Life in Oslo.

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ノルウェーのクリスマス料理

2013年02月10日 | 生活
今年の冬は雪は少ないものの、路面が凍結しており、坂が多いオスロは非常に危険です。札幌育ちで路面凍結には強いと自負していましたが、何度か派手にひっくり返ったので、簡易スパイクを購入してしまいました。ちょっと敗北感。

右端の黒いゴムベルトを靴にはめます。かっこわるいですが、背に腹は代えられません。ノルウェーではこのてのスパイクがたくさん売られており、中には"ランニング用"まであります。「-15度+つるつる坂道でランニングなんて、もはや体に良くないじゃないか!」とも思いますが、本当にノルウェー人はランニングが好きです。ランニング用スパイクとヘッドライトを装着して真夜中にジョギングする人も見かけます。酔狂としか言いようがありません。また、冬期の日照時間が少なく街の灯も少ないノルウェーでは、多くの人が反射材(life saver)を身につけています。腕やカバンに巻き付けるタイプとキーホルダータイプがあり、最近ではノルウェーっぽい柄のものも売られているのでお土産にも良いと思います。

 さて、ノルウェーにはいくつか伝統的なクリスマス料理があります。ノルウェーは今でこそオイルマネーにより世界有数の富裕国ですが、1900年代後半(割と最近!)にオイルが発見される前はヨーロッパ最貧国とまで言われるほど貧しい国でした。ノルウェーのクリスマス料理は「厳しい冬に備えて備蓄した貴重な動物性タンパク質を、年に一度のご馳走として振る舞う」というコンセプトを体現したものであり、基本的に高カロリー・高塩分・高脂質で驚くほど体に悪いものばかりです。
 クリスマス料理の代表格としてはルーテフィスク(Lutefisk)という魚料理が挙げられます。ルーテフィスクはタラを水酸化ナトリウム(!)に漬け込み、ぷるぷるのゼリー状にした謎の食べ物です。一説によると誤ってタラを水酸化ナトリウムの中に落としてしまったのが起源だとか。真偽のほどは分かりませんが、何ともノルウェーらしくて良い話です。この謎の食べ物はノルウェー人でも好みがはっきりと別れ、面妖な食感と異様な匂いにより否定派も多数います。普段は"100%ビーフ"を売り文句にしているハンバーガーチェーンがクリスマスシーズンに掲示した広告にも、そのことが見て取れます。


 ルーテフィスクは敷居が高すぎるので、今回はもう一つの代表的なクリスマス料理であるピンネショット(Pinnekjøtt)を作ってみました(余談ですが、ノルウェー語では一定の条件で"k"が"s"に近い発音になります。例えば中国=Kinaは"シナ"と発音します)。ピンネショットの起源はノルウェー西部の保存食で、塩漬けにした羊肉を白樺の木を使って蒸し焼きにしたものです。クリスマスシーズンになるとスーパーには様々なメーカーの肉が並びます。塩漬けにした後に燻製したもの(røkt)と、燻製せずにただ干したもの(urøkt)があります。1kgで200クローナから400クローナほど(2013年2月現在、約3500円から7000円程度)とピンキリですが、安い物は可食部が少なかったり色が悪かったりします。今回は、いつも買うラム肉のブランドが出している300クローナ/kgほどの物(燻製していないurøkt)を買いました。

ピンネショットは、時間こそかかるものの、調理方法はいたって簡単です。

<ピンネショットの作り方>
(1)水でうるかす(←北海道弁のようです。標準語では「水に漬ける」?)

塩漬けされた肉は物凄くしょっぱいので、水でうるかして相当量の塩分を抜かないと食べられません。ノルウェーでは半日程度が一般的なようですが、24時間以上、できれば30時間ほど塩抜きしないと日本人には厳しい塩分です。数時間すると何とも言えないケモノ臭(犬小屋臭)が漂ってきますので、適宜水を換えます。普通は1度換えれば良いそうですが、僕は3回換えました。

(2)蒸す準備
最低24時間以上塩抜きすると、棍棒のように硬かった肉も、さすがにふやけて軟らかくなります。

塩抜きが終わったら大きな鍋を用意し、ピンネショット用の白樺スティック(スーパーで必ず売られています)を"井"の字型に組みます。蒸し焼きにする際に肉が水に浸かるのを防ぐことに加え、白樺の香りで肉の臭みを消す効果もあるそうです(本当に効果があるのかは分かりません)。ピンネショット用の肉は細長いので、隙間から肉が落ちないように工夫して組みあげます。


(3)蒸す

鍋の中に白樺スティックを組みあげたら、あとは水をはって蒸すだけです。肉から鈍い黄色がかった油が滴り落ち、部屋中に蒸しケモノ臭(犬サウナ臭)が充満します。軽く蓋をして蒸すと日本人好みのふっくら軟らかな仕上がりになります。

(4)出来上がり
2時間ほど蒸せば出来上がりです。個人的な感覚としては、肉が収縮して骨が出てくればOKだと思います。写真の皿の中央左側の肉から白い骨がニョキッと顔を出しています。こういう状態になれば食べ頃だと思います。


ピンネショットは、ノルウェーのクリスマス料理の中では日本人の口にも合い、調理方法も単純ですので、お勧めです。しっかりと塩抜きし、蒸して油を落としてもなお、食後にずっしりとした存在感を感じます。このずっしり感を解消するため、食後にはアクアヴィット(ハーブを加えた蒸留酒)が欠かせません。前回の記事でもご紹介した通り、アクアヴィットは消化を助ける(と、少なくともノルウェー人は信じています)ので、高カロリー・高塩分・高脂質のクリスマス料理には必須です。


 ピンネショットの作り方を教えてくれた友人が、彼のアパートの大家さん主催のクリスマスパーティに招待してくれたのですが、その時に食べたチョコレートケーキがとても美味しかったので、そのレシピも教わりました。このチョコレートケーキもクリスマスによく作られるそうです。これまでに食べたことがないほど濃厚で滑らかな舌触りにすっかり虜になってしまいましたが、とても美味しいのに何故かたくさんは食べられない不思議なケーキでした。

レシピを聞くと、たくさん食べられないのも頷けました。実際に作って妻に食べてもらったのですが、先に材料や製法を言ってしまったのでフォークの進みが遅く、リアクションはイマイチでした。このケーキを作る時は、原材料や作り方を食べる前に絶対に教えないことが重要です。そしてこのケーキ、なんとオーブンで焼く必要がありません。信じられないほどいとも簡単に作れます。ただし、その簡単さの秘訣こそが、食べる前に最も教えてはいけないポイントなのですが。

<ノルウェー風チョコレートケーキの作り方>
(0)材料
ケーキ本体用
・板チョコレート:3枚(ビター1枚、ミルク2枚にすると丁度良い甘さ)
・ココナッツオイル(固形。"Delfia"という商品が有名で、このケーキが"Delfiaケーキ"と呼ばれるほど):375g(Delfiaだと1.5パック)
・卵:4個
・砂糖:小さじ4杯
・インスタントコーヒー:小さじ3杯(入れるとビターな仕上がりになるので、好みで調整。)
ココナッツオイルは必ず固形のもの、つまり常温で固体であるものを使用してください。ここが最大のポイントです。


ケーキの具(?)用。必須ではないので、お好みで。
・マリービスケット:0.5パック(適量)
・カラフルなグミ:適量(入れると相当くどくなるので、あまりお勧めしません)
・マジパン:適量(入れると劇的にくどくなるので、お勧めしません)

(1)具を作る
粉々に粉砕したマリービスケットとバターを絡めて板状にし、冷蔵庫で固める。マジパンも入れたい場合は、同じく板状にしておく。どちらもケーキの中に入れるので、使用する型に合わせて成形する。

(2)チョコレート全量を、湯煎で溶かす。インスタントコーヒーも溶かす。

(3)卵を泡立て器で混ぜ、砂糖を溶かす。

(4)ココナッツオイル全量を小鍋に投入し、弱火で溶かす。

(5)溶かしたチョコレート、混ぜた卵、溶かしたココナッツオイルを全て混ぜて型に流し込む。板状に成形したビスケットやマジパンを入れる場合には、流し込む途中で適宜配置してレイヤー(層構造)を作る。カラフルなグミも適当に配置する(google画像検索などで"delfiakake"で検索すると、ケーキの写真がたくさん出てきます)

(6)冷蔵庫にいれて固まるまで冷やしたら、出来上がり。

ケーキ本体の調理は10分程度で済んでしまいます。何故こんなに簡単かというと、レシピからお分かりの通り、溶かしたチョコレートを油で固めるだけだからです。チョコレートを油で固める...ざっと計算しただけで、通常のケーキ1切れサイズで1500kcal以上ありました。これを食べる前に聞かされてしまうと、一気に食べる気が失せます。マジパンなども入れると一人前2000kcal超えも夢ではありません。ただ、ケーキ自体は本当に美味しいです。ココナッツオイルも油の中では健康的な部類だそうです。そうは言っても所詮は油ですし、文字通り脂質の塊です。ピンネショットやハム、豚のリブのグリルなど、高カロリー料理を一通り食べた後に、7種類のクリスマスクッキーやビスケットケーキ(ラードで揚げる)、そしてシメに油で固めたチョコレートケーキ。ノルウェーのクリスマス、恐るべし。


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2 コメント

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Unknown (Lane)
2013-02-23 22:55:49
以前ノルウェーのお土産情報戴きました。
その節はありがとうございました。
スモークサーモンを美味しく頂きました。

夫は英国隣の島国出身なのですが、出張で訪れて以来
夢は何十年後かの定年後ノルウェーに住む事らしく、
時折ブログ拝見させて頂いております。

夫実家のクリスマスディナーも
その量とデザートの多さに四苦八苦するのですが、
ノルウェーは更に驚愕のクリスマスディナーですね。
少しビビリました。
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Unknown (しょう)
2013-02-25 20:40:47
>Laneさん
ノルウェーのサーモンは外れがないですよね。お役に立てて何よりです。
定年後にノルウェーで暮らすのが夢というのは、ノルウェー人が聞いたら少し驚くかもしれませんね。ノルウェー人は、給料の高いノルウェーで働いて高額な年金を確保した後に、暖かいタイなどに移住するのが夢のようです。
ノルウェーのクリスマス料理は、本当に不健康で胸焼け必至です。アクアヴィットも欠かさずにお召し上がりください(笑)
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