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【ゆうゆうLife】病と生きる 俳優・佐藤B作さん(61)(産経新聞)

2010-03-09 03:50:15 | 日記
 ■公演で延ばした摘出手術 再発…「命には限り」痛感

 俳優の佐藤B作さんが胃がんだと医師に告げられたのは、舞台の全国ツアーの直前だったという。それから半年間、病を抱えて舞台に立ち続けた。ツアー後、胃の摘出手術を受け、テレビや舞台に復帰した佐藤さんの心にあるのは、いつも上演を心待ちにする全国の観客と次の舞台。4月から始まる『無頼の女房』に向け、けいこに励んでいる。(文・牛田久美)  

 「定期検査はしておいた方がいいよ」。歌舞伎俳優、中村勘三郎さんのこの一言がきっかけでした。平成19年秋、新橋演舞場で共演したときのこと。この2年、検査をしていなかったと気付き、受診し、がんと知ったときは信じられませんでした。体力も十分でよく眠れる。その後、腫瘍(しゅよう)が消えたと言われました。

 ところが翌年2月、雪の舞う札幌まで医師が来てくださって、「すぐ手術を」とおっしゃる。腫瘍は消えていなかったのですね。でも旅公演に穴を開けるわけにいきません。脚本家、三谷幸喜君の新作は人気が高い。月会費でさまざまな作品を楽しめる演劇鑑賞会が、各地で準備をしてくれています。

 4月29日、すべての公演を終えました。翌々日の5月1日、手術。予定より多い3分の2を摘出しました。

                 □ ■ □

 実は、私は役を降りたことは一度もありませんでした。

 以前、けいこ中に舞台から落ちて救急搬送されましたが、幸い骨折をせず出演することができました。不思議なことに、1人がけがで苦しい思いをしていると団員が結束して、かえって出来が良くなっちゃう(笑い)。とにかく、手術後もすべて出るつもりでした。

 点滴から流動食になり、人間はものを食べて元気になることを実感しました。ところが、14キロ減った体重が元に戻らない。芝居は3時間、舞台の端から端まで駆ける。抱腹絶倒、スピード勝負の喜劇の面白さと自分の体力とを考え、『戸惑いの日曜日』も(主演を)断念せざるを得ませんでした。腕時計も重い状態で、情けなかったです。あれはいい芝居でした。(代役の)升毅(ますたけし)さんが懸命にやってくれてワッと観客が笑う。うれしいのと寂しいのがないまぜで、いつかまたこの役をやるぞと心に誓いました。

 三谷君も楽屋に来てくれました。彼らしいことに「升さん、B作さんよりずっといいですよ」なんて明るく笑う。そして、なんと、快気祝いにもう1本脚本を書いてくれると言う。おおお、やった、がん特需だ、なんて(笑い)。

 《朗らかに笑う佐藤さんだが、マネジャーの長谷川英子さんは「降板の説得に1カ月半かかった」とふり返る。当時を思いだすたび、佐藤さんは今も涙ぐんでいるという》

                 □ ■ □

 命は限りあることを痛感しました。昨年、再発したときも舞台が控えていました。なぜか、3年に1度の旅公演にぶつかる。こんなに一生懸命に芝居をしているのになぜでしょう。念のため、見えないがんをやっつける放射線治療は10回を超えたところで副作用で動けなくなり、治療をやめ、舞台に戻りました。一回一回の芝居に全力投球する。そしてどんなときも必ず千秋楽までやり遂げたい。

 来月からの舞台『無頼の女房』では、作家、坂口安吾さん夫婦を主人公に、生きること、小説を書くこととはどういうことなのかを演じます。どんな困難に出合っても生き続けなければいけないという話なんですね。安吾といえば堕落論ですが、再生する堕落論をやりたい。

 手術は4時間半もかかりました。芝居を続けた2カ月に広がったのでしょうか。皆さん、すぐ手術しなくてはだめですよ。え? もし2年前に戻ったら? いやあ、やっぱり舞台に…(笑い)。うーん。手術は大事です(笑い)。

                   ◇

【プロフィル】佐藤B作

 さとう・びーさく 昭和24年2月、福島県出身。県立福島高校卒業、早稲田大学商学部中退。48年、劇団東京ヴォードヴィルショー結成。ゴールデンアロー賞芸能賞、第1回喜劇人大賞特別賞など受賞多数。映画、テレビなど出演多数。4月2日からの『無頼の女房』は東京など3カ所で上演。詳細は劇団TEL03・3227・8371。

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