にする福岡支店もそのひとつ。石橋さんと松下さんにお話を伺いました。「我々がお客様に接するのは畳だけじゃない。衣食住の住に関するものは全てかかわっていこうじゃないか」こんな気持ちでお客様のニーズに応えているそうです。畳を店の人間が取りに行くのは当然として、時にはお客様からも持ち込んでいただけるようなシステムにするべく、八幡の工場はお客様にも外から内部が見えるような構造になっているとか。近くでゲートボールをしていた御年配が帰りに立ち寄ることもあるそうです。なんだか畳のテーマパークにもつながりそうな素敵な工場ですね。従業員の皆さんが経営や事業展開に主体的に取り組んでいるのも特色で、冬に大人気の暖房畳をガス会社と共同で開発したり、臭い対策や空気清浄に効果があるといわれる「炭の畳」(畳の芯である床に贅沢に1キロも炭を埋め込んであるもの)を商品化して好評だそうです。進取の精神に溢れた姿勢がとっても印象的でした。

い草の産地 九州

2007-07-23 14:23:59 | 
この時期はにとっても大切な時。実はその年に収穫されたイグサが商品として出回り始めるのが9月末から10月にかけてなのです。そこで今回からは、畳の原材料であるイグサの畑や畳表に加工する現場へ出かけたリポート、題して「畳の生まれ故郷を訪ねて」をお届けします。

これまでスポーツや報道の仕事でずいぶん色々な場所に出かけてきたつもりでしたが、今回の旅は実に新鮮。目からウロコの体験もありました。
ところで、現在日本の畳に使われるイグサの8割以上は中国からの輸入ですが、上質な畳表の素材として国産のイグサも根強い人気があります。その主な産地はどこか皆さんご存知ですか?
それは九州の熊本。イグサの栽培面積と畳表の生産量で全国の8~9割を占める一大生産地は九州にあるのですよ。ここではイグサと畳表は500年の歴史がある伝統産業。いったいどんな風景が広がっているのか、ワクワクしながら現地へ向かったのはまだ暑い7月のことでした。

収穫されたい草 収穫から畳に姿を変えるまでに手間のかかる作業が続きます。



国産のい草を大切にしたいですね。(い草農家の皆さんと!)

水戸支店について   その2

2007-06-13 21:06:19 | Weblog

茨城県下に4店舗を構えるジャパン畳工房水戸支店

水戸は城下町だけに職人の町でもありました。その技術と知恵を生かしたお店には面白いものが色々あります。
 上等な畳表をひとつひとつ手で切って作った畳の見本帳。眺めているだけでリーズナブルなものから最高級品まで実に種類が多いのにビックリ。畳の小さな博物館のようです。


さらに、竹林と立派な虎が描かれた4枚セットの襖もありました。地方の大きな家では、このような襖がまだまだ注文されることが多いそうです。
(写真が無くてすみません)



 ユニークなのは商品だけではありません。水戸支店では年数回、畳新聞を発行しているのです。関川畳・内装店で働く人の紹介や子育て日記、ハイキングのお知らせや報告、といった日常の情報といっしょに畳の表替えのイラスト図やい草の情報なども載っている。親しみながら畳に関する知識も頭に入る仕組みです。そしてカラーでデザインも楽しく分かりやすいチラシも好評。たたみ替えメニュー表を見れば予算に応じたベストの畳や襖・障子・網戸・壁紙の張り替えがたちどころに判明。親切でキメの細かい情報が満載です。

 「茨城県で一番気軽に頼める畳屋さんを目指しています!」という言葉がとても印象的でした。